露わにされる存在

「木の葉とコウが友好関係って……コウの里は里外の忍里を嫌っていたはず…」
「ああ、クラの言う通りだ!それにお前がコウの里の忍者だったなんて…氷ノ手が信じようが俺は絶対騙されねェぞ!!」
「もう!ちょっと落ち着いてよヨタ!!」

噛み付くように言葉を投げ付けてくるヨタさんを制する氷ノ手さんは、どうやらあたしの言うことを信じてくれているらしく、何か話しをしたいのかじっとあたしを見ていた。多分あたしが父の"娘"だと分かったからだろう。そういうめんどくさいのほんとやめてくれないかなー。

「さすがに昔のコウの里のことなんて知りませんからそこはなんとも言えませんけどー、あたしが木の葉の額当てをしてる時点で嘘じゃないと思うんですよねー。っていうか術受けた身なら信じてほしいんですけどー、というより普通信じるでしょー?」
「うるせェ!!化けネズミもとっとと俺の身体からバカでけェ手をどかせ!!」
「鼠仲間の中では標準サイズなんだよ?」
「そんな情報聞いてねェんだよ!!つーかテメェの大きさは標準じゃねェ!!」
「どうしようマトイちゃん私心折れそう…」
「ヨタさんやめたげて下さいよー。ルミネっちはガラスのハートを持つ繊細なメスなんですからー」
「ふざけてんのかコイツ等…!!っ…て、オイ…お前その後ろの"目玉"はなんだよ…!」
「はーあ?目玉?」

なんのことですかー?と言いかけて振り向いた瞬間、本当に目玉が木の側でふよふよ浮かんでいるのが見えた。いやいや待って、目玉って普通人間の顔についてる物だしまず浮かんでる物ではないよね?

「…………」

何、もしかしてあたしあの目玉に付けられてたとかだったりする?いつからいたんだろ…まさか最初から…!?いやいや気配なんてしなかった……って、もしかして目玉だから気配も薄いとか!?結構聞かれたらマズイことを喋っていたから動揺してあれこれと考えてしまい、さらさらと形を成していく"砂"に一瞬反応が遅れてしまった。砂。砂?……す、

「砂!?」

砂って…、そんなもん使うような奴1人しか知らないんですけど…!!砂から人へと姿を変えたそれは確実に、か く じ つ に例のあの人の姿で。おいおいおいおいなんでここにいるんだ、っていうかあたし変装までして見つからないようにしてたはずだけど?なんなのこの人エスパーなの?!

「…今までの話は全て聞かせてもらった」
「ほんっとにねーツッコミ所が満載過ぎてあたしはまず何から話せばいいのか分かんないんですけどねー…」
「一先ず盗んだ物は返してもらおう」
「風影…!?テメェ等繋がってやがったのか!」
「誤解だし!!果てしなく誤解だし!!」

怒りまくるヨタさんを尻目に女性人2人の持っていた鞄を我愛羅様の砂の手が掻っ攫っていく。ああもうほらー!!話しがややこしくなってくるでしょー!?がしっと我愛羅様の伸ばした腕に手をかけた瞬間氷ノ手さんから大きな声が上がった。

「それはっ…"翠蓮( すいれん )"を取り戻す為のお金なのよ!!」
「っ!?」

氷ノ手さんの口から放たれた言葉にあたしは思わず目を見開く。"翠蓮"…随分昔に聞いた名前だった。もちろん精密聴の術で、ではあるし知り合いというわけでもない。では何故その名前に驚いているかと言うと、今までのかわせみ一族が話していたことを全て思い返してみても"おかしいところだらけ"だったからだ。

「ちょっと待ってくださいよ……その"翠蓮"って…随分前に"木の葉の里"で亡くなってるはずです、けど…」
「………え、?」
「そんなことあるわけねェだろ!!!俺達はこの目で確かに見たんだ!!大体なんでお前が"翠蓮"のことを知ってる!!?」
「直接はあたしもよく知らないですが……彼女には別の"あだ名"か何かがありませんでした?」
「そ、んなことまでなんで……!!」
「…死んだ…?嘘だろ…?誰がそんな…!」

呆然とし出す一族を目の前に、話の内容をまだ理解し切れていない様子の我愛羅様が、手中へと戻ってきた鞄を足元に下ろしゆっくりとあたしへ視線を寄越していた。

あたしと同じ封印の器である1人が手にかけたなんて……こんな所で言えないって…

2014.09.06

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