応援なんてしなくていいし

「2日間の野宿もやっと終わりねー!」
「帰りも野宿ありますよーテンテンさん」
「すぐそうやって現実に引き戻させないでくれる?」

砂隠れの里へ1歩足を踏み入れたテンテンさんがぐーんっと両手を伸ばしているのを見てあたしは溜息を吐いた。ああ…あたしはむしろ野宿でいいんだけどなー…なんかなんとも言えない嫌な予感がするんだよね、なんていうの?第六感?普段働いてほしい感覚器官がこんな所で発揮されても全然嬉しくないんだけどさ…

「テンテン、マトイさん!すぐ我愛羅君の所に行きましょう!」
「あー待って待って待ってリーさん!」
「どうしたんですか?」
「あー…いや、お腹空かないですかー?ほらー2日間魚と果物生活だったから……肉!肉食べたくないですか?」
「あんた昨日リーの捕ってきた蛇の肉みたいなの食べてたでしょ」
「あれは肉じゃないですよー!大体こんなの肉じゃないって言って食べなかったのはテンテンさんじゃないですかー」
「当たり前でしょ!それに今はマトイの話ししてんの!」
「中々美味しかったですよ。マトイさんが胡麻油とか調味料を持ってきてくれてたおかげで食欲も湧きましたし!」
「そーでしょう!皮はパリパリ、中はふっくら!最高だったでしょう!」
「だからもう肉はいいからさっさと風影邸に行くって言ってんの!!」
「えーいやーー!」
「照れなくてもいいんですよマトイさん、フォローなら僕達がしてあげますから!」
「なんのフォローですか!?」
「とにかく行くの!一応任務で来てるんだからね!」

どこで話しが間違ったのか、結局やいやいと揉めた結果風影邸へと赴くことになってしまったあたしは、テンテンさんに胸倉をむんずと掴まれて引きずられるように歩き出した。あ、周りの視線痛い首が苦しい…容赦ないテンテンさんが辛い…!

一昨日はゲンムおじーちゃんが勝手に出てきてヒヤヒヤさせられるし、昨日はテンテンさんの勝手なガールズトークでうんざりさせられるし…我愛羅様に会う前からこんなに疲れていたら、もうあたし任務遂行できない気がする。っていうかリーさんとテンテンさんはあたしの護衛じゃなかったわけ?護衛どころか捕まえた囚人(つまり私のこと)護送してるんじゃないの?

「ぐえ、テンテンさん、首痛いっ」
「なんでそんなに我愛羅が気に食わないのよ」
「気に食わないんじゃなくて興味ないんですってー」

1番前を意気揚々と歩くリーさんを視界に入れながらテンテンさんの言葉に相槌を打つと、目を細めて溜息を吐いた。昨日も散々根掘り葉掘り我愛羅との経緯を聞かれたけど、残念ながら経緯なんてものはあたしと我愛羅様には存在しない。あるとするなら「お互い誰か分からないまま無言で団子を食べあった」ことぐらいだ。それを聞いて一体誰がピンク色の妄想をすると思うのか。

「そりゃ昔は殺人鬼みたいな雰囲気醸し出してたけど、今は真面目で素敵な風影様なのよ。大切にしてくれると思うけど」
「えーもーやだー結婚とか付き合うとか好きとか面倒なんですよー。昨日も言ったじゃないですかー」
「あのねえ…折角好意を寄せてもらってるんだし少しは考えてあげなさいよ」
「なんで皆して我愛羅様の肩を持つんですかー…」
「私達の同期は我愛羅達と仲が良いんだから応援するのも当たり前でしょ?」
「だからーあたしの気持ちはー??」
「あんたにもし好きな人でもいたら止めてたかもしれないけど、そうじゃないんでしょ?ましてや恋が面倒くさいとか言うし…良い機会じゃない。はい着いた」
「お邪魔します!」
「リー!ノックぐらいしなさい!」

我愛羅様がいると思われるドアの前に着いて、勝手知ったるとばかりに勢い良く開けたリーさんを見ながら、テンテンさんの恋愛説教染みた言葉を軽く流していると、目の前に現れた人物を見て心の中で身構えた。

2014.05.20

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