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「ういっス。穴ボコに落っこって助かったな、少年」


白い光に驚いた獄寺であったが、気がつけば光は失くなり何故か穴に落っこちていた。その中には工事現場の作業服を着た中年男性と赤ん坊が。


「な……っ。なんだてめーは!」
「年上に対するその言い方はないだろ〜?俺は近所のおじさんだ。可愛い妻子持ちのな」
「はぁ!?」


いきなり現れてなんだコイツ…!?獄寺は警戒しながら男を睨んだ。しかし男はからかったような笑みを浮かべ、のらりくらりと軽い調子で話しを続ける。


「まぁ、若いんだし。死ぬことなんて怖くねぇってのも理解できなくはないさ。だが傷つく奴がいる一方で治そうとする職種の人間がいることを忘れんなよ。そいつからした冗談じゃないよな。大事にしてるもんを軽くあしらわれたりしたらさ。後、自分が傷つけば悲しむ奴がいるってことも覚えといた方がいい」

「ーーそれに自分を守れねー奴が他人を守れんのか?」


最後の言葉に獄寺は翡翠色の瞳を大きく見開かせる。その様子に男は確信付いたかのようにニヤリと笑うと、おっと仕事だ。じゃーなー少年!!と早々と去って行った。


「……」


獄寺は口を閉ざした。頭に思い浮かんだのは、昔のことだった。


「見ろよ、勝ったぜシャマル!名誉の負傷!ボム持って突っ込んでったらあいつらビビって全弾はずしてやんの!」
「殺しのことはもう教えねぇ」
「え!?」
「おまえにゃ、まったく見えちゃいない。そんな奴に俺が教えることは何もねぇ」



それからシャマルは本当に何も教えてくれなかった。何度頼んでも拒絶された。きっとそれが自分に失望した瞬間。獄寺は自身の血まみれで傷だらけの右手を見つめる。いや、傷だらけなのは全身で何とも無惨な姿。そして吐き捨てるように呟いた。


「ーー俺に見えてなかったのは…自分の命だ」


その時、「獄寺君大丈夫!?」と言いながらツナが駆け寄って来た。突然のツナの姿に獄寺は驚き、かあああ…と顔を赤らめ土下座の体制をとった。


「お…お恥ずかしいばかりです!こんなところを晒してしまって……!!」
「本当ブザマ極まりねーな」


そう言って現れたのはシャマル。獄寺の修行を影ながら見ていたらしく、いつもよりも真剣な眼差しを獄寺に這わせた。


「いいか。今度そんな無謀なマネしてみろ。いらねー命は俺が摘んでやる」
「シャマル…」
「自分の怪我は自分でなおせよ。男は診ねーんだ。ったく、この十日間で何人ナンパできると思ってんだ」


つまりそれはシャマルが獄寺の家庭教師になってくれるということ。これで一通りコンビが揃ったな、とリボーンはニヤリと笑いながら言った。これで彼等はきっと急激な成長を遂げるだろう。家庭教師として、これからの彼等の成長は楽しみなものでしかなかった。








明かりが灯らない部屋には、美しい月の光が儚く差し込んでいた。そこにストンと舞い降りるようにリオンは現れる。ある一点を見つめて。


「やっぱ……姫は似てるな」


そう呟いてリオンが見つめる先。それは顔を赤くしながら浅い呼吸を繰り返して眠る舞だ。彼は、ふわりと瑠璃色の髪を揺らし熱を帯びている彼女の頬に手をソッと当てた。


「…ほんと、そっくりだ」


かつて自分が仕え、護りたくても護れなかった女性に。誰よりも好きで深く愛した女性に。たまに錯覚を起こす程、舞はよく似ていた。特に自分を見る時の笑顔が。そしてーー…


「仲間の為に自分を犠牲にするところも。まるで瓜二つだよ。…嫌なくらいに」


リオンは苦しげに笑った。いや、実際に苦しかった。どうして彼女達はこうまでするのだろうか。自分の命を削ってまで何故、仲間を助けようとするのだろう。そんなことをするのであれば少しは相談をして欲しかった。そうすれば力になれたのかもしれないのに。…なんて、苦しんでいた彼女に気づかなかった自分の言い訳でしかないのだが。


「だからさ、姫。俺は決めたんだ」


サラリと頬から手を滑らす。


「今度こそは絶対に支えてやるって。俺はもう大切な人を何もせずに失いたくないから」


もしかすると自分はあの時の罪滅ぼしとでも思っているのかもしれない。そんなことを知れば舞は自分を蔑み嫌うだろうか。でも貴女を護りたいというこの気持ちに嘘はないから。どうか許して欲しい。貴女の傍にいることを。
ーー…今もなお残る過去への後悔。そして未来に続く新たな決意。色々と交じり合う気持ちを彼女に込めるように、リオンは舞の額にソッと唇を落とした。



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