従者にこんなところを見られたら、卒倒するだろうと思った。

だから俺は声をだすまいと、必死に腕で口を押える。



それなのに、ユウリは、俺の声をもっと聞きたいと言って俺をドロドロに溶かしていった





「ぁっ、う゛、ン、んん…!」




腰を打ちつかれる度に、俺の口からは甘い悲鳴が上がった
ゾッとしてしまうほど堪らない快感
彼は俺の弱いところを、既に知っている



「兄さんの中…すごく気持ちいい」



ユウリがうっとりとした声色で、俺に囁いた
その声にまで反応して、甘い吐息が漏れる




「ねえ、どの体位が好き?教えて」


俺の腕をどかせようとしながら、ゆるゆると腰を動かすユウリ
やめてくれ、これ以上俺を俺でなくさせないでくれ



「あ、あぅっ…ぅッ…」


「はあ…兄さん、可愛い…」



身体が、快感を覚えてしまった。
だから俺は後ろでも感じるようになったし、頭がこの行為をおかしいと思っていても身体は悦んでいる。

彼が奥を突く度、背中がしなる
口からは唾液が溢れ、俺の中心も、そそり立っている。

それを見て、ユウリはまたうっとりした表情を見せるのだ



ギシリ、とベッドが鳴った。同時に体の重みも減る
腕を顔から外して彼を見ると、俺の腰を持ち直していて



「っえ・・・?」


腰をギリギリまで近づけたあと、俺の上半身を起こすユウリ
そのままユウリが後ろに倒れて、俺がユウリを見下ろしていた


騎乗位。
こんな体位、俺はしたことがない。



「動いて、兄さん」


いつもの何倍も色っぽい表情をしている弟が、俺の下にいた

こんな汚い行為をしていても、彼は絵画の世界の住人のように艶やかだ


「で、出来ない…っ、」


ただでさえ、奥まで入ってるユウリの熱
俺が動いたら、それが奥で擦られてしまう

そんな快感を俺が受けきれる気がしない



「ゆっくりでいいよ」



ユウリは俺の腰をスルリと撫でてきた。そのまま、俺の胸へと手を伸ばしていく



あ…


ゾクゾクと腰に響く甘い疼き
乳首を弄るユウリの掌に、彼を見下ろすとユウリが下から突いてきた

「っあぁ」

「今とっても欲しそうな顔してるよ兄さん」

「ぁ…あ、っ、はッ…」

「下から突かれるの気持ちいい?…ほら、腰、揺れてる」



ユウリに言われて気づいた己の醜さ
自ら腰を振っていて『やめて』なんて間抜けなこと言えるはずがない



「ん、ン、ん…ッ…ぁ…」

「っ…上手」



ユウリが、歯を食いしばりながらそう言ったのがわかった
俺の胸にあった手が移動して俺の中心にそっと触れる



「っ…んぁっ…」

「ほら、もっと振って」



熱いユウリの囁き
ユウリも堪らなくなったのか、上半身を起こして正面座位になった。


すぐ近くに、ユウリの顔
俺のアレが、ユウリのお腹にグリグリあたる



「兄さんのすごく出したがってるね」


少し体を離してわざわざ俺に告げる彼
そんなこと、言わなくていいのに。なんで言うの。


「い、言わないで…」

「…かわいい」


そう言って、今ユウリの顔の目の前にあった俺の乳首をパクリと口に含まれた
ねっとりとした熱い舌が俺の乳首に絡む


うあっ…


「だめ…ぇ…っ」


その刺激に耐えられなくて、腕をユウリの首に巻き付けた
けれど、ユウリは俺の乳首を舐めるのをやめない。


「腰揺れてるのに。」


ユウリがおかしそうに笑った。
俺の腰の動きに合わせてユウリも下から突いてくる

どんどん大きくなるベッドの軋み音

もし、ドアの外に兵がいたら、絶対あやしんでいる。
俺の喘ぎ声だって、外に漏れてるかもしれない。



「ん、あ、ハァっ、あぁ、ぁ」



女のような嬌声が自分の声だと信じられなかった
けれど、紛れもなく自分の口から洩れていて。


「兄さんの今の顔、兄さんに見せてあげたい」

「ん、ンっ…や、」

「あんな気高い兄さんが。兄さん、俺の、兄さん。」


身体を押し倒されて、何度も突かれた
この感覚に、一生慣れることはないだろう。体の中のすべてが、抜かれては押される、恐ろしくなるほどの快楽


ユウリの首に巻き付けたままの腕を離すことはできず、むしろその感覚から逃げるように、ユウリの背中を爪で抉った

目の前の端整な顔が、少し歪む


「だめだ、おかしくなる、もう、っ、ぁうっん゛」


口をユウリの唇でふさがれた
息と息がぶつかりあう、激しい接吻

腰を掴むユウリの手が強くなった時には、もう、俺の意識が半分どこかに飛んでいってしまいそうだった


「で、出ちゃっ…出ちゃう、俺、っ…」

「ん…いいよ、いっぱい擦ってあげる」


ユウリもそろそろ限界なのか、上ずった声で俺にそう囁いた
パチュパチュと接合部で鳴る水音とベッドがきしむ音が部屋を満たす

ユウリが俺のを激しく擦ったため、達するまで、本当に一瞬だった


「〜〜〜〜っ!!!!」



俺の声は、ユウリの口の中に吸い取られた


「っ…ハァ…ハア…」


ユウリのものか俺のものか、どちらのものかわからない荒い呼吸



俺のお腹の上には、ユウリの精液と俺の精液が散っていて動けない状態だった



俺の体力的にも、気だるくて動けないが精神的にも毎回くるものがある。
けれど、やっぱり、どうしたって彼を憎むことが出来ない。



代わりに、謎の虚無感が一気に自分に襲い掛かってくるのだ。



「待ってね、今拭いてあげる」


動けない俺と違って弟は微笑みを浮かべてそう言った

汗ばんだ自らの額を拭いながらボーっと窓に目をやる


「シャワー、浴びる?」

「…疲れた」

「そう?んじゃ濡らしたタオル持ってくる」



一通りタオルで拭かれた後ユウリがベッドから降りて机にあった水をタオルにかけた

それでおれの体を拭いてくユウリ
お腹の上に二人分の精液がかかっていて、ベタベタして気持ち悪い。




「…わざわざ外に出したのは…」

「何を?」

「………」


おれが黙ったから何かを悟ったのかユウリは小さく笑う



「中に出したら兄さんお腹壊しちゃうでしょ。」



…そういう事に気をかけるのに、どうして俺を抱くんだろう

俺が嫌がってるの、わかるだろうに。



「・・・ごめんね、兄さん。」



俺の表情を見て、小さく俺に謝ってきた彼

そしてそのまま俺の横に倒れこみ俺を抱きしめる




「俺には兄さんしかいないよ。嫌わないで」



…こんな切ない声で言われたら、何も言えなくなるじゃないかとため息をついた
どうしても、俺はこの言葉に弱い。



「…嫌わないよ。」



俺の言葉に安心したように微笑んでそっとキスをする彼


去年もそうだった
その行為が終わった後確認するように俺を抱きしめる。


彼が俺を初めて抱いたのは彼が15の時
抱かれるのは何度目になったのか

こんなの間違ってるし歪んでいると思う

けれどやはり一人になるのが恐ろしくて、彼を正しい道に進ませられずにいるのは自分のせい。



俺はその度に、この行いをなかったことにする。




「兄さん?」



ぼーっとしてしまっていたのか、いつのまにか服を着させられていた。

ユウリの言葉にハッとしてなんでもない、と首を振る



「…今日はもう、寝よう」


ユウリの頭をそっと撫でた。
昔はもっと小さかったのに今では俺が見上げる側に。

…彼の影に覆われた時、どれほど驚いたものか。



「そうだね」



ユウリは一度俺の手にすり寄った後、手にキスをしてから横になった

また腕を差し出されたのでさっきと同じようにそこに頭を乗せる

…やっぱりくっついて寝るのか…。


内心そう思ったがそうしていると、あっという間に襲ってきた眠気

さっきはひんやりしていたユウリの手足も今は心地よい温度になっていて安心する


…瞼が重い。
このままベッドに沈んでいってしまいそう。


うとうとしてる中、ユウリが優しく俺の頭を撫でてくれた


「昔俺によくこうしてくれてたんだよ」


と優しい声でそう囁かれたが、もう半分意識がない俺はその言葉を理解してるのかも危うい



ただその掌の感覚があまりにも心地よくて、弟に眠りを促されるまま眠りについた






枯れ果てた体温







/