出会いは大切に
ゴクリ。舞は目の前の建物を見て少し険しい表情をしながら生唾を飲んだ。そんな彼女を見てリオンは、大丈夫か…?と思った。
「姫ー。ほんとに行くのかよ」
「行くよ。だって約束したんだもん」
約束とは昨晩に見た精神世界で交わしたものであった。
「舞。君に頼みたいことがあるんですが聞いてくれますか?」
「頼みって…?」
「黒曜にいるある少女と仲良くして欲しいのです。僕の分身とも言える娘で名前はーー」
骸の頼みに舞は一つ返事で頷いた。しかし実際に目の前で黒曜ランドの建物を見ると思わず足がすくんでしまった。だって此処はツナ達と骸が闘い沢山の人が傷ついた場所であるから。でもずっと立ち尽くしたままではいられない。舞はギュッと拳を握り力を込めた。
「……行こう」
「はいはい。姫が行くなら何処までも着いて行きますよ」
二人は建物の中へと歩き出した。相変わらず、窓ガラスが割れていたり壁が崩れていたりと瓦礫の山が沢山あった。少し歩き辛くかったが気にせず歩き、目的の部屋へと辿り着いた。
「此処か…」
扉の無いその部屋に二人は入っていく。すると目の前に黒曜中の制服を着た女の子が佇んでいた。あの骸が持っていた三叉槍を手に持って。少し怯えたようにおどおどとしているその少女に舞はニッコリと笑ってゆっくりと近づいた。まるで警戒する子猫を安心させるかのように。
「初めまして。貴女が霧の守護者ね。ーークローム髑髏さん」
「……えっと、」
「あたしは星野舞でこっちはリオン。骸から話聞いてる?」
舞がそう訊くとクロームはコクリと頷いた。そして鈴のような声で言葉を紡いだ。
「……骸様から聞いた。貴女のこと。…大切な人だって」
「えっ!」
「なっ!!」
クロームの言葉に舞とリオンは声を上げた。リオンに至っては明らかに機嫌が悪くなり「骸の奴ふざけたこと言いやがって」とムスっと顔を顰めた。そんな彼は放って置いて舞はゴホンと一つ咳払いをして話を戻した。
「クロームさん。あたしは貴女と同じでボンゴレ10代目、沢田綱吉の守護者なの。これから一緒に闘っていくと思う。だから貴女と仲良くなりたい」
「……え」
舞が右手を出すとクロームは照れたように頬を赤く染めた。
「あたしと友達になってくれないかな?」
「……!」
「会ったばかりだけどさ予感がするんだよね。貴女と仲良くなれるって」
ニコッと舞は笑う。その眩しい笑顔にクロームは大きな瞳を瞬かせ、恥ずかしそうにでも口元は少し緩ませながら言った。そしてゆっくりと舞の右手を握った。
「……うん。……私も、仲良くなりたい」
その言葉に舞はパァっと瞳を輝せ、握った手に片方の手も添える。クロームの口から「…わっ」と少しだけ驚いた声が漏れるが、舞は嬉しそうに笑顔を綻ばせた。
「よろしくね!クローム!!」
「…私も、よろしく。舞…ちゃん?」
「呼び捨てでいいよ!!」
二人の雰囲気が和らいだその時、舞は咄嗟に背後から鋭い殺気を感じた。先程までの表情を変え今の表情は真剣そのもの。そして何かに察知するとクロームの手首を引っ張り身をサッと引いた。
ーードシュッ。
何かが風を切る音がした。さっきまで二人でいた所を見ると、幾多もの針が地面に刺さっている。あの針には見覚えがあった。骸が憑依をした時、あの技を使っていた気がする。舞は部屋の入り口に視線をやった。すると二つの影が立っていた。
「何でボンゴレの奴が此処に居るんだびょん!!」
「クロームに何してるの」
骸の仲間である、犬と千種は警戒心剥き出しで舞のことをギロリと睨む。今にも襲いかかりそうな目つきだ。そんな危険な雰囲気を醸し出す彼等と対峙するようにリオンは一歩前に進み、舞とクロームを背で隠した。
「いきなり攻撃してくるなんてマナーがなってねぇな。姫に当たったらどうしてくれるんだ」
ーー…俺、お前らに何するかわかんねぇよ?
普段の彼からは考えられないような凍てつくよな瞳に地鳴りのように低い声。全身から殺気が漏れているようで、それを直接向けられている犬達は恐怖で思わず背中をぶるりと震わせた。
「こら。やめなさい」
張り詰めた空気。そんなものを壊すように舞は腑抜けた声をかけ、背中をポンと叩いた。
「だってよ、姫」
「言い訳禁止。ほら、クロームも怖がってる。殺気もやめて。あたしは大丈夫だから」
ね…?と舞が笑いながら言えばリオンは少し不満がありそうだったが、「…悪かった」と口を尖らせながら言った。その姿はまるで子供のようだ。
「二人もいきなり来てこんな感じになってごめんなさい。今日は骸に頼まれてクロームに会いに来たの」
「骸サン!?」
「骸様!?」
「うん」
犬と千種は一気に目の色を変え、舞に詰め寄った。リオンが秘かに眉を顰めたことは近くにいたクロームしか気づかなかった。
「骸サンにどうやって会ったんだびょん!?」
「…夢、というか精神世界で。貴方達のことも言ってたよ。三人をよろしくって」
「む、骸サン…」
「骸様…」
二人は悲しみの表情を深くした。きっと骸が犬達を大切に想うように、犬達も同じように想っているのだろう。そんな強い関係が少し羨ましい、と舞は思った。心が少しチクリと軋んだような気がしたがニッコリと笑った。
「まっ、取り敢えずあたし十日間くらい此処に住むのでよろしくっ!」
「「はっ!?」」
「クローム一緒に寝ようね。お泊まり会みたいなの友達とやってみたかったんだ」
過剰反応したのは犬。そしてリオンだった。千種は面倒臭そうに溜息を吐くだけ。舞はそんな三人は放って置き、クロームと「今日のご飯は何にしよっかー」ともう泊まる前提で話しを進めていた。これからリオンの気苦労が絶えなそうだ。
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ゴクリ。舞は目の前の建物を見て少し険しい表情をしながら生唾を飲んだ。そんな彼女を見てリオンは、大丈夫か…?と思った。
「姫ー。ほんとに行くのかよ」
「行くよ。だって約束したんだもん」
約束とは昨晩に見た精神世界で交わしたものであった。
「舞。君に頼みたいことがあるんですが聞いてくれますか?」
「頼みって…?」
「黒曜にいるある少女と仲良くして欲しいのです。僕の分身とも言える娘で名前はーー」
骸の頼みに舞は一つ返事で頷いた。しかし実際に目の前で黒曜ランドの建物を見ると思わず足がすくんでしまった。だって此処はツナ達と骸が闘い沢山の人が傷ついた場所であるから。でもずっと立ち尽くしたままではいられない。舞はギュッと拳を握り力を込めた。
「……行こう」
「はいはい。姫が行くなら何処までも着いて行きますよ」
二人は建物の中へと歩き出した。相変わらず、窓ガラスが割れていたり壁が崩れていたりと瓦礫の山が沢山あった。少し歩き辛くかったが気にせず歩き、目的の部屋へと辿り着いた。
「此処か…」
扉の無いその部屋に二人は入っていく。すると目の前に黒曜中の制服を着た女の子が佇んでいた。あの骸が持っていた三叉槍を手に持って。少し怯えたようにおどおどとしているその少女に舞はニッコリと笑ってゆっくりと近づいた。まるで警戒する子猫を安心させるかのように。
「初めまして。貴女が霧の守護者ね。ーークローム髑髏さん」
「……えっと、」
「あたしは星野舞でこっちはリオン。骸から話聞いてる?」
舞がそう訊くとクロームはコクリと頷いた。そして鈴のような声で言葉を紡いだ。
「……骸様から聞いた。貴女のこと。…大切な人だって」
「えっ!」
「なっ!!」
クロームの言葉に舞とリオンは声を上げた。リオンに至っては明らかに機嫌が悪くなり「骸の奴ふざけたこと言いやがって」とムスっと顔を顰めた。そんな彼は放って置いて舞はゴホンと一つ咳払いをして話を戻した。
「クロームさん。あたしは貴女と同じでボンゴレ10代目、沢田綱吉の守護者なの。これから一緒に闘っていくと思う。だから貴女と仲良くなりたい」
「……え」
舞が右手を出すとクロームは照れたように頬を赤く染めた。
「あたしと友達になってくれないかな?」
「……!」
「会ったばかりだけどさ予感がするんだよね。貴女と仲良くなれるって」
ニコッと舞は笑う。その眩しい笑顔にクロームは大きな瞳を瞬かせ、恥ずかしそうにでも口元は少し緩ませながら言った。そしてゆっくりと舞の右手を握った。
「……うん。……私も、仲良くなりたい」
その言葉に舞はパァっと瞳を輝せ、握った手に片方の手も添える。クロームの口から「…わっ」と少しだけ驚いた声が漏れるが、舞は嬉しそうに笑顔を綻ばせた。
「よろしくね!クローム!!」
「…私も、よろしく。舞…ちゃん?」
「呼び捨てでいいよ!!」
二人の雰囲気が和らいだその時、舞は咄嗟に背後から鋭い殺気を感じた。先程までの表情を変え今の表情は真剣そのもの。そして何かに察知するとクロームの手首を引っ張り身をサッと引いた。
ーードシュッ。
何かが風を切る音がした。さっきまで二人でいた所を見ると、幾多もの針が地面に刺さっている。あの針には見覚えがあった。骸が憑依をした時、あの技を使っていた気がする。舞は部屋の入り口に視線をやった。すると二つの影が立っていた。
「何でボンゴレの奴が此処に居るんだびょん!!」
「クロームに何してるの」
骸の仲間である、犬と千種は警戒心剥き出しで舞のことをギロリと睨む。今にも襲いかかりそうな目つきだ。そんな危険な雰囲気を醸し出す彼等と対峙するようにリオンは一歩前に進み、舞とクロームを背で隠した。
「いきなり攻撃してくるなんてマナーがなってねぇな。姫に当たったらどうしてくれるんだ」
ーー…俺、お前らに何するかわかんねぇよ?
普段の彼からは考えられないような凍てつくよな瞳に地鳴りのように低い声。全身から殺気が漏れているようで、それを直接向けられている犬達は恐怖で思わず背中をぶるりと震わせた。
「こら。やめなさい」
張り詰めた空気。そんなものを壊すように舞は腑抜けた声をかけ、背中をポンと叩いた。
「だってよ、姫」
「言い訳禁止。ほら、クロームも怖がってる。殺気もやめて。あたしは大丈夫だから」
ね…?と舞が笑いながら言えばリオンは少し不満がありそうだったが、「…悪かった」と口を尖らせながら言った。その姿はまるで子供のようだ。
「二人もいきなり来てこんな感じになってごめんなさい。今日は骸に頼まれてクロームに会いに来たの」
「骸サン!?」
「骸様!?」
「うん」
犬と千種は一気に目の色を変え、舞に詰め寄った。リオンが秘かに眉を顰めたことは近くにいたクロームしか気づかなかった。
「骸サンにどうやって会ったんだびょん!?」
「…夢、というか精神世界で。貴方達のことも言ってたよ。三人をよろしくって」
「む、骸サン…」
「骸様…」
二人は悲しみの表情を深くした。きっと骸が犬達を大切に想うように、犬達も同じように想っているのだろう。そんな強い関係が少し羨ましい、と舞は思った。心が少しチクリと軋んだような気がしたがニッコリと笑った。
「まっ、取り敢えずあたし十日間くらい此処に住むのでよろしくっ!」
「「はっ!?」」
「クローム一緒に寝ようね。お泊まり会みたいなの友達とやってみたかったんだ」
過剰反応したのは犬。そしてリオンだった。千種は面倒臭そうに溜息を吐くだけ。舞はそんな三人は放って置き、クロームと「今日のご飯は何にしよっかー」ともう泊まる前提で話しを進めていた。これからリオンの気苦労が絶えなそうだ。
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