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「お兄さん!大丈夫ですか?」


ツナは心底、心配したような顔つきで勢いよく了平の病室にリボーンと共に入った。


「おー沢田、早いな。情けないがこのザマだ」


ツナ達の目に映ったのは、いつも元気いっぱいの了平からは考えられない身体中が包帯に覆われた弱々しい姿。ツナは益々、顔を青ざめさせて頭を抱えた。


「ひいいい!!どーしてこんな目に〜!!?」
「怪我の具合はどーだ?」
「骨を6本折られて7か所にヒビ…そして…」


見ろ。歯を5本持っていかれた…。そう言い、歯を見せるように了平が口を開くと確かに歯が無く無残な様であった。ツナは、「ああ!」と白目を向きながら短い悲鳴を上げた。


「しかし襲って来た男…油断したとはいえ、恐ろしく強い男だった………」
「え?犯人見たんですか!?」
「ああ。奴は俺の名を知っていた。あの制服は隣町の黒曜中のものだ……」


ええっ!?中学生ですか!?ツナはこの並盛襲撃の犯人が中学生であることに驚いた。


「沢田も気をつけろよ」
「俺は関係ありませんって!」
「しかし………くそっ。あのパンチは我が部に欲しかったー!!」
「(こんな時でもボクシングー!!?)」


怪我をしても、やっぱり了平は了平だ。どんな時でもボクシングのことを考えている彼にツナは心の中で叫び声を上げた。しかしその後、今までパワフルであった了平がいつもより真剣な声で言葉を紡いだ。


「話は変わるが京子にはこのことを正直に話していない……。あいつすぐ心配するんでな。口裏を合わせといてくれ」
「え…?」


いきなりのことでツナは無意識でポロっと声を漏らす。すると、ガラっと病室の扉がツナの時と同じように勢いよく開かれた。「お兄ちゃん!」という声と共に。


「どうして銭湯の煙突なんて登ったの?」
「(どんな作り話したのー!?)」


なんとも無茶苦茶な作り話であるが京子は信じ切っているらしい。物凄く心配をしていた京子は兄である了平の姿を見ると、瞳に溜めた涙を拭った。


「でも良かった…生きてて……」
「な…なな…泣くなと言ってるだろ!!」


いつもは強気な了平も妹に泣かれると弱いらしい。ツナは兄妹の時間を壊さないように何も言わずにリボーンと共にソッと病室を後にした。


「何でお兄さんがやられてんの!?一体どーなってんのー!?」
「パニクッてんのはツナだけじゃねーな」


ツナが周りを見渡せば、病院は並中生で溢れていた。異様なこの光景にツナも驚き、目を見開く。


「おお、ダメツナ。大変なことになってんな!」


一人の男子生徒がツナに声をかけた。聞けば、剣道部の先輩のお見舞いに来たらしい。それに、今まで風紀委員ばかり襲われて来たが昨晩からは次々に風紀委員ではない生徒が襲われていると言うのだ。


「並中生が無差別に襲われてんだよ!」
「うそー!!なんで、そんな恐ろしいことにー!」
「マジやべーって。明日は我が身だぜ!」
「ってことは俺も関係あるの〜!?どーしよー!」


風紀委員ではないから自分が襲われる心配はないと考えていたが、無差別と聞いて自分も狙われかもと恐怖に駆られた。すると、ぬっと目立つリーゼン頭の風紀委員が二人ツナ達の背後を通った。


「では委員長の姿が見えないのだな」
「ええ。いつものようにおそらく敵の尻尾をつかんだかと…これで犯人側の壊滅は時間の問題です」

「聞いたか?」
「うん…」
「雲雀さん。敵やっつけに行ったって!」
「雲雀さんは無敵だぜ!これで安心だ」
「雲雀さんと同じ中学でよかったー!」
「後は頼みます!神様!雲雀様!」


不安気な表情から一転、風紀委員の話を聞いてツナ達は頬を緩ませた。雲雀がこの並盛で最強なことを理解しているからだ。だからこそ、彼がこの恐ろしい事件を解決してくれると信じて疑わなかった。



▽ ▲ ▽



雲雀は、並盛で事件を起こしている人物の基地を発見し、次々と黒曜の生徒を咬み殺していた。現在、対峙しているのは主犯格となる人物であろう。


「やあ」
「よく来ましたね」
「随分探したよ。君がイタズラの主謀者?」


カーテンの隙間から漏れる小さな光だけの薄暗い部屋。そんな場所で主犯格はボロボロのソファに座り、笑い声を上げた。


「クフフフ。そんなところですかね。そして君の街の新しい秩序」
「寝ぼけてるの?並盛に二つ秩序はいらない」
「全く同感です。僕がいるから君はいらない。それに彼女の隣は僕だけでいい」
「…誰のことだい?」


雲雀は男の言う、「彼女」のことを問う。一瞬、頭に浮かんだのは自分と同等に闘う小動物である少女。しかし強いあの少女がそんなに簡単に捕まる筈が無い。


「君が頭に浮かべた女性で当たりですよ。舞さんには少しだけ眠ってもらっていますが」
「…!舞に何かしたら許さない」
「彼女は僕の手中にあります。何をしようと僕の勝手です」


雲雀は、ムっと眉を吊り上げ「それは叶わないよ」と言い放ち、シャキッとトンファーを構える。そして不敵に笑った。


「君はここで咬み殺す」


しかしソファから全く動く気配の無い男に雲雀は彼に闘う意志が無いのか、声を掛けた。


「座ったまま死にたいの?」
「クフフフ。面白いことを言いますね。立つ必要がないから座ってるんですよ」


自分を舐めきっている男に雲雀は、怒りを覚える。


「君とはもう、口をきかない」
「どーぞ、お好きに。ただ、今喋っとかないと二度と口が聞けなくなりますよ」


その言葉を聞いて、雲雀は自分の身体の違和感をジワジワと感じた。


「んーー?汗が吹き出していますが、どうかなさいましたか?」
「黙れ」
「折角心配してあげてるのに。ほら、しっかりして下さいよ」


ーー僕はこっちですよ。


そこで雲雀の身体はフラっと傾く。一体何が起こっているのか。いや、あの男が自分に何かをしているのか。雲雀は、額からタラリと一滴の汗を流しながら相手を睨む。


「海外から取り寄せてみたんです。クフフフ。本当に苦手なんですね」


男は手に持っていたスイッチをカチっと押した。目の前に広がる光景に雲雀は目を見開く。


「桜」


ひらり、ひらりと舞う可憐な花弁は姿似合わず雲雀を蝕み身体の自由を奪った。



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