決意は揺らがないよ

「それ、シカマル知ってんの?」

ごきゅっと豪快にお茶を飲み干したキバが、何かを思いついたように机をばんばんと叩く。やめてよお店の中で!そう言って張り上げた声も、キバの言葉でかき消されてしまった。

「知ってるよ。知ってるけど…」
「はーーん?お前等の喧嘩の原因はそれだな?」
「いやそうじゃないというかそれだけじゃないというか…って!何言わせてんのよ!」
「言ったのお前だろ」
「尋問誘導!」
「誘導尋問な」
「そ、そうだっけ…」

お前ほんとバカだな…と呆れたように笑うキバに、思わずイーッと威嚇した。と、いうか。なによその成る程なーみたいな、全てを分かりきってしまったぜオレ〜みたいな、微妙なドヤ顔は。サラダにこれでもかとゆずドレッシングをかけながら溜息を吐くと、小皿に取り分けてキバに差し出した。

「おっサンキュー」
「キバは……どう思う?」
「何が」
「私…あ、いやその、修行に出るって決意はしたけどさ…強くなって帰ってこれると思う…?無事に…帰ってこれると思う…?」
「…」
「聞くのが変っていうのは分かってるよ?私だって強くなりたくていくわけだし!…でも、キバも、すごい大丈夫かよみたいな顔してたし、そんなに私…」
「…お前がそんなんじゃ無理なんじゃね?」
「え?」
「そんな顔してるやつが"決意した"とか信じらんねーっつってんの」
「だって…!」
「だってじゃねーよ。決意したんならこいつやる気満々だなって顔付きくらいしろ。じゃねーと、誰も気持ちよくお前の事送り出せる訳ねーだろ」
「…」
「中途半端な気持ちで修行なんて行ったら師匠にも失礼だし、死ぬぜ」
「!」
「……オレ…シカマルも、そう考えてるんだろ」

もごもごと何かを言おうとしたキバは一瞬口を噤んだ後、ポットから湯呑みにお茶を足しながらめんどくさそうに肩肘をついていた。表情が複雑に揺れている。

「…」
「キバ…?」
「少しでも無理かもと思ってんなら行くのやめたほうが……賢明、なんじゃねーの」

キバにしては随分歯切れが悪い気がする…。

「決意、……覚悟、足りなさそうに見える…?」
「少なくともオレには見える」

キバの目が、瞳が痛かった。私の中の恐怖心をしっかり見抜かれているような気がして、それが私のもやもやを増幅させる。気付いた時には、キバの驚いた顔と、椅子を盛大に倒した音が店内に鳴り響いていた。

「っ…だったら!」
「な、んだよ急に…!!」
「私が本気だって証明するから!キバが相手してよ!」
「…はァ!!!!!?」

2015.10.22

prev || list || next