姉の心境は不安だらけ

「さあやりますよっ!2人とも遠慮はいりません私を守っててくださいー!」

砂漠を抜けて土の国・岩隠れの里に通じる道に小さな丘を見つけたあたしは、ぐいぐいと2人の(一応)先輩を引っ張ってその場に座り込みむんっと気合いを入れて印を組む。が、突然ばこーんと思いっきり頭を殴られて体制を崩し、そのまま眼鏡が放り出されたかと思えばべしゃっと顔面から地面へめり込みんだ。

「ぶふぁっ!なーにすんですかテンテンさん!」
「仮にもレディを引きずり回すとはあんたどーいう神経してんのよ!!痛いし!!しかもレディの前に私あんたの先輩!!」
「いやだなあ分かってますよー」
「ふざけてる!あんたふざけてるわよ!!」
「テンテン落ち着いてくださいよ、修業と思えば引きずり回されることなんて痛くも痒くもないじゃないですか」
「だまらっしゃい!!!」

おおう大層お怒りのようですテンテンさん…リーさんに当たり散らすのを見つつ、あたしは座ったまま顔を引きつらせるもいやそれよりも早くこんな任務終わらせて木の葉に帰りたいんですよ!と言わんばかりに顔に力を込めた。

「テンテンさんお願いしますあたしの為だと思って協力してください是非!」
「そりゃあ任務ですからねえ協力はするわよ!あんたの為じゃなくて砂隠れの里の為にね!!」
「やだわー細かいテンテンセンパイったら」
「何がお好み?手裏剣?クナイ?」
「すみませーん怒らないでくださーい」

ヤバそうな巻物片手に悪い顔を浮かべるテンテンさんに両手を挙げて謝り、眉間の皺が緩くなった所でほっと息を吐いた。全ては我愛羅様と綱手サンの所為!と脳内責任転換をし改めて顔を引き締める。まずはスパイを見つけてそいつが誰かを見極める。んでそいつを我愛羅様に押し付けて口を割らせて、この任務は無事に終了!さすがに口を割らせる為にあたしを使ったりしないよねー、だってあたしは木の葉の忍だしー。

「ではよろしくお願いしまーす」
「丘の上で精密聴の術使うなんて人の目に付いちゃうわよ…まあ私達がいるからいいけどさ」
「さあ!忍でも虎でも蛇でもかかってこいやあ!」
「何もないにこしたことはないの!」
「暇です!」
「平和だっていいなさいよ」

印を組みながら、静かに変な言い争いをする2人の声を聞き流す。別に人の目についても周りから見たら1人黙祷してるようにしか見えませんよと頭の中でぼんやり思いながらすう、と瞳を閉じた。








「とても奇怪な術ですね、あれは…」
「ああ。あの術を使えるのはアイツだけらしいからな」
「無駄に弱みでも握られそうだな、下手に人の悪口なんて言えやしない」
「なんだ?誰かの悪口でも言い回っているのか、お前」
「そんなテマリさん、例えの話しじゃないですか…」

少し離れた岩裏で、砂の暗部3人とテマリは丘の上に座ったマトイを視界に入れている。ここへ着いた時には既にリーとテンテンが周りを見張っており、私達に気付いたのかこちらをちらりと見て頷き返した。暗部の3人はマトイを見るのも初めてで、術についても噂でしか耳にしたことがなく、興味津々にマトイの姿を眺めていた。もちろん暗部の3人がマトイに興味津々なのには別の理由もあった。あの風影様が求婚したという木の葉の女性、それがどんな人なのかということ。しかし、取り分け美人とも言えない普通の出で立ちに、暗部の三人は面の下で「風影様って女の趣味案外普通なんだな」と面白くなさそうに溜息を零していた(軽く失礼である)。

「この間のテマリさんの話しでは彼女が今木の葉の重役を一つ担っているんですよね?」
「ああ。あんなでも術の扱いには良く長けている上、情報を即座に分析する力は凄いらしいからな」
「もし風影様の伴侶になる…としたら、彼女は砂に嫁ぐことになりますが…」
「その辺は今考えなくてもいいだろう。それよりもアイツが良い返事を言わないことにはな…」
「「「えっ?か、風影様の求婚を断ってるんですか?」」」

見事にハモった3人の声にテマリは苦笑いを零すと、今だ目を閉じて微動だにしないマトイから視線を外して大きな岩に背を預けた。

2014.06.27

prev || list || next