08


「うちみ、内海!!!!お客さん!!!!」


母さんの声にハッと目が覚めた
俺気づかないうちに寝てたのか…まあ二日連続徹夜だしな


「なにー」

「お客さんだって、友達!」

「いーよ、入れて」


寝ぼけた頭の俺は適当に返事をして、また布団に潜る
スマホで時間を確認すると午後5時になっていて。


五時…?
薄暗いけど…えーと、五時って…


なかなか冴えない頭
完全に頭がさえたのは、そのお客さんと言われた人物が入ってきたときだった。


「あれ?寝てたの?」


その声にビクリと反射的に固まる。


…こ、の、声……



「おーい、うみー。」

「なんだよ…」


やっぱり、お前かよ。


布団の上から肩を触られ息が詰まる

なんでここにいんだよ
俺の気もしらないで


「具合、悪いんでしょ。」

「だから寝てんだよ」

「……あ、そうだよね」


なんだよその小さい声
気を使ってるのか


なんだか居たたまれなくて布団から顔を出す
すると、秋斗は安心しきったように微笑んだ

……なに、その顔


「これ、さっきおばさんに渡してって頼まれた」

「……サンキュ」

「どこが具合悪いの?」

「お腹」


布団から起き上がり秋斗の顔を見る
ああ、きっと俺今ひどい顔をしてるに決まってる
髪もボサボサだし


「寝起きのうみ、なんか新鮮」


ふふ、と笑いながら俺の髪を撫でる秋斗

……お前はいつもそうやって俺をタブらかす
これ以上俺を落とさないでくれ。


「熱とかは?」

「ねえよ。」


あくびをしながら答える
内心は心臓ばくばく

ああ、俺ってバカなヤツ

他人に抱かれて、好きな人には友達としか見られない
なのにこんなに期待をする

今だって、その目に映ってるのが自分だけってだけで体が熱い


「うみ、そんな格好じゃ風邪引くよ」

「布団かけてるから大丈夫」

「お腹冷やしちゃダメだよ」


そう言って俺にカーディガンをかけてくる秋斗
その優しさに余計胸がいたんでため息をつく


お前の匂いなんか、思い出したくなかった





煙草じゃない香り