抱いて抱いて抱いて

「あの、我妻さん…!」

鈴の音のような声がして振り返るとそこに居たのは俺より背の低い女の子の鬼殺隊員だった。
彼女は名前ちゃんと言って、歳は俺と同じ歳。階級は丙になったばかりだと聞いた。俺は未だ癸だし、この間那田蜘蛛山で散々な目に合い、やっとこ手足が戻ってきたところ。機能回復訓練もカナヲちゃんに負け続けて死にそうだし逃げていた時だった。

「我妻です!!!ど、どうしたんですか…!?も、もしかして結婚してくれるの!?!?」
「けっ……?え、違いますけど」
「ですよねーーーー!!!!分かってましたァ!!!!!すみませんねぇ本当に!!!!とんだ勘違い野郎で!!!!でも結婚して欲しいので結婚してください!!!!!!」
「ご、ごめんなさい……」

名前ちゃんは柔らかそうな長い黒髪を垂らしながら頭を下げた。カナヲちゃんより短めのスカァトに黒色の長い革靴。藍色の羽織を羽織っていて腰には群青色の日輪刀が携えられていた。

「でも、あの、凄く迷惑だと思うんですけど、承知でお願いしたいのです。」

クリクリのぱっちりした二重の目が俺の足元を見て

「抱いて貰えませんか?」


桜色の艶やかで小さな唇から零れたのは抱いて欲しいという言葉。耳がいいから聞こえ間違いはないと思うけど一応聞き返す。恥ずかしそうな音と真っ赤な顔も相まってへ〜〜真実なんだぁともはや他人事のように思えた。だって俺だよ?普通なら炭治郎とかさ、そっちにお願いしない?性格はアレだけど見目だけなら伊之助なんて右に立つ奴いないでしょ?

「私、実は那田蜘蛛山で我妻さんが鬼を倒した所を見ていて、」

名前ちゃんはモジモジとしながらも説明してくれた。初めて見た雷の呼吸の技が綺麗で、それを扱う俺がカッコよくて一目惚れをしてしまったらしい。でも俺と付き合うとかは考えていなくて、自分もいつ死ぬか分からないから、せめて思い出に抱いて欲しい。というものだった。え?いいんですか!?抱きますよ!?遠慮しませんけど!?!?

「いやでも俺そういうのしたことないし、上手くできる自信ないんですけど!!」
「私だってしたことないですよ!」
「あらヤダおそろい!!ごめんなさいね!!付き合った人数いても手すら握らせて貰えなくてね!!!」
「私なんてお付き合いしたこともないですから!大丈夫ですよ!!」
「何が!?何が大丈夫なの!?」

大丈夫、大丈夫じゃない、抱いて、いや待って、その押し問答の末にとりあえずお互いを知ることから始めましょうということに落ち着いた。


「それでは我妻さん!次会ったら抱いてくださいね!!!!!!!!」
「そんな大声で言わないでくれる!?!?」


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2020.03.27

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