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「や、やめて秋斗っ」


気付いたら秋斗のことを押し返していた。一瞬目を丸くする秋斗、だけどすぐに笑顔になる


「ごめん、怖い?」


穏やかな秋斗の声色

…怖い?
たぶん、そうなんだろう。
秋斗で間違いないはずなのに、まるで別人。
それとも、親友の知らない一面があったことにショックを感じてるのかもしれない。

俺は涙を流していて、秋斗がそれに優しく触れた


「うみが嫌だって言うなら、何もしないよ。今までのままがいいって言うなら今までのままうみに接する。…でもさ、」


秋斗が言葉を止めた
涙で霞む視界の中どうにかして秋斗を見上げる


「ずっと、俺とセックスしたかったんでしょ、うみ」


耳元で甘ったるく囁かれた
頭ではわかってるのに、秋斗の声にゾクゾクと身体が震えてしまう自分がいる


「あ、あきと、」

「俺もずっとうみとセックスしたかったよ。いろんな事を想像した。他の女とヤる時もずっとうみのこと考えてたの。じゃないと他のやつとセックスなんて出来ない」


俺にそう話しかけながら、服の上から俺の身体をなぞっていく秋斗。骨の位置を一つ一つ確認するように、丁寧に触れていく


「っ、…」

自分でもなんて淫乱な体なんだって呆れた。こんなに怖くて仕方ないのに、秋斗に触れられて悦んでいる俺の身体


「うみは何も考えなくていいんだよ…自分を責めないで、何もおかしい事じゃないんだから」


右手で俺の胸の突起を、左手で俺の顎に指を滑らせ唇で俺の本能を呼び覚ましていく

とめなければ、
頭の中ではそう思うのに理性がどろどろに溶かされていく

気づけば俺は荒い呼吸を繰り返し、秋斗の指先に翻弄されていた

何度もキスをし、服を脱がされ秋斗の言葉にすら反応してしまう

ああ、こんなの間違っている
秋斗の歪んだ愛情を指摘しなければならないのに、口から出てくるのは甘ったるい女のような嬌声


「ぁ、あきと…っ、」


本当にとんだ売春婦だ
俺はただただ快楽を求める淫乱
大事なところで友人を止める決意も持ち合わせていない

秋斗に深い口付けをして熱い舌を何度もなんども絡ませあう

獣じみた性行為
でも、抱き寄せた時の背中の広さだとか、俺の身体への触れ方とかがいつもと違っていてどこか違和感を覚える

あぁ…なんでこんな時に駒田さんのこと思い出してるんだろう俺

こんなに喘いでどろどろに溶かされてるのに、突然涙が出てきた。こぼれ落ちる前に、目を閉じて誤魔化す。


この時にはもう、自分で自分がわからなくなっていた


俺は秋斗を心の底から好きだった
その想いを隠して生活する中で駒田さんと出会って性行為をして
知らない秋斗を知って怯えて、でも結局性行為をして
秋斗とのこの行為を俺は望んでいたんじゃなかったのか

なのにどうして、こんなに悲しくなってるの


「好きだようみ」


俺の身体にピッタリくっつきながら俺に言ってくれた秋斗。怖いくらい優しくて甘い声。
その声とずっとずっと望んでいた言葉に達してしまった。荒い息に汗、白濁。


ぼんやりとしていく意識の中で俺は気づいてしまった


この人が近くにくればくるほど、

あの人が遠くに行ってしまうことに


そもそも都合のいい関係だったのだから別に何かが変わるわけでもない。あの人は俺のことなんとも思ってないかもしれない。

俺は晴れて両思い
そして駒田さんとは別れを告げる
だって、駒田さんは秋斗の代わりだったんだから。


俺はいつから間違っていたんだ。
駒田さんを利用していたからこんなに苦しくて仕方ないのか。

それとも、知らない秋斗に心が追いついていないからなのか。



…もう、何が何だかわからなかった。
異常な関係
異常な世界
何もかも手遅れだった。

俺はもう、望みを叶えてしまったんだから。



(駒田さん…)



今までずっと好きだった人とキスを交わしながら、都合のいいだけだった筈の相手の名前を心の中で呼んだ



ーーー

気付いたら駒田さんにも惚れてしまっていた受け。駒田さんと離れてしまうことが悲しくてたまらない。でも秋斗が好き。自分でも自分がコントロールできないでいる、って感じ。

駒田さんなら受けを奪いに来そうですけどね。どうなるかがご想像にお任せ。

ありがとうございました。


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