幸せを見て想う

「我愛羅!久しぶりだってばよ!マトイもいたのか!」
「あは。久しぶりー、ナルトさん」
「…相変わらず元気そうだな、ナルト」
「おう!」

風影室に入った瞬間ナルトさんは勢いよく駆けると、同時に風影様の机に乗り出し嬉しそうに話しかけていた。仲がよろしいようで…しかし、一応相手は風影なんだからと、私は呆れたように笑みを零した。マトイと呼ばれた少女はめんどくさそうながらもこちらに会釈をする。その後ろでは風影様に隠れるように、王子様が私の背を盾にしていた。隠れるくらいなら隣の部屋に移ればいいのに、変な人だ。‥と目を顰めていると王子様に気付いたらしい風影様が首を傾けて、私(の後ろにいる王子様)に視線を寄せていた。

「…王子を隣の部屋に通さなくていいのか、テマリ」
「本人が一緒に入ると言うのでな」
「そうか。…ナルト、この2人は?」
「あ、まだ会ったことねぇのか!えーっと、こっちがハヤのねーちゃんで、こっちがコトメ!」
「初めまして風影様。上忍の白魚ハヤです」
「ち、中忍の日暮硯コトメです!よろしくお願いします!!」
「…我愛羅だ。こちらは秘書の要石マトイ」
「どーも。要石(かなめ)マトイですー」

さらっと王子様のことは置きつつ挨拶をする風影様とマトイさんに自己紹介を返し、側にあったソファへと案内された。テマリさんは飲み物を持ってくる、と一度部屋を離れていく。ナルトさんは落ち着きを取り戻すことなく風影様の隣に腰を下ろし、二カニカと笑いながら肩に腕を回していた。

「2ヶ月ぶりくらいだなー、前に密書を届けた時以来か?」
「そうだな。あの時はあまり話す時間も取れずにすまなかった」
「しょーがねえってばよ、我愛羅は風影だし」
「煩くしちゃって悪いね、我愛羅君…」
「予想はついていた。それにこの煩さは嫌いじゃないから構わない」
「もー我愛羅はナルトさん大好きだよねーホントー」
「そうだな。マトイも座れ、とりあえず仕事はいい」
「はーい」

風影様の隣(ナルトさんの逆隣)に腰掛けたマトイさんは、嬉しそうに笑みを作っていた。あれ…なんか、この2人雰囲気がどことなく…そういえば噂で風影様に婚約者がいるとかどうとか言ってたような…考えているとナルトさんの顔がニカニカからニヤニヤに変わっていて、風影様の腕を小突いていた。

「我愛羅とマトイは最近どうなんだってばよぉ」
「…マトイは俺によく尽くしてくれている」
「ナルトさんと違って出来がいいんですよー」
「一言余計だっての!」
「こちらでの評判も良い。マトイはやる気は見せないが仕事はちゃんとする」
「それはそれでどうなのよ‥」
「…シカマル2世だ…」
「コトメの言う通りだってばよ」
「あたしはシカマルさんみたいに頭のキレよくないしーでもあんなにめんどくさそうじゃないですよー」
「いやそんなことないよお前今でも十分かったるそうだよ」
「そーかなー、そーでもないですよー」

風影様、ナルトさん、マトイさん、カカシさん、たまにコトメさんが会話を繋げる中、私の隣でどっかりとエラそうに腰を下ろしている王子様はどこか緊張気味だ。昔風影様に何かされたのかなと疑いつつも、少し女々しい姿に眉を下げる。それにしても風影様とマトイさんは随分と仲がよさそうだ。やはり彼女が例の婚約者、なのだろうか。そしてふと彼がここにいたらなあと考えていた。

ネジだったら礼儀正しく座ってナルトさん達の話しに耳を傾けるんでしょうね。そして突然話しをふられて困った顔したりするんです。ナルトさん達の会話を右から左に流しながらここにネジがいることを想像しつつ私はふふ、と笑みを浮かべていた。








「信じられません、あの変態王子」

無事任務も終わり風影室で談笑していたナルトさん達は、そろそろ木の葉へと帰る為に名残惜しみつつ風影室を後にしていた。で、何故私がご立腹かというと、あの王子様帰り際で私に風の国へ泊まっていけばいいのになんて言い出したのだ。ふざけんな本当嫌。…とは本人の前で言うわけにも行かず(あんなでも王子だし)、丁重にお断りした帰り道、私はカカシさんの隣で愚痴を零していた。

「大体王子様の身につけていた服や持ち物を見ましたか?あんな高価な物たくさん身につけて…彼、きっと阿呆な方ですよ」
「んー、そうだね」
「人が嫌がってるのにも気付かないで我儘放題。私あんな方大嫌いです」
「んー、そうだね」
「お金があればなんでも動くと思ってるんですよあれは…その癖に風影室に入った時の度胸のなさ。何があったのかは知りませんがあのくらいのことであんなに怯えて男としてもどうかと…」
「んー、そうだね」
「……そういえば暗部の方の気配がありませんね……聞いていますか?カカシさん」
「んー?悪い、なんだった?」
「…もう結構です。先程からぼーっとして、任務は帰るまでですよ。何が起こるか分からないのですから」
「ん、そうだよね。ごめんごめん」

この人今私の話し聞いてなかったですね。少々イラっとしたが諦めて口を閉じた。何をぼーっとしていたのか分からないが、カカシさんにしては少し珍しいことだったからちらりと顔を盗み見た瞬間、突然動きを止めて周りを見渡していた。あの暗部のことでしょうか?というより私その話しも話題にしていたと思うのですが本当に全く人の話し聞いてなかったんですね、と呆れて目を顰めると、マントを羽織ったカカシさんは突然森に向かって駆け出して行った。

「は!?え、ちょっとカカシ先生!!急にどーしたんだってばよ!!」
「悪い、先に戻っててくれ!」

慌てて声をかけたナルトさんだったが、それに構うことなくカカシさんの姿は森の中へと消えてしまった。そっちの方向から帰ると遠回りになってしまう…何かあったのかと思ったが、先に戻っててくれと言っていたし大丈夫だろうと考え、私達は一直線に木の葉の里へと向かった。

2014.03.22

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