透明傘 | ナノ
1(湊目線)


!湊目線注意!



あっつ……
朝六時

体内時計で勝手に目が覚める時間にいつも通り起きる
というよりは暑さで目が覚めた

布団を蹴り飛ばしてその熱を解放する

そろそろ梅雨明けか、とかまだ眠い頭で考えながら目を開けると、見慣れた天井が目にはいった

次いで横を見ると、
まだ爆睡してるようすの双葉がいて。


「………。」


口ぱっくり開いてるし…
思わず笑ってしまった

けれど今日は水曜日
ゆっくり寝させてる余裕なんてない

双葉を起こそうと体を横に向いて腕を伸ばす


「おーい。」

「………。ん」


ペチリとおでこを軽く叩くと上がる間抜けな声
微かに目が開いた


「朝。六時」

「………あー……」


再び目を閉じてしまうまえに声をかけて無理矢理起こす
数秒間もぞもぞ体を動かしながら目を開閉してる双葉をしばらく眺めてると双葉がこちらを向いた

もぞもぞしてる動きがピタリと止めてこちらを見るもんだから何事かと思う

が、第一声


「こっちみてんじゃねーよ。」


パーンと平手で頬を流された


!?


「え、ちょ、双葉さん、今日いつにも増してひどくないすか」

「ニヤニヤしてて腹立たしいんだよ。」


寝起きだからすごい低い声で俺を睨む双葉
ニヤニヤしてただけでここまで怒られるとは…

叩かれた頬を押さえながら体を起こす


「つかなんでこんな暑いんだよ」


荒々しく布団を蹴って立ち上がる双葉
あ、不機嫌な理由はこれか

………でも


「双葉、叩くのは感心しない。いたい。」

「知らねえ。顔近すぎだったお前が悪い。」


冷たくあしらわれた。

…………これが反抗期か。
さっさと洗面所にいった双葉の背中をみながらしみじみ感じた。
デレ期過ぎるの早くね。




ーーーー・・・




「え?反抗期?」

「そうなんですよ…なんかもう…最近『近寄るな。』の連発で…」


目の前で目をパチクリしている鈴木さん、もとい俺の会社の先輩
昼休憩に会社近くのラーメン屋で飯食べながら相談していた

双葉の事について。


「鈴木さん娘さんいるじゃないですか…どう対処するんですか」

「いや俺の娘まだ幼稚園児だからね?」


あ、そうか
頼みの綱が切れた。最悪。


「てかお前にそんなデカい子供がいたとは…」

「失礼な。従兄弟ですよ。」

「従兄弟ォ!?」


一段と大きい声を張り上げて驚いた鈴木さん
いやいや何をそんな驚いて


「従兄弟と同居してんのお前」

「そうなんですよ、成り行きで。」


あ、普通じゃないか。従弟と一緒に住むっていうのは。
「子供の話冗談かなんかだと思った」と呟いている鈴木さんを見て思う
冗談言ってどうする。


「で、反抗期か…え、女?」

「男です。」

「男に近寄るなって言われるってどういう状況なの宮村。」


少し顔をひきつらせる鈴木さん
何だ。何で俺ドン引きされなきゃいけないんだよ。


「いや、そんな、だって俺ら男ですよ?一緒に寝たりソファ二人で使ったりとか、気にする必要ないじゃないですか」

「一緒に寝てんのかよ。」

「……」


アウトゾーンなのか。まじか。


「だってお前もさ、高校の時におっさんと一緒に寝るの嫌だろ?俺とお前が一緒に寝るようなもんだよ。」

「…………。」

「露骨に嫌そうな顔してんじゃねーよ。」


いや、考えただけで嫌だ。
……嘘だろ双葉そんな思いで俺と一緒に寝てるのかよ。


「ぇー………」


かなりのショック受けた。
そうか、そういうことか。


「相手高校二年生なんだぞ。小学生とは違うんだから」

「俺にとっては変わんないんですよ……」

机に頭を突っ伏す
回りの視線なんて気にしない


「なんでお前が彼女できねーのか不思議だったが、そういうことか」

「………」


どういうことなんですか。


俺だって前はいた。
いまだってそれなりに誘いはあるし

……じゃあなんで出来ないんだろうな……

なんとなく不思議に思ったが、いまは双葉の事に精一杯だった。
というか、欲しいと思わない。


「……で、どうすればいいんですか。」

「知らね。耐えろ」


他人事だな…
まあ、でも普通そんなもんだよなあ



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bkm