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獄寺隼人vs.柿本千種


「(どーなってんだ?)」


獄寺は教室で授業中に携帯を弄りながら、眉を顰めた。欠席してる奴がやけに多いし、10代目もチビ女も来てねぇ。かったりーっ。心の中で、不満を漏らしていると携帯の電源が落ちた。


「あっ、切れた」


携帯と同様に獄寺の気分も落ちていく。獄寺は、チッと舌打ちをし席から立った。


「携帯の電池切れたから帰ります」
「コラ獄寺!!貴様、遅刻して今来たばっかりだろー!!」


教師の怒声が轟くが、それで振り返るような獄寺ではない。全ての言葉に無視をして、彼は教室を後にした。


「(でも、あのチビ女が学校に来てねぇのは妙だな)」


学校を出て、商店街を歩いている獄寺はポッケに両手を突っ込みながら舞のことを考えた。自分が知る限り、彼女が学校を休んだことは殆ど無いから不思議に思ったのだ。


「(もしかして風邪でも引いてんのかよ)」


以前、自分も風邪で休んだから舞もそうなのかもしれないと獄寺は考えた。だったら見舞いでも行って……って、アイツのことばっか考えすぎたろ!舞ばかりを考えていたことに気づいた獄寺はなんだか恥ずかしくなり、少しだけ赤い顔を顰めた。


「並盛中学。2ーA出席番号8番……獄寺隼人」


自分の名前が呼ばれ、獄寺は立ち止まった。そしてニット帽を被ったその男を怪訝そうに睨みつけた。


「早く済まそう。汗……かきたくないんだ」
「んだ、てめーは?」
「黒曜中2年。柿本千種。お前を壊しに来た」


千種は無表情のまま淡々と事を告げると獄寺は「は〜〜」と深い溜息を漏らした。ったく、なんでこう毎日他校の不良に絡まれんだか。けっこー地味に生きてんのに…。普段からダイナマイトを爆発させている彼はちっとも地味に生きてはいないが獄寺自身はそう思っているので千種の登場に、またか…と呆れた表情を見せた。


「わーった来やがれ。売られた喧嘩は買う主義だ」
「………急ぐよ。めんどいから」


瞬間、獄寺に思わず、ぞく…っと寒気が襲った。そう、千種から醸し出される殺気に震えたのだ。すると千種はポケットから何かを取り出し、大きく腕を振った。獄寺は避けるが頬に一筋の血が流れ、それを確認すると「チっ」と舌打ちをし踵を返して走り出した。


獄寺を追いかけるようにして、千種が角を曲がると降り注ぐダイナマイトの雨。しかし、千種は一切慌てる素振りを見せず慎重に自分のヘッジホッグと呼ばれるヨーヨーの武器で全てのダイナマイトの着火線を切った。そして、獄寺の隠れていた場所にヨーヨーを投げつける。


「…!!」


獄寺は驚いた。そのヨーヨーからは針のような物が複数飛び出していたのだ。それを避ける為に獄寺はダイナマイトを投げつけ、爆風により獄寺の体は千種の目の前に吹っ飛ばされる。片膝をつきながら、獄寺は千種を見上げた。


「(こいつ…ただの中坊どころか、殺気といい戦い方といい…プロの殺し屋だ)」


ツナや山本とは違い、以前からマフィアに所属している獄寺にはわかった。今、戦っている男は自分と同じ世界にいる者だと。


「黒曜中だ……?すっとぼけてんじゃねーぞ。てめーどこのファミリーのもんだ」
「やっと…当たりが出た」
「ああ?」
「お前にはファミリーの構成、ボスの正体。洗いざらい吐いてもらう」

でないと、あの女がどうなるかわかんないよ。


「はぁ!?何言ってんだ!」


獄寺は千種の言葉に目を見開く。


「狙いは10代目か!」


そして、また千種のヨーヨーが針を出しながら獄寺を襲う。獄寺は後ろに大きく下がり、ダイナマイトを両手に持つ。相手の狙いがボスだとわかった今、絶対に食い止めねーと…と表情を険しくさせた。


「2倍ボムッ!!」


ダイナマイトを投げつけるが、それはやはり簡単に交わされてしまう。「くそっ」と獄寺が悪態を吐くが、その合間にヨーヨーが左右に投げ込まれ獄寺を挟み討ちにする。


「(俺のスピードじゃよけきれねぇ!できりゃあ、この技は使いたくなかったぜ。だってよ…チビボムだからって…)」


獄寺はベルトに装着してある小さなダイナマイトを自分の背中に飛ばした。


「いてーんだよー!!」


ダイナマイトの爆風によって、獄寺は一気に千種との間合いを詰めることに成功する。そして至近距離でダイナマイトを当てた。爆発により体が傾いた所で更にダイナマイトを投げつける。


「ボンゴレなめんじゃねー。果てな」


今度はヨーヨーを防ぐ余裕が無かったかのか獄寺のダイナマイトを全て当たり、千種を倒したのであった。


「けっこーやばかったな。…それにしても」


ーーあの女って誰だ?


獄寺は戦いが終わり、地面に腰を下ろして煙草を吸いながら先ほど千種が言っていた「女」というのが誰のことだか気になっていた。すると、敬愛する人が自分の名を呼ぶ声が聞こえてきた。


「獄寺君!!」
「…!10代目!!どーして此処に?」
「いや…あの…もしかしてなんだけど…獄寺君が黒曜中の奴に狙われてるって噂みたいのがあって….」
「なっ。その為にわざわざ!!」


獄寺はツナが自分の為にわざわざ来てくれたことが嬉しかった。ダラんと伸ばしていた足を引っ込め正座をしながら「恐縮ッス!今やっつけたとこッス!」とペコリお辞儀をした。


「えーー!じゃあやっぱり、本当だったんだー!」
「その辺に転がしといたんで……!?な、いない!!」
「えっ?」


千種は確かにさっき獄寺が倒した筈。しかし倒れていた彼の姿はその場になく、ダイナマイトの燃え尽きた煙だけが立ち昇っていた。


「手間が省けた」


その声にツナと獄寺は動きを止めた。声の方へ振り向けば、血をボタボタと垂らしながら立っている千種であった。今にも倒れそうな敵を見て、ツナは「ひいいいいっ!」と悲鳴をあげる。


「(この人が黒曜の…こ…こんなヤバイ人に狙われんの?)」
「気をつけてください。奴の武器はヨーヨーです!!」
「そんなこと言われても、怖くて…動けないよ…」


ツナは余りの恐ろしさに怖くて逃げることができない。すると、いきなり襟元を掴まれ恐怖で「ひいっ」と泣き叫ぶ。


ーーザシュッ


その時…ツナの周りの時が止まったような気がした。自分を庇うようにして立つ獄寺の胸には複数の針が突き刺さっていたのだ。


「10代目…逃げてください」
「え…………!?」


獄寺はその一言だけを言うと力尽きたように大量の血を流して倒れた。


「うわぁ!獄寺君!大丈夫!?獄寺君!!」


何度も彼の名前を呼ぶが獄寺は応答しない。段々、怖くなって涙が零れ落ちそうになるが目の前の敵がパシっとヨーヨーを手に持つ音で今の状況を再理解した。


「壊してから、つれていく」


そう、目の前にいるのは本物の殺し屋。遊びではなく自分を標的として狙っている人物だ。今はリボーンも自分よりも強い獄寺もいない。正に「絶体絶命」だ。



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