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「どうしてそんな一途でいられんの?」

半裸の男が煙草に火をつけながらベッドに腰かけた
肩甲骨と綺麗なラインの背骨がほどよく浮き出たその背中は見慣れたもの

俺は裸で布団にくるまったままとくに動かない


「わかんない」

ハァ、とため息をついて寝返りを打つ。体だっる。


「俺は一人に縛られるなんて考えたくもなかったけど」

そう言う男は、その言葉の通り遊び人だった。下半身が緩く、適当に関係を持ってる相手。

俺の処女喪失のきっかけであり、俺の悩み相談にもなっている
適当な性格をしているからこちらも気を使わないですむ


「そんないい男なわけ。そいつ」

「顔良し性格良し相性良し」

「俺より勝ってるのは性格ぐらいじゃねー?相性ってのは体の方だけど」

………。はぁ。

確かに、この人は顔もやたらいいし、セックスもうまい
初めてなのにあんなに気持ちいいと感じるとは思っていなかった

黒に近い茶髪も似合ってる
スタイルもいいから、男としては羨ましいものをすべて持っている

「なんだろうね。どこが、惚れるきっかけになったのかわからない」

俺の名前を呼ぶ声が好きだった
呼び方とか、ちょっとクセのある声とか

笑い方とか。

あげればキリがないのはわかっているから口に出さない

そうしているとしっとりとした唇が俺の唇に重なった
煙草味の、少し苦いキスに顔をしかめる

「……なに」

「ノヤちゃんの悲しそうな顔とか見たくないんだよね」

「駒田さん、そんなイイ人だったっけ」

「……気に当てられたのかも」

フッと笑う駒田さん
俺よりも8つ上だから、その笑顔はどこか大人っぽい

煙草の火を消して、俺の髪を優しく撫でた駒田さんはそのまま深く唇を合わせてきた





好きな匂い