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秋斗は一体、何を言っているんだろう。
俺に迷惑がかかると思ったから秋斗が代わりに付き合ったと秋斗はおかしなことを言っている

色々な情報が一気にきすぎて処理ができない。口の中が乾燥して生唾を飲んだ。


「うみが別れてほしいって言うなら俺はすぐにあの女と別れるよ。」


俺の顎を、綺麗な指でサラリと掬う秋斗。ドクドクと心臓がうるさい。


「な、んで…そんなこと…」


優しい秋斗が、他の人の心を平気で踏みにじることが出来るとは思わなかった。

だって、彼女のことを話す秋斗の瞳は、好きで好きで仕方ないってことを物語っていたのだから。
俺は親友だったから、わかっていたつもりだった。だから俺はお前と一緒にいるのがつらかった。

それも演技だったっていうこと?

その事実に、急に寒気がする
こいつの本当の顔は、どれ。



「可愛いって思っちゃったからなんだよね。」

「え、」

「俺があの女の話をしてる時、泣きそうな顔をするうみが。」


俺が大好きだった優しい笑顔で、秋斗がそう呟いた。

バレていた。
あの子への嫉妬心が。

その事が恥ずかしくて、顔に熱が集まる。羞恥に近い。全てを見抜かれていたことなんて、そんな、


「でもそんなことしてるから、うみが余所見しちゃったんだよね。…本当に、失敗した」


秋斗が今まで聞いたことのない冷たい声でそう呟いた。
さっきの優しい笑顔も、一瞬で目が怖いくらい冷え切っている。


「あ、うみには怒ってないよ俺自身に怒ってるの。…うみは寂しかったんだよね?俺と一緒にいられなくて」


ギシリ、と軋んだベッド
秋斗がゆっくりと俺を押し倒した
俺の顔を包んだまま、目を離さない


「可愛い、うみ。ごめんね寂しい思いをさせちゃって」

「・・・っ、」


俺はこんな秋斗、知らない。

俺にこんな甘い言葉を吐いて、女に触れるような指先で俺を触れる秋斗を。
こんな歪んだ笑顔を浮かべる秋斗を俺は、知らなかった。


「これからは、ずーっとうみの側にいてあげるから」


怖さのあまり、何も言えずにただただ震えていると秋斗の顔が近づいてきて柔らかいものが唇に触れた

秋斗の唇
ずっと望んでいたはずのもの

けれど今の俺はそうじゃない





お前は誰だ