シークレットボックス

「開けろ っつってんだろ」
「開けてあげたい気持ちはありますけど隣のお偉いさんに怒られちゃいますからねー。怒りたいのはこっちですけどー」
「いいか、俺達がお前に話すことは一切何もねぇし話したいこともねぇ。そしてこっちは急いでんだ。開けろ!」

さっきからずーっとイライラしている、とんとんとんと指で床を叩き続けているヨタさんに大きく溜息を吐いた。なんでこんな偉そうなのこの人…人の話しガン無視だし…捕まってるって自覚ある?状況理解してないのー?ああ…ほんとめんどくさいことしてくれたよこの人も…と、ちらりと我愛羅様の方を見ればじっとヨタさんを見ていた。見過ぎじゃないですかねそれ…ヨタさんに穴空きそう…

「はぁ…だからこっちは聞きたいことがあるって言ってるじゃないですかー」
「ふざけんな!どこの馬の骨かもわかんねー奴に話すことなんてねえんだよ!特に木の葉の忍ならな!!」
「どこの馬の骨って…私ちゃんと名乗ったじゃないですかー…まーいーですよ、大金持って修羅の国の門前跡に行くことは分かってますから」
「な、んで…!!」
「…精密聴の術で私達の会話を盗み聞きしたのね」

驚くヨタさんの側で小さく言葉を零した氷ノ手さんに目線を寄せる。てかヨタさんもうそんな驚くことないでしょー、いい加減信じてよほんと。なんなのほんと。めんどくさいよほんと。

「…本当に要石一族なのか?」
「貴方誰でしたっけー?」

次いでヨタさんの後ろから聞こえてきた声に首を傾げる。ああ、後ろ頭突き食らわしてきた奴か…あれ痛かったんだよーしかも私一応女の子だからね、その辺分かってるー?見せつけるようにわざとおでこの上辺りを摩る仕草をすると、それに気付いた男は舌打ちをして視線を他所へと投げた。

「…レンだ」
「はいはいー。あたしは正真正銘の要石一族ですー。ねーこれ何回言ったらいいんですかー?」
「信じられねぇと思う気持ちくらい分かるだろ…実際まだまだ半信半疑だよ俺達は…」

はあ。また小さく溜息が出た。まあいいけどさ…そのうち確信持つだろうし、時間がないって言ってたし何かの拍子に口を滑らすかもしれない…とにかく、気になることだけさっさと聞こうと地面に座り込んだ。

「一先ず整理したいんですけどー、今我愛羅様の持っているお金。まずあれは誰に渡すつもりだったんですかー?」
「「…」」
「んでー?その"翠蓮"さんと交換っていうのはどういうことですかー?」
「「…」」
「…まだまだ聞きたいことあるのにこれだけに絞ってあげてるだけでもありがたいとか思ってくれても罰は当たらないと思いますけどー」
「その前に」
「…?」

遮るように声を被せてきた女性、氷ノ手さんへと視線を寄せる。何が聞きたいのか、なんて氷ノ手さんの目を見れば分かった。てかほんとさっきから疑問点多過ぎるんだってば…なんで翠蓮さんを取り返す為のお金を作る必要があったのかとかさ。だってもうどこ探したっていないんだよ、それすら知らなかったのかって感じだしー…それに、彼女がかわせみ一族のなんだっていうのかもよく分かんないしー…

「…翠蓮は本当に死んだの…?」
「結構前ですけどねー。っていうかー、翠蓮さんと一体どんな関係なんですかー?」
「お前"かわせみ"って聞いてピンとこなかったのかよ」
「どーいうことですかー?」
「知らない…?貴女翠蓮のあだ名知ってるんじゃないの?」
「"翡翠"ですよねー?…え?これが名字?」
「なんで翡翠ってあだ名がついたのかを知らねぇのか…知ってることが断片的ってことは、その精密聴の術でたまたま盗み聞きしてただけってことだな」
「ええもう仰る通りですーははは」
「翠蓮はかわせみ一族…ここにいるヨタの兄の1人娘なの。"かわせみ"…漢字で書くと"非"に"羽"…分かるわよね?」
「さっぱり」
「根本的にバカだこいつ」
「相当失礼だしうるさいですよー。大体何が言いたいかさっぱり……」

あ、…れ?"非"に"羽"でかわせみって読むの?で、翠蓮?かわせみ翠蓮??馬鹿にするような呆れた溜息を零したレンさんに心外すぎると目を細めていると、あることを思いついて地面に名前をなぞり書く。‥かわせみを漢字で書くと1文字だけだ。全然気付かなかった…だから"翡翠"というあだ名と"翠蓮"という名前があったのか…ってどんななぞなぞだよこれ!!

翡 翠蓮

「"翡翠"って漢字で書いた時の名字を組み合わせた時に出来る単語…!」

謎が解けたようにぱっと顔を上げると、余計なことを一々言いやがって…なんて言いそうなヨタさんが面倒くさそうに肯定を示した。

2014.10.02

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