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「、誰もいないッ」


舞は部屋を抜け出し、人を探していた。此処が骸のアジトであるならば先程、骸を呼びに来たように仲間の一人や二人いるはず。そいつらに骸の動向や居場所を吐かせるのが闇雲に走るよりも効率的と考えたのだ。だが人っ子一人見当たらない。一体、どうなっているのだろうか。


「こっちは、急いでるのに」


思わず舌打ちでも鳴らしたくなるが、気持ちを押さえ扉という扉を開けまくった。それでも誰も見つからない。自分が取られてしまった武器の代わりに持っている鉄パイプに怒りからギュッと力を入れた。


「……早く出て来いよっ!」


普段からは考えられないような低い声を舞は這わせ、怒りのまま鉄パイプをボロボロの壁に当てた。その瞬間、壊れかけの壁に鉄パイプがめり込みガラガラとそよ壁が崩れ、舞は正気に戻った。


「、ふぇ。壁…壊しちゃった?」


流石の舞も壁を破壊することができるとは自分でも思わなかったため少し慌てた。が、壁が脆かったんだ。そうに違いない、とから笑いをして誤魔化すことに決めた。火事場の馬鹿力という奴だ。ふと舞は壊した壁の先を眺めた。そこで大きく目を見開く。だって、そこにいたのは舞が大切だと言える人の一人であったから。


「っ、雲雀先輩!」


舞は慌てて横になっている雲雀の傍へと寄った。その雲雀の状態に舞は益々驚愕をした。あの並盛最強の雲雀がこんなにも傷を負っていることに。


「嘘…。先輩っ!」
「うるさいんだけど」
「なんで…先輩がこんな、」
「僕は平気だよ」
「でも…」


平気だと言われても、全然平気には見えなかった。こんなにも全身から血を流し、今もなお浅い呼吸を繰り返しているのだから。雲雀は傷ついた身体をゆっくりと起こし、舞はそれを支えた。きっと少しでも舞に心配かけまいと思ったのだろう。


「それより…君も捕まってたみたいだね」
「あ、はい。つい油断しちゃって」
「そう。………手首、跡ついてる」
「こ、これは縛られてたからで…でも怪我はあまり無いから平気ですよ!」


そう舞は言うが雲雀はその跡をジッと見て眉根を寄せた。あの男に自分の気に入っている小動物を傷つけられたことが許せなかったのだ。


「それよりも此処から出ましょう」
『緑にたなびく並盛のーー。大なく小なく並がいいー』
「え。何…この鳥?うちの校歌?」


早く此処から出ないと、と立ち上がった舞は目を見張った。黄色く小さな小鳥が壁の縁際で並盛の校歌を歌っていることに。そしてその瞬間であった。目の前にあった壁が爆発と共に崩れ去ったのは。


「へへっ…うちのダッセー校歌に愛着持ってんのは…おめーぐらいだぜ…」


壁を破壊したのは獄寺。そして、その傍に犬と千種も佇んでいた。


「んあ?こいつ……」
「並盛中風紀委員長、雲雀恭弥」
「元気そうじゃねーか。って、チビ女!?」
「ご、獄寺じゃん!」


獄寺は胸から血をダラダラと垂らしながら舞の存在に目を見開かせた。捕まっていた筈の彼女が此処にいることに驚愕したのだ。


「ヒャハハハハ。もしかしてこの死に損ないが助っ人かー!?」
「自分で出れたけどまぁいいや。そこの二匹は僕にくれるの?」


雲雀はふらり、としながら立ち上がった。身体は既にボロボロ。本来であれば闘うことなど言語道断であろう。でもその瞳には闘士が鋭く宿っていた。


「雲雀先輩…」


隣にいる舞も彼の身体が心配で堪らないが、止めることや手助けすることはできなかった。何故なら、雲雀はそれを群れることと同じ位に嫌うから。わかってはいるが、見ているだけは胸が軋むようであった。


「じゃあ、このザコ二匹は頂くよ」
「好きにしやがれ」
「死に損ないが何寝ぼけてんだ?こいつは俺がやる」
「言うと思った」


犬はカシャんと新しい牙を填めると徐々に身体が獣へと変化していった。


「ライオンチャンネル!!」
「ワオ。小犬かい?」


雲雀はクっと口角を上げると、その言葉にムカついたのか犬は「うるへーアヒルめ!」と鋭い爪を尖らせ雲雀へと向かった。そんな雲雀は足元のトンファーを蹴って拾い上げ、犬と千種に攻撃をするのであった。



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