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そんなの…おかしいよ。ツナは道徳的な道から外れている男に、畏怖を抱きながら言葉を紡いだ。しかし骸にそんな言葉など届かない。


「他人の心配をしている暇があるんですか?」


その声でハッと気付いたように背後を振り返ると、そこにはフラフラと揺れながら佇む獄寺とビアンキがいた。


「自分がやられるという時にーー…」
「君は面白い男だがマフィア向きではありませんね」
「あ…っ」
「傷口から…!」


ツナと舞は目を見張った。2人は傷口から千種同様に血を垂れ流しにしていたから。今回の戦いで2人は結構な傷を負った。本来なら休まなくてはならない状態の中、無理に体を動かされているのだ。それで体が悲鳴を上げるのは当然だった。


「頼む!やめてくれ!このままじゃ死んじゃうよ!」
「お願い!死なせないで!」


必死にツナと舞は懇願する。失いたくはないのだ。だって決めたから。皆で過ごした楽しくも平凡な日常に帰ると。


「クフフフ。思い出しましたよ。君はバーズとの戦いでガールフレンドの為に自分でナイフを突き立てようとしたんですね。ーー…それでいきましょう。君はその甘さゆえ僕に乗っ取られる」
「え…」
「何言ってるの?そんなことできるわけ…!」


思わず舞は声を荒げる。ナイフを己に突いて乗っ取られる?冗談じゃない、と思った。そんなことをやらせるわけないと。でも、骸はどこまでも残虐だった。


「いいですか?君の仲間をこれ以上傷つけられたくなければ」
「逃げずに大人しく契約して下さい」
「な…!そ、そんな…」


ツナは言葉に迷った。骸の言いなりにはなりたくない。しかしその間にも獄寺達の体は傷ついていくのだ。


「やはり迷うのですね。どのみち、君のような人間はこの世界では生き残れない。ボンゴレ10代目には不適格です。さあ、体を明け渡してもらいましょう」


責め立てるように骸はツナに次々と言葉を発する。ツナはまるで自分の首が絞められていくように感じた。


「どうしよう………リ…リボーンどうしよう!!」
「俺は何もしてやれねーぞ。自分でなんとかしろ」
「そんなぁ。いつも助けてくれるじゃないか!!見捨てないでよ、リボーン!」


もう泣きそうだった。どうしたらいいかもわからないし、リボーンも何もしてくれない。できることであれば逃げ出したかった。マイナスの感情がポンポンと出てくる。するとリボーンに思い切り顎を蹴られた。


「情けねぇ声出すな」
「ブフッ。…だ…って…。俺…どうしたら…」


体が恐怖で自然と震えた。自分はただの中学生だ。こんなマフィアの抗争みたいなものに自分が何かやれる筈がない。でもリボーンはそう思っていなかった。ツナの襟をグイと引き寄せ、いつもの突拍子の無い言葉。でもそれをどこか確信付いている口調で諭った。


「いいかツナ」


ーーお前は誰よりもボンゴレ10代目なんだ。


「お前が気持ちを吐き出せば、それがボンゴレの答えだ」
「お…俺の…気持ち…?」
「骸に全てを壊されていいのか。お前の大切なものたちを全部」
「ツナ君……リボーン…」


舞はグッと流れそうだった涙をこらえた。絶望的であるこの状況。でも諦めたそこで終わりなのだ。絶望の先にある光に手を届かせるにはただ嘆いているだけではいけない。そしてその光を掴むことのできる人物はツナだと思った。いや、ツナにならできると思ったのだ。


「クフフフ。家庭教師もサジを投げましたか。彼の気持ちは"逃げ出したい"ですよ。それとも"仲間のために逃げられない"……かな?」
「…ちたい…」


ツナがボソリと呟く。


「骸に……勝ちたいーー…」


その瞬間、リボーンに背負われている球体であるレオンが僅かに震えた。


「ほう。これは意外ですね。だが続きはゆっくりと聞きましょう。君の手で舞意外の仲間を葬った後にね」


そこで犬は右目を四の修羅道に変えた。


「こんな酷い奴に…負けたくない…」

「こいつにだけは勝ちたいんだ!!」


強い覚悟を決めてツナが叫ぶ。その表情には先ほどまでの迷いや恐れを感じられない。その時、僅かに揺れていたレオンの動きが激しくなった。そして物凄い光を発し、この空間が白い光に包まれるとレオンから触手のようなものが出て部屋中に張り付いた。誰もが驚くがリボーンだけはニヤリと笑った。


「ついに羽化したな。あの時と一緒だ。ディーノが"跳ね馬"になった時とな」



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