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「ゲームセンターって久しぶりだなぁ」


久々に入ったゲームセンターを舞はぐるりと見渡し瞳を輝かせた。クレーンゲームやリズムゲームなど面白そうなゲームがたくさんあり、目を惹くものばかりであった。他の皆を好きなように散らばり思い思いに楽しんでいるようだ。そんな皆の様子にクスリと笑みを溢すと、ふとサラサラと揺れる銀髪が目に入った。


「獄寺は遊ばないの?」
「…あんまこーいうのやったことねぇんだよ」


ボソリ。獄寺は眉間に皺を寄せながら目線を逸らしてそう呟いた。きっと帰国子女で幼い頃からマフィアに所属していた彼はゲームセンターというものに慣れていないのだろう。そんな彼を察し舞は笑顔を向けた。


「じゃあ一緒に遊ぼうよ。あたしも来るの久しぶりであんま良くわかんないし」


ね…!と後押しするように声を掛ければ獄寺は少しだけ黙った後に「…しょうがねぇから付き合ってるやる」と不器用な彼らしい言葉を紡いだ。


「舞ちゃーん。獄寺さーん。そんな所で何してるんですかー?こっちに来て遊びましょー!」
「あ、うん!獄寺行くよ!!」
「……おう。って引っ張んな!!」


獄寺の制止など気にも留めず舞は彼の腕を引いてハルと京子の元へと行った。そして、何するの?と舞が問えば彼女達は輝かしい笑顔を浮かべた。


「お二人にはまず此方に入って頂きます!操作はハルと京子ちゃんがやるのでそこはノープロブレムです!」
「うん!2人は楽しんで来てねっ!」
「へっ?皆で遊ぶんじゃないの?」
「今回は舞ちゃんと獄寺さんだけです!!ハル達とは後で遊びましょっ!さあ入った入った!」
「う、うん」
「押すんじゃねぇ。アホ女」


舞と獄寺は訳がわからなかったがハルに背中を押され、小さなボックスのような部屋へと入った。そこには軽快な音楽と女性の声が流れていて何をするゲームなのかもわからない2人は同時に首を傾げてしまう。


「は、ハルちゃんこれって…?」
「これは"プリクラ"と言いまして写真を撮るゲームです!お姉さんの声に従って下さいね!」


薄い布一枚挟んだ向こう側にいるハルに問いかければ、これがプリクラだということがわかった。勿論、聞いたことはあったがやるのは初めてで未知なるものに舞は慌てた。


《それでは撮影を始めるよ》


「うわっ。喋った」
「マジでやんのか、これ」


突如始まったことに舞は驚き、獄寺は嫌そうに低い声を這わせた。


《先ずは一枚目。2人でダブルピース!今日は一緒に遊べて楽しいな〜》


「この画面の女の子達と同じポーズをとれってことだよね。ほら、獄寺も!ピース!!」
「…チッ。なんで俺がこんなふざけたポーズを」


《3、2、1…パシャッ!》


撮った写真が画面に映し出される。舞は笑顔で楽しそうにピースをしていたが獄寺は嫌そうにそっぽを向いていた。まあ、片手は控えめにピースをしていたが。


「ああ!獄寺笑ってよ!!」
「うっせぇ!面白くもねーのに笑えるか!」


獄寺の言うことも最もだがこれはそういうゲームなのだ。そこは突っ込まないで頂きたい。


《じゃあ次の撮影にいくよ。彼氏の身体にギュッ。ずーっと離さないからね!》


「はあ!?何やらせんだ……って、!!お前は抱きつくな!」
「だ、だって指示に従ってねって!!」


舞は真面目にも指示に従い赤い顔をしながら獄寺の横腹にムギュっと抱きついた。そんな彼女に抱きつかれた獄寺も同様に頬を火照らせ声を荒げて言い合いが始まる。しかしその合間にパシャッというシャッター音が響き渡った。


「「あ」」


それから撮影は続き2人の最早戦いとも言えるやりとりが数度行われた。このプリクラというのは精神的な疲労が特に酷かった。数を重ねる毎に獄寺はボロボロになっていき、逆に何故か舞は開き直ったようにテンションをあげていった。


▽ ▲ ▽



「はーー。意外に面白かったね〜」
「……俺は2度とやらねぇ」


満足気な舞に対し、獄寺の見事な疲れっぷり。プリクラが出て来た2人の表情は対照的であった。そして舞は撮ったばかりの写真を見て嬉しそうに頬を緩めた。だってこれは2人で初めて撮ったものであったから。獄寺はどれも顔が引きつっているがこれも思い出だ。どんなものであれど形として残ることが嬉しかった。


ーードカァン


「…へ?」
「爆発しやがった」


突如、聞こえてきた爆発音に舞と獄寺は表情を変えた。2人にとって絶対的な存在であるツナはランボの世話をするために外にいるからだ。獄寺達は顔を見合わせて頷き、ゲームセンターを飛び出した。途中同じように行動していた山本も合流して。


「10代目ー!!」
「大丈夫かツナ!!」
「ツナ君!!」


周りを見渡せばそこはまるで戦場だった。建物はボロボロに崩れツナは倒れている。そんなツナに寄り添う碧眼の少年。そして明らかに一般人ではないオーラを放っている長髪の男。一体何が起こったのかは全くわからない。


「なんだぁ?外野がゾロゾロとぉ。邪魔するカスはたたっ斬るぞぉ!!」


目元を釣り上げ男は不敵に笑いながらそう言い放った。


「あぁ!?」
「な…何なの一体!?」
「嵐の予感だな」


リボーンが最後に独り言のように呟く。しかしそれは誰の耳にも届かずスッと消えていったのであった。



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