とある野宿物語

「あんたリュックに一体どんだけ詰め込んでんの?」
「長旅には食が必須ですからねーなんならメロンもどーですかー?」
「おかしい!非常におかしいから!その通常サイズのリュックに林檎10個にバナナ1房に蜜柑20個とか!そこにメロンなんて絶対入らないから!!」

砂隠れを目指して歩き続けていたあたしとテンテンさんとリーさんは、いい感じに日が落ちてきた所で野宿をすることにした。そして今現在、野宿によさそうな木の影で腰を落として、さて腹拵えとあたしがリュックから取り出す数々の果物に、テンテンさんが激しくツッコミを入れている所である。ちなみにリーさんは動物の肉か魚を調達しておりこの場にはいない。間違ってもカエルとかはとってこないでほしいんだけど大丈夫だろうか。

「なにそれ、魔法のバッグなの?」
「いえー、リュックの中に封印術を施した巻物を入れてるんですよー。こう、中に手を入れて解!って印を組めば1つずつ取り出せるんですー」
「めんどくさいわね」
「マジックみたいで楽しくないですかー?あーやだやだ、テンテンさんシカマルさんみたいー」
「あんたに言われたくないわ!っていうかこの状況で楽しくマジックなんてせんでいいっての!むしろマジックじゃないし!」

怒涛のツッコミの嵐にあははと乾いた笑いを零していると、三白眼になった眼を向けるテンテンさんの後ろからびちびちと雫を滴らせる大量の魚を手に持ったリーさんが見えた。ちょっとどんだけ食わすつもりなんだと、ついあたしまでツッコミ役に回りそうだったが、やはりあたしより先に口を開いたテンテンさんがいた。さすが。

「リー!そんなに捕ってきてどーすんの!?魚の無駄遣いっていうか命の無駄遣いでしょーが!!」
「5分でどれだけの魚が漁れるかという修業のつもりでやってきたんです。ですが木の葉旋風1回で魚が漁れてしまって…僕も困惑しています」
「それ漁るっていうか敵として倒しちゃってるし!っていうかそこで蹴り技使ってる時点でアウトでしょ!」
「おー、美味しそうですねー。じゃあ食べれなかった分はこっちの巻物の中に入れて冷凍保存しておきましょうかー」
「マトイさんの巻物は冷凍保存なんてできるんですか!すごいですね!どういう仕組みになっているんですか?」
「簡単ですよー。巻物の中に大量の氷とドライアイスを予め入れておけばほら簡単!」
「やめろ!!はあ…とりあえず先に火を起こしてご飯にしましょ。これ葉っぱとか集めてきたから、リーはあの尖った木の枝を魚に刺してきて」
「オッス!!」

びしっと敬礼をした後、凄いスピードで魚に木の枝を刺していくリーさんを尻目に、あたしとテンテンさんは食用クナイを使って林檎の皮を剥いていく。おお、テンテンさん中々やりおる!林檎の皮を綺麗に繋げたまま剥いていく姿はさながら出来る女だ。もちろんあたしは丸々1個の林檎の皮を剥くよりも分けて切って皮を剥く派で、兎林檎ならぬカニ林檎にしたい派である。

「うわっ…あんためんどくさいことやってるわねー…」
「これが林檎本来の姿ですよー」
「いや違うから。林檎はカニじゃないから。でも意外、マトイって一応料理(切る)知識あるのね」
「まー一応一人暮らしですからねー」
「いつ嫁に行ってもそこは安心なわけか」
「嫁に行く前提…?」
「何言ってんのよ。我愛羅と結婚するんでしょ」
「なーんで決定事項?せめてクエスチョンマークつけてくださーい」
「違うの?」
「違いますー我愛羅様の起こした気の迷いですー」
「‥あんたこそ気の迷い起こしてんじゃないの?」

シャリシャリと皮を剥きつつ、何故か不服そうな顔をするテンテンさんが吐き出した言葉に、そんなことないとぶんぶん頭を横に振ったあたしは、木の葉の忍は一体どうなっているんだと諦めたように目を細めた。

2014.05.10

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