誤算、伝染中 | ナノ
24*

※性描写あるので注意※



部屋に到着すると、真澄は俺を浴室に連れて行ってくれた。
靴も履きっぱなしの状態で浴槽の淵に座らせられ、ぼんやりした頭で浴室内を見渡す。

見慣れた風呂場なのに、なんか、変な感じ。


「…薬はまだ抜けてないよね」

「ん…」


あまり抜けていない。さっき、一回出したのに。
頭はぼやけたままだし、肌は敏感だし、分厚いロングスカートで色々隠れてるがまずい状態は継続中

真澄は俺の様子を伺いながらスニーカーを脱がしてくれた。
ありがたい限りだけど、今足触られるのだってやばいんだが。少しの刺激にも「ンッ」と声が漏れてしまうのが嫌で仕方ない。

俺は照れくささやら我慢やらで真澄の顔を見れずに斜め下を見下ろしたまま耐える。

俺のそんな様子がおかしかったのか、真澄がフッと笑みを溢した。


「今、水持ってくるからちょっと待ってて」

「…まじでありがと」


ぐったりしながら御礼を言うと、真澄に顎を掬われた。俺の顔を見下ろす真澄。ひんやりした指先で俺の顔に滲んでる汗を拭われる。それだけでまた声を漏らしそうになるから咄嗟に口を抑えた。

…なんだよ…!


「今回ばかりはさすがの涼も参ってるみたいだね」


若干の笑みを浮かべながら、水を取りに行ってくれた真澄。
今回ばかりは、ってなんだ。過去1厄介な目に遭ってるぞ。

真澄が浴室から出てったのを確認した後、自分の惨状を鏡越しに確認する。
風邪を引いたときみたいに火照った顔つき、少しボサついてる髪、おまけにメイド服。

…つかまず下着がやばいんだよな…


ため息をつきながら、さっさと下着を脱ぎ捨てる。とりあえず手洗い…?
はー、こんなの中1の時以来じゃないか。

よっこいしょ、と腰を浮かせてお湯を下着に当てたあとボディーソープで泡まみれにする。メイド服も脱ぐか。

真澄の、敢えて何も聞いてこないまま浴室に運んでくるあたりのこの感じ。俺が射精しちゃったのわかってるのに何も触れないでくれたの逆に恥ずかしい。


「はぁーっ…」


さっきのことを思い出したせいでどデカいため息が出た。
ため息ですらどこか声は甘ったるいままで自分を殴りたくなる。気色悪いんだよ!俺!

色々な葛藤を持ちつつも背中のボタンに手をかける。が、考えてみたらこれ、俺一人で出来なかったんだよな。真澄にやってもらうか。

とりあえず胸元のリボンを解いてると真澄が戻ってきた。


「はいお水」

「・・・」


恥ずかしさが消えないまま無言でペットボトルを受け取る。真澄は俺の足元に転がってる泡まみれの物体に目をやったがやっぱり何も言ってこなかった。


「背中、…ボタン外して欲しい」


ベットボトルに口をつけながらボソボソと真澄にお願いする。間違いなく地獄の空間。気絶したい。


「いいよ、鏡の方むいて」

「ん」


ゴクゴクと水を飲みながら大人しくそれに従った。ずっと汗かきっぱなしだから、喉が渇いて仕方なかった。一気に半分くらい飲み干した気がする。


「今更だけど、この格好似合ってるよ」


そう言いなら、ボタンを外していく真澄。
正気か?と鏡越しに真澄を見ると目が合った。


「俺は全くそう思わない」

「だろうね。涼は自分に関することに対して鈍感だから」


前も同じことを言われた気がする。
でも男のメイド服姿なんてきっとこの学園だから盛り上がるだけで、普通の学校だったら盛り下がるだろう。

真澄はそのまま甲斐甲斐しくも俺の袖のボタンを外してくれるらしく、「座って」と再度声を掛けてきた。

大人しく浴槽の淵に腰掛けると同じく隣に腰掛ける真澄。そのまま俺の手を取り、腕のボタンを外してくれる。

綺麗な真澄の手。

爪は綺麗に切り揃えられてて、骨格は男らしい。それが一つ一つ、ボタンを外していくのをぼんやりと眺める。

……俺、さっき、この指で……。

真澄は故意ではないんだろうけど、この指で達してしまった。偶然触れてるだけだったというのに、骨の髄まで溶けそうな感覚だった。

もしこの指に故意に触れられたら、どうなってしまうんだろう。


・・・。
…っいやいやいや…!


何で今のタイミングで思い出すんだ。しかも想像までして。
考えたら終わりだ、と唇を噛みながら自分を戒める。
耐えてくれ俺の理性。


「くすぐったかった?」


俺が我慢してることがわかってたんだろう。
ボタンを全部外し終わったところで俯く俺の顔を覗き込みながら笑う真澄。
お前、優しいのか意地悪なのかどっちかにしろよ。


「…涼、唇噛みすぎると切れちゃうよ」


真澄は俺の唇に手を添えてきた。
相変わらずひんやりしている指が、俺の熱すぎる顔に溶けていく。


「・・・ぅ、」

「我慢しなくていいのに」


いいわけがないだろう。
とんでもないことになるぞ。

唇を触れられただけでも、肩が震え、胸が浮いてしまう情けない俺。

何か反論しようとするが、口を開こうとするとまた喘ぎ声がでそうな気がするから、首を横に僅かに振るだけにする。
さっきから荒い呼吸をしっぱなしだけど、唇に触れているこの指先があまりにも官能的に感じてしまって、色々耐えられそうにない。

なにこれ、薬の第二波的な?

頭の中が”はやく処理したい”の一色で染まり始める。


「ッ、…あとは、…ひとりで、」


『一人で処理するから』、と言葉にしようとする。何なら、今すぐにでも。
が、ほぼ掠れ声かつ小さすぎて、囁き声のようなものだった。


「…涼、早く薬抜かないと、ずっとつらいままだよ」


真澄は、俺が理性をギリギリ保っていることに気づいてるんだろう。
いつものような心配そうな声色で俺を諭してきた。

あと少しで糸が切れてしまうことも、俺がさっきみたいな状態になって、下手すれば止まらなくなってしまうことも。全部気づかれてる。

真澄は鼻先がぶつかりそうな距離で、俺の目を覗いていた。
唇だって、もう、あと少しで触れてしまう距離にある。少しでも俺が首を伸ばせば届いてしまう距離。

さっきは、部屋の外だったから、まだ歯止めが効いた。
でも、今度は?
二人きりの空間、気にするものが無い時間。
一度枷を外したら、ストップと言われも、我慢できる自信がない。

これ以上、真澄に、変な所を見せるなんて。

そんな俺の心情を汲み取ってるのか、「大丈夫だよ」と俺に囁いた真澄。


「全部薬のせいなんだから、涼は悪くない…手伝わせて」


真澄は俺を誘導させるのが上手だった。
あくまで俺は悪くない、別の何かのせい、そうすることで逃げ道を作ってくれる。
今の俺からしたら悪魔の囁きでしかない。


…。
だめだ…。


俺は限界だった。それこそ、吸血鬼が目の前の血を前にして我慢させられてるような気分。そんなタイミングで、「大丈夫だよ」なんて優しいこと言われたら。

それに耐えられれば良かったのに、流されてしまうのが俺。
ましてや、俺に優しい真澄が相手となれば、尚更。

・・・意思弱すぎ。


「…っン…」


真澄の言葉を皮切りに、先に動いたのはどっちからだったか。
たぶん、俺。

俺はまた、真澄にしがみつくような形で、真澄の首に腕を回し唇を合わせていた。


「…ッ、ふ、…」


俺の声に混ざって、真澄からも吐息が聞こえてきた。
真澄は俺が浴槽に落ちないよう、背中に手を回しながら俺にキスを返してくれる。
唇の柔らかさと舌の感触に熱がまた高まるのが感じて取れた。一気に血が全身に回りはじめ、頭がグルグルする。

てか、手伝うって…、アレを抜くってこと?
よく考えずに、衝動で動いてしまった。


「っ、は、ぁ、待っ…、」


静かなお風呂場に響く、キスの音と俺の甘ったるすぎる吐息交じりの声。少し上擦っている声がまるで女のようで嫌になる。が、それ以上にキスと真澄の手が気持ちよくて、声を抑えられない。


(なにこれ、さっきよりも…ッ)


一度達してるせいか、さっきよりも敏感になってる全身。

真澄はキスをしながら俺のメイド服を脱がしてくれているようだった。
器用に、袖を俺の腕から抜き取る様子が目の端に写る。
…慣れてんなぁ…

上半身が完全に空気に触れたところで、真澄は俺の首筋に顔を埋めてきた。
舌が首筋を這うという、慣れていない感触に指先まで甘い痺れが走る。

やば、い


「待、っ…おれ、汗…」


力の入らない指で真澄の髪を掴んで顔を剥がそうとするが、真澄に手を握られてしまった。
薄っすら笑っている真澄。その表情に胸が謎に締め付けられる。

なんだその悪魔みたいな顔。そんな顔出来るのかお前。


「気にならないよ別に」

「そう言う問題じゃ、な、…ンんっ…!」


俺を黙らせるかのようにして、ガブ、と首を噛まれた。甘噛み。
噛まれたところからビリビリと電撃のようなものが走り、力が入らなくなる。
どうしよう、もう、座ってるのもきつくなってきた


「ハッ、はぁ、ッ…、ますみ、ン、シャワー、…おねがい」


どうにか声をふり絞って真澄にお願いする
ずり下がるスカート部分をどうにか腰の位置に抑えつけるが、考えてみたらこのスカートの中だってぐちゃぐちゃな状態だ。手伝うってことは、きっとこの部分も触られるのだから、何が何でもシャワーは浴びたかった。

その願いが通じたのか、真澄は俺の唇にキスを一つ落としたあと、シャワーヘッドに手を伸ばしてくれた。俺は自力で座ってられないので、壁側に移動して壁に身体を預ける。壁、冷たい。気持ちい。


「…スカート、そのままが良い?」


真澄がシャワーの温度調節をしながら俺にそう聞いてきた。
俺がスカートを握っているのが気になったんだろう。


「・・・。」


頷く。
なんというか、反応してる自分の恥部なんか見られたくない。
誰だってそうだろう、親友相手に、そんな。


「…どっちにしろ洗濯するし、濡れても良いか。有岡さん、回収するかな?」

「…回収しそう…」


完全に考えてなかった。急に申し訳なくなってくる。
いくら洗濯するといえど、俺の体液べっとりついてたメイド服を返すなんて。


「どうにか落としておくよ」


そういいながら真澄は俺を姫抱きで持ち上げてくれた。
俺を床にそっと下ろし、Tシャツを脱ぎ始める真澄。

何事もない様子でシャワーヘッド片手に持つ真澄だったが、俺は目の前の綺麗な肉体に視線のやり場に困った。

以前、真澄が風邪を引いたときも真澄の上裸はみたけど、でも、今は状況が違う。





prev mokuji next
bkm