誤算、伝染中 | ナノ
何かに振り回される


怖い夢を見た。


俺は子供になっていて、俺よりも少し小さな男の子が、女の人に抱かれて泣いてる夢
とにかく周りが真っ黒で二人以外何も見えない世界。

『あなたのせいよ』

その女性が恐ろしい形相でそう俺に向かって呟いた
あなたのせいで、と何度も繰り返しているその女性

その光景があまりにも怖くて、小さな俺はただただ俯いて震えていた


『どうしてこの子がこんな目に遭わなきゃいけないの』


そして突然ガッ、と俺の髪の毛が掴まれた
痛さに呻く俺

ごめんなさい、
やめてよ、痛いよ

夢のせいか、怖さのせいか、俺の声はうまく出てくれない。
涙で滲む視界のなか、目の前に飛び込んできた女性の目は、怖いくらい血走っていた。

『お前なんかいらないのに!!!』



「うわっ!!」


吃驚して目が覚めた。
ビッショリと首に汗をかいていて、不快な気分で目を覚ます。

なんか頭が痛い。
つか、泣いてるし。


「大丈夫?」


すぐ後ろで心配そうな声が聞こえた。
吃驚して振り向くと、真澄がいて。
「うなされてたよ、」と教えてくれた


「なんか、夢見た気がしたんだけど・・・何見たか忘れちゃった…」


超怖い夢だった気がする。懐かしいような…。
つか、あれ?俺ソファで寝てたの。

しかも真澄が座ってるってことは、真澄の太ももを枕にしてたって事。


「ごめん、俺いつの間に寝た?」


真澄の太ももを摩りながら聞く
今は11時。
もうこんな時間か…。食堂から戻ってきてから大分たってるな。
重かっただろうに


「部屋戻ってグスグスしてる間に寝てたよ」

「えー、まじでごめん。痛かった?」

「平気だよ。それよりお風呂入っておいで」


目元を親指で優しく撫でられた。
真澄の黒い瞳が心配そうに揺れている


え、俺そんな目腫れてるの?


「侑介に言われた事、そんなにショックだったの?」

「死ぬかと思った・・・」


まじで・・・。
侑くんの言葉一つで俺の命が左右されちゃう


やばい、思い出しただけで泣きそう。


ため息をつきながらシャツのボタンを外していく。嬉しいことがあった後地獄が待ってるんだもんなあ…。


「ここで脱がないでよ」

「えー…。一緒に風呂入る?」

「馬鹿言わないで」


なんだよー。男同士だからいいじゃんか。
こいつ絶対温泉行けないタイプの奴だ。

まあ気にせず脱ぐんだけど。

上半身裸になって、ベルトに手を掛けたところで太ももに蹴りを入れられて思わず笑った。
反応めっちゃ面白い


ケラケラ笑いながら脱衣所に逃げ込む
その時携帯を確認したら通知が1件あった


んー?誰だ。
俺友達いないから、連絡来るってなると生徒会関係者・・・。


そう思いながらその連絡相手を見て、思わず携帯を落としそうになる


『泣き虫』


その一通だけがラインの通知として来ていた。


相手は、あの、侑くん。


侑君!!!
侑君!!!
侑君からのライン!!!!!


「ゆ、侑くんからライン来てた〜〜!!!!」


悲しみなど一瞬で吹っ飛び、嬉しさのあまり脱衣場を飛び出す。
さっきまでズボン履いてたんだけど、パン1で真澄の所に駆け寄った

携帯の画面を見せながら、勢い余って真澄に飛び乗る
ドスン、と横に倒れる真澄
いくらソファの上と言えど、勢いがすごすぎて「いてっ!」と真澄が声を上げた


「ねえ、真澄!侑くんから連絡きてた!」


俺が泣いたから心配したのかなあ!
もうもう!そういうところが可愛いんだから〜!うーっ!


堪らなくなって押し倒してしまった真澄のおでことほっぺに何回もチューをする
今なら口にだってキスできる。ディープキスも歓迎だぞっ!

俺が猛烈にチューしてるというのに無反応な真澄
10回くらいチューをした時に不思議になって真澄を見下ろした


・・・?


「ます…どぅああっっ!!!!?」


突然起き上がった真澄にひっくり返される俺
ゴチンッとソファの端っこに頭を打って悶絶する。い、痛いっ!


目を開けると、俺に覆いかぶさってる真澄
頭が俺の胸の上あたりにあって、前髪が真澄の顔を隠してるためどんな表情をしてるかわからない


ただただ無言。

けれど俺は、何かを察した。


なんか、

ヤバい気がする



真澄の腕の間から抜けようと、そろりと身体を上にずらしていく
が、腕を掴まれ思いっきり引き寄せられた

ひ、ひぇっ!



目の前に広がった、真澄の綺麗な顔。
いつもの真ん中分けの前髪が乱れて、目元に微かに髪が掛かり色気が増している
長いまつ毛、冷めた黒い瞳

が、色気なんか感じないほどの恐ろしい雰囲気を感じ取った
こんな怖い真顔が出来る人間、他にいるだろうか

ブルブル震える俺に、ゆっくり口を開く真澄

そして、


「次やったらブチ犯すぞ」


と、普段から考えられないような荒い言葉遣いと、恐ろしい表情を披露してくれました。
しかも、ガブッとおでこに噛みついてくるという凶暴振り


「ギャンッ!」


痛い!!!

これは俺がおでこにキスをした仕返しなのか、
あまりの痛さに変な声がでた俺


真澄の怖いところ。

それは、

突然人格が変わること。


だからあまり怒らせちゃいけないよ!!!




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bkm