淡く色付く○○、

「…んで、仕事中ボケーッとしてるから頼まれた教材全部注文し忘れるわ保管用の資料捨てちゃうわでイルカ先生に呆れ笑いされたってわけだな」
「そんな風に言わなくても…ちょっと考え事してて…」
「コトメそれなんて言うか知ってっか?」
「なによ」
「言い訳っつーんだよ。な、赤丸」
「…クウン」
「赤丸〜分かってくれてるか〜励みになります…」
「バカヤローか。赤丸は優しいから返答に困っただけだっつーの」
「キバもそのくらい優しくなりなさいよ」
「だから俺は優しいだろーが」
「だからどこが」

内勤の終わった20時過ぎ、約束通りに焼き肉Qへと向かった先にいたキバと合流してお店の暖簾を潜っていくと、そこにはもう多くのお客さんで賑わっていた。本日任された仕事で失敗ばかりしていた私のテンションはどうやら周りから見ても低すぎるのが分かったらしい。キバに諭されて一連の出来事を話してみればこれである。優しくして。

「おいコトメ、それ焦げてるから早く食え!」
「え、…いやこれもう無理でしょ!ブラックチョコレートじゃんか!」
「例えがおかしいだろ。炭だ炭」
「はいあげるキバ」
「テメェ!」

真っ黒に変貌したお肉をキバの皿に取り分けると、焼けたばかりの綺麗なお肉に箸を伸ばした。任務で失敗することは正直よくあることなんだけど…ほんとに参っちゃうよね…もっとしっかりしないと!と考えて意識しすぎると大きなミスしちゃうこともあるし…来週からは修行にも出る。まだこんな失敗ばっかりしてたんじゃあ、ほんとに、私、私、私…

「…死ぬかも」
「別に1個くらい炭みたいな肉食っても死にゃしねえ」
「えっ、いやその話じゃなくて…って食べちゃったの?!」
「もったいねーだろが。食べ物は大切にしろ」
「ワン!」

飲み込んだ後に「やっぱりにげーなぁ…」と顔を顰めるキバに小さく苦笑いすると、そんな私の表情に不審がったのか、こちらを伺うキバと視線が合った。…あ、そういえば、まだ綱手様とシカマル以外に修行に出ることを誰にも伝えてなかったっけ。丁度いっか、なんて考えながら白米を一口食べていると、先に口を開いたのはキバだった。

「…またなんかあったなら聞いてやるぜ」
「なんでなんかあったのかなんて分かったの?」
「コトメ顔に出過ぎ」
「サイコパワー…」
「人の話聞いてねえだろコラ。で、どうした?」

そう言いながらカチャリと箸を置いて私の話を聞く体勢になったキバを見て、思わず私も箸を動かすのをやめた。キバは猪突猛進ではっきり言うし色々と一言多いけど、こういう時に突然優しくなるから泣きそうになる。いや私の涙腺脆すぎるだけなんだけど。真剣な眼差しを見て一呼吸置くと、椅子に座り直して小さく口を開いた。

「…実はね、来週から半年くらい里を出るんだ」
「は?」
「修行しに行くの。1人で私の口寄せさんの住む場所に」
「……誰が?」
「誰がって私だよ」
「ちょ!嘘だろ!?1人で修行に行くって正気かよ!!」
「…なによ、そんなにおかしい?」
「いやだってお前…1人でって…」
「あ、ちゃんと教えてくれる人はいるよ」
「当たり前だろ!!つーかそれどんな人だ?強いのか?めっちゃ厳しいんじゃねえの?お前ちゃんとついていけんの?」
「質問が多いってば。んー…どんな人っていうか…どんな動物っていうべきかな」
「動物って…マジかよ…随分急じゃねえの…」
「うん…まあ、…ちょっと色々あって」

曖昧に返せば、キバの不服そうな顔がさらに歪む。その隣では赤丸が心配そうに私とキバの顔を見比べていた。

2015.06.11

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