続・とある野宿物語

夕御飯を済ませて、いつの間にか向こう側でぐーすかぴーすかと寝ているリーさんとテンテンさんを視界に入れる。首にかけた黒い笛を口に咥えて大きな岩の上にごろんと転がると、なんとも平和そうな2人の寝顔に薄く笑みが零れた。この木の葉の平和もいつまで持ちますかねえ…。零していた笑みからふっと顔を強張らせると、カチカチと笛を噛みながら遠くの方へと耳を澄ませる。

……、………です…

「あたしの術が効かないってどんな奴なわけ?自信があっただけにムカつくわ…」

耳に雑音ばかりが流れてくることに苛立って思わず悪態をつくと、深く溜息を吐いてかけていた術を解いた。一応本日から砂隠れの里へ任務だということは分かっている。でも、どうしてもつい先日の聴こえない声が気になってしまっているのが事実だ。木の葉はあたしの育った里。産まれが木の葉の里なのか行ったこともない"コウの里"なのかは正直答えにくい所ではあるが…

余談だが、なんであたしがむかーしからコウの里のことを知っているかーなんていうことは聞かないでほしい。何度も言うがあたしは木の葉きっての情報通。知りたくなくても知る気がなくても、知らなかった自分のことについては簡単に自分の耳に入ってきた。

「光の国…コウの里、ねえ…」

そして、その声の全ては火影室からの物だった。ヒルゼンのおじーちゃん、ご意見番、上役についていた暗部、里に帰ってきた綱手サン。それ以外に"光の国"や"コウの里"というワードを他の人の口から聞いたことがない。それもちょっとおかしいことだとは思っているのは否めない所で、もしかしたら雑音を隠している正体もそれ絡みかもしれないと思わないでもない。‥まあ、ただのあたしの憶測だけど。

とにかくだ、木の葉の里はあたしを育ててくれた大切な場所。シカマルさんのように面倒だと言いたい所だが、これだけは面倒だなんて言いたくない。木の葉には感謝してもしきれない節がたくさんある。あーしかし、あたしらしくない台詞だこと…

【 辛気臭ェ顔しとんのォ… 】
「ちょっとー…誰が"コッチ"に出てきていいなんて言ったー…?誰か見てたらどーすんのーゲンムおじーちゃん」
【 大丈夫だと確信しとるから出てきておる、安心せェ…それよりもゲンムおじーちゃんと呼ぶのはやめてくれんか。鷲ァまだ1019歳になったばかりのピチピチ男児だぞ】
「1019歳っておかしい数字だからね…」

ごろごろとしていると、ふいに両手首まで包帯をぐるぐる巻きにしている下から突然気持ちの悪い緑模様に光出すそれに呆れた目を向ける。勝手に出てきちゃダメだと何度言ったことか…おじーちゃんだからすぐ忘れちゃうの?そういう言い訳ナシだよ、なんて言おう物ならその蛇の尻尾で身体を拘束されて絞め殺されかねない。まあしないと思ってるけど一応ね、一応。かくいうこのおじーちゃん、あたしの身体に住み着く神獣と言う名のお偉い様である。ゲンムおじーちゃん。種族、玄武。と言う所だ。

"光の国"では五行を創ったと言われる神様・神獣を守ってきた一族達がいた。一族からは1人だけ"封印の器"を選び、その者の中に神獣を封印したのだ。要はその1人があたしだということ。もちろんこのことは極少数にしか知られていない事項。漏れたら色々とめんどくさいからね。…で、なんでその封印されてる"筈"のゲンムおじーちゃんが外に出ているのかというのは本人に聞いてください。これあたしも困ってることだから。最早あたしが封印の器である意味があるのかということも怪しくなってくるよねーこの状況…

【 …知りたくもないことを知っていく要石一族のお前には伝える手間も省けてええのォ… 】
「極力面倒に関わりたくはないんだけどねー」
【 精密聴が効かんのだろォ 】
「まーねー。でもまーそんなに気にしなくてもいいのかなーなんてー」
【 なんとも素直でないというか…精密聴は要石一族特有の秘術。コウか木の葉でないと術すら知らんであろうしましてやその対策はコウでないとできんだろォが 】
「……」
【 自身に気を付けておいて損はないと思うぞ 】

嫌に真面目な声を出すゲンムおじーちゃんにちらりと目線を寄せると、人2人分あるのではないかと思う大きな甲羅に手を伸ばして分かってると言わんばかりに撫でる。目には目を、じゃないけど…やっぱそう考えるのが打倒なのかなあー…光の国の生存者は封印の器以外いないって話しだけど…。

っていうか腕の術式(模様)の中に戻ってくれないかな…周りにリーさんやテンテンさん以外の誰かがいないということは分かっているものの、少しハラハラしている自分がいるのは確かなんだから。

2014.05.17

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