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「山本が屋上から飛び降りようとしてる!」


そんな物騒な声がツナ達の教室に聞こえた。聞いたクラスメイト達はそんなことないだろ…と笑い飛ばすがどうやら冗談ではないらしい。


「あいつ昨日一人居残って野球の練習しててムチャしてうでを骨折しちまったらしいんだ」
「(オレのせい…!!?)」
「とにかく行こうぜ」
「おう!」


クラスの皆は一斉に教室を飛び出し屋上へと向かった。教室に残っているのは青い顔をしているツナといつもと変わらない顔でツナを見ている舞だけ。


「沢田君行かないの?」
「…俺のせいだ。俺が山本に思ってもない事言っちゃったから。そのせいで山本は…」


ツナは今にも泣きそうだった。自分の言葉で人が死のうとしている。ツナにとっても心臓が握られるような辛い現実だ。


「あたしは行くけど、沢田君は行く?」
「…行かない。行けないよ」
「そっか。じゃあ、あたしから沢田君に一つ」
「ん?」


その言葉にツナは俯き気味になっていた視線を上げる。すると瞳にはいつもとは違う、けれど柔和に微笑む舞の姿が映った。


「後悔しているなら行動すればいいんだよ。どんなにカッコ悪くてもね。まだ間に合うよ」


そう舞はツナに告げ教室から出て行った。ツナは一人残った教室で考えていた。舞の今の言葉を。胸の中に入ってくるような言葉だった。


「(後悔しまくりだよ。あんなこと言わなきゃ良かった。でも山本に合わせる顔がない)」


そして…そんなことをグルグル考えて落ち込んでいるツナを見るひとつの小さな影が現れた。


▽ ▲ ▽



「山本君、本当に死ぬ気なの?」
「星野か。止めたって無駄だぜ」


舞が屋上へ着くとフェンスを乗り越え今にも一歩踏み出せば真っ逆様に落ちてしまうような場所で立っていた。


「野球の神さんに見捨てられたオレにはなーんも残ってないんでね」
「あたしは別に死ぬのを止めに来たんじゃない」
「…じゃあなんで来たんだ?」


ここへ来た人達が本気で言っているかわからないが皆、口を揃って"止めろ"と叫んだ。だから舞の言葉に山本は首を傾げた。


「生きたいか死にたいなんて人それぞれだし死にたい人が苦しんで生きるくらないならいっそのこと思い切って死んだらいいと思う」
「ま、そーだな」
「あたしに山本君を止める権利なんてない。だけど…残されて悲しむ人もいるってことを忘れないで。沢田君は自分のせいだって苦しんでる。あたしは彼が悲しむことは嫌なの」


聞いている人は舞の事を冷たいと思ったかもしれない。だがただ"止めろ"と口を揃えて叫ぶだけで本気で彼を止めようとしない野次馬達に比べれば、しっかりと相手の瞳を見て自分の意志を伝える舞は潔いだろう。


「沢田がそんなに心配か?」
「心配っていうかあたしが守らなきゃいけない人だからね」
「はは。いいな、アイツは。そんなに思ってくれる奴がいて」
「?」


山本が眉を下げて笑う中、舞は山本の言葉に首を傾げた。


「山本君だっているよ。親御さんは無償の愛で山本君を思ってくれるでしょう?他にも沢山の人が…」


あたしとは違ってさ…と小さく呟かれた一言。その声はあまりにも小さくてクラスメイトには聞こえなかったが山本の耳だけにはかろうじて届いていた。


ーー…ドンっ


「いつつ…っ」

舞がそれにほら…と指を差した方向には転んで思い切り額をぶつけているツナがいた。


「ツナ」
「え…あ…どっどーしよーっ」


ツナは自分の意思で来たのではないのか山本の顔を見てあわあわと慌てだした。きっとリボーンが脅したのだろう。


「止めにきたらなムダだぜ。おまえならオレの気持ちがわかるはずだ」
「え?」
「ダメツナって呼ばれてるおまえなら何やってもうまくいかなくて死んじまったほーがマシだって気持ちわかるだろ?」
「えっ、あの…っ。いや…山本とオレはちがうから…」


その言葉を聞いて山本は眉間に皺を寄せた。さすが最近活躍がめざましいツナ様だぜ。オレとはちがって優等生ってわけだ…と嘲笑うように言った。



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