誤算、伝染中 | ナノ
11


「△○※+*%&×!!!!!」

「もー、本当のこと言っちゃだめですって」


千歳に向かってバシバシバシバシと連続で肩を叩きまくった
呆れる真澄と、何の気にも留めてない顔をしてる千歳

なんだよなんだよ!
面倒くせえってなんだよ!!


しかも俺結構本気で叩いてるのになんでそんな澄ました顔してんだよ!


「ほら、口開けろ」


肩を叩いてる最中に千歳にエビチリを差し出された
レンゲにのってるおいしそうなエビさん。

口を開けてそれを迎え入れると、千歳が笑った
全人類を惚れさせられる綺麗な目を緩めている。


「な、なんだよ…」

「単純だな」


クスクス笑い続ける千歳
馬鹿にされてることだけはわかったぞ
エビチリ出されて食って何が悪い!


「ちょっとぉ、イチャつくのやめてくんなぁい」

「イチャついてません!」


勘弁して気持ち悪いな
いくら顔がよくても千歳は無理

イチャつくなら侑くんがいい


はっ、そういえば侑君!


そろそろ食堂にきたんじゃないか!?


突然立ち上がった俺に、目を丸くする一同
急いでラインを見ると、既読がついていた

こ、これは…!
食堂に居る気がする!


「侑くん探してくる!」

「おい」


踵を返そうとした時、腕を掴まれた
俺を見上げてる千歳

なんだよ!


「レンゲは置いてけよ」


その一言に、右手を見てみると確かにレンゲを握りっぱなしだった。

あぶねーあぶねー!
珍しくナイスじゃんか千歳!

レンゲ握ったままとか、間抜けすぎるもんな!



ーーー


グレージュ色の髪
スラッと伸びた手足
黒のスウェット姿

あの眩しい後姿は、

侑君!


「侑くーん!会いたかったよーー!!」

「うわっ!」


後姿に思いっきりハグをした
ああ、侑くんの匂いだ!
良い匂い!最高!


「っ、涼!?いい加減にしろよお前!」


グリグリと肩甲骨におでこを擦りつけていたらベリィッと剥がされた
気のせいか顔が赤い侑くん
照れてるのかな?可愛い〜!


「侑君、心配したんだよー!いつもご飯食べてる時間なのにいないから!」


侑くんの可愛い顔を手で挟みながら、自分がどれだけ心配したかを伝える
ああ、でもよかった、本当に何事もなくて!


「たまには、返信頂戴?俺、心配で心配で、死にそうになるから」

「大袈裟だな…」


俺の手を剥がしながらそう呟く侑くん
大袈裟なものがありますか!
本心なんだから!


「てっきり侑くんが誰かに襲われてるのかと思ってさ…」


あの時は、心臓が止まるかと思った・・・
真澄の冷静な判断がなかったら、放送室に行ってアナウンスしてるところだったよ…。


「それはまじでねーから。」

「あるから、本当。ないわけがないんだから。今日は何してたの」

「・・・なんでもいいだろ・・・」


顔を逸らされた。
いつの間にか俺は、背伸びをしながら侑くんの顔ギリギリまで近づいてたらしい

なにその含みのある言い方・・・
なんかあったのかな…

お風呂入ってからくるのも怪しいし…

えっ、えっ、なに、
まさか、なんか、そういう・・・
身体を洗い流さなきゃいけないような何かをしてきたわけ?


「ちょっと待て、お前変な想像するから言うわ。部活見学でいろんな部活に振り回されたんだよ、小鳥遊に。」

「タカナシィ?…ああ、あの金髪の小鳥遊・・・。まだ仲良いんだね…」


怪しい…。
小鳥遊ってやつは確かに侑くんの中学の頃からの友人ではあるが、あいつはイケメンの部類だ。どちらかといったらアレをツッコむ方の部類だ。あと俺はあいつが嫌いだ。

お、俺が知らない間にあんなことやそんなことしてたらどうしよう…!!!?


「変な想像はやめろよ。どうなってんだよその頭」


ひどい!


「だ、だって、心配なんだもん!何もかもが!」

「何に心配要素あんだよ!むしろお前の方が小せえし細いしで狙われやすいだろうが!」

「俺は別に顔が侑くん程整ってるわけじゃないから大丈夫なんだよ!」


お互い息が上がる程口論しあった
なんでわかってくれないんだ!自分の可愛さを!

俺の言葉にハア?と眉を寄せる侑くん


「大丈夫じゃねーだろ。知らねーうちに生徒会書記になんかになって、有名人なんだから」


そう言いながら俺のシャツに手を伸ばす侑くん。
二個開けてるシャツのボタンを一つ閉められた

その行動に、ドッキーーンと胸がなる俺

あ、あわわわわわわっわ、
侑くんにボタンしめられたーーー!!!!!!


キュンキュンしすぎて呼吸がままならなくなる俺


「ゆ、ゆ、・・・ユウクン・・・」

「とにかく、俺の心配とか一切するな。涼が心配するようなことは何もないから、いい加減弟離れしろって」


わかったか、と言われて何となく頷いてしまう俺
今何も考えられない。

いや、でも待って。
弟離れしろって言った?


「お、弟離れは出来ないよ!!!!!?」


正気に戻って、侑君にしがみつく
俺の行動に顔をしかめる侑くん


「いや、しろよ」

「やだよ、俺侑くんのこと大好きだもん!」


出来るなら一緒に寝たいし、お風呂にだって入りたい
そんなことを毎日思ってる俺が侑君離れなんか出来るわけないじゃない!


俺の言葉に目を丸くする侑くん

けれど、すぐに無表情になって俺を引きはがした


「・・・好きとか言うなよ気持ち悪い」


冷たくそう吐き捨てる侑くん


き、

気持ち悪い・・・?


その一言があまりにもショックすぎて、何かで殴られたような感覚に陥った


気持ち悪い、って言われた・・・
気持ち悪いって…!



「…っ、」


俺の顔を見て、一瞬侑くんが何かに焦ったように見えた
俺に手を伸ばしかけたけど、すぐに手を下ろして踵を返してしまう


「ゆ・・・、」

「とにかく、俺のことはほっとけ。」


その言葉を最後に侑くんが離れていってしまった。


さっきの言葉がショックすぎて、動けなくなる俺
追いかける元気もなく、その場で立ちすくんだ。


気持ち悪いは、初めて言われたな…。
ずっとそう思われてたのかな…。

ギチギチと心臓が何かに絞られているようだった。
胸が痛くなって、同時に目も霞み始める


「涼」


優しく肩を撫でられた。

この声は真澄。
いつの間にこっちに来てたんだろう。


「食器片づけておいたから、部屋に戻ろ」


頭を撫でられた後に左手を引かれた。
普段、真澄は人目がつく場で触られたり触ったりすることが嫌いだけど、それを無視するほど俺の事を気遣ってくれたらしい。


「うん…」


気づいたら、涙がボロボロとこぼれていた。
何も見えなくて、真澄に手を引かれるまま歩く。

ザワザワと煩くなる周り。
もしかしたらさっきから煩かったかもしれないけど、今気づいた。


・・・あ、そういえば・・・。


ピアスのこと、聞けなかったな。
生徒会の事も。






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bkm