嵐の予感
幾つものビルやマンションが建ち並ぶ比較的に栄えた街。ある一つのビルの屋上には不自然にも金属音が響き渡っていた。
ーードコォッ
衝撃により噴煙が舞い上がる。しかしそれで金属音が止まることはなく、寧ろ激しさは増すばかりであった。腰まで伸びている髪を靡かせながら男は「う"お"ぉい」と不敵に笑った。
「てめぇ何で日本に来たぁ。ゲロっちまわねえと三枚におろすぞぉ。オラァ」
「答える必要はない」
暗闇の中ゆらゆらと揺れる炎を額に灯す少年は臆することなく答えた。そしてまた二人は鬩ぎ合う。しかし、実力は長髪の男の方が上であった。ジリジリと追い詰められ少年はゴクリと唾を飲んだ。そんな少年のズボンのポケットには二枚の写真があった。一枚はニッコリと母と笑う茶色の髪の少年。そしてもう一枚は白のワンピースを靡かせた翡翠眼の少女が写っていた。
▽ ▲ ▽
黒曜の戦いから一ヶ月が経ち、傷もすっかりと癒えたツナ達は今まで通りの日々を過ごし今日もお馴染みの4人で学校へと向かっていた。
「へー。良かったじゃねーか。親父さん帰って来るなんて」
「……うん…ま…まぁ…」
「10代目のお父様がご健在だとは…帰って来られた暁にはご挨拶に伺います!!」
「結婚前のカップルだよ、それ」
「いやいや。いーよ!あんなデタラメな奴に」
「ハハハ。なんだよ、デタラメって」
山本の問い掛けにツナは顔を引攣らせながら心底嫌そうに話した。
「昔から言うことやることムチャクチャでさ…俺が小さい時から殆ど家にいないから何の仕事してるのか聞いたことがあるんだけど…」
幼いツナがそう問うと、"世界中飛び回って工事現場の交通整理をしてるのさ"と何ともダイナミックな答えを言ったらしい。
「世界中…スか?」
「ワ……ワイルドだな…」
「あは、凄過ぎ…」
「怪しいでしょ…?」
「そ…そんなことは…」
ツナは眉根を寄せ唇を尖らせた。
「小さい時はよくわからなかったけど今考えるとおかしいことばっかりでさ。だいたい2年間一度も帰って来ないなんてあり得ないよ!あんな父親…今更戻って来られても」
はーーー…っ。いつになく気が沈み大きな溜息を吐くツナ。そんな彼に獄寺と舞は戸惑いの様子を見せた。
「10代目……」
「ツナ君…」
空気が少しだけ淀む。だがそれを壊すように山本は明るい声である提案をした。
「んーー…。なあこのまま遊びに行かね!?」
「ナイス野球馬鹿!そうしましょう10代目!」
「それ良いっ!皆で遊びに行こうよ!」
「ええ!?」
これから学校へ行く筈であったのに、話しが皆で遊ぶ方向へと転がりツナは驚きの声を漏らした。すると獄寺は、あんま家庭のこととか考えすぎない方がいいッスよ…と笑顔を向ける。
「俺ん家なんかもっとドロドロのグチャグチャですしね!」
「(笑顔で凄いこと言い出した!!)」
「でも学校…」
「ツナ君!人生には勉強よりも大切なことがあるんだよ。気にしない気にしなーい」
「おめぇは馬鹿丸出しなんだよ!」
「今日はどーせ日曜だし皆呼ぶか」
落ち込んでいるツナを励ますかのように明るく話す3人。そんな彼らを見てツナはじんわりと胸が温かくなった。彼らの気遣いが自分にも伝わり、それがとても嬉しく感じられたからだ。
▽ ▲ ▽
山本が皆を呼び出し京子にハル、ランボやイーピンにフゥ太。そしてリボーンが加わり結構な大所帯となったツナ達はフゥ太の案によりゲームセンターへと行くことになった。
「舞ちゃん!ハルすっごい聞きたいことがあるんですッ」
「ん?なあに?」
舞の隣で歩くハルが興奮気味になりながら話し掛けるので、舞は不思議そうに首を傾げた。するとハルは口元に手を当て舞の耳に近づきヒソヒソ声で話し始めた。
「舞ちゃんって獄寺さんにフォーリンラブなんですか?」
「ええっ!」
唐突に言われたハルの言葉に舞は驚いて声を上げてしまう。でも本当に吃驚したのだ。そんなことを言われたのは、生まれて初めてだったから。もしかして自分はそんなにもわかりやすいのだろうか。今まで恋をしたことがなかった舞はどうしていいかわからず頬をほんのりピンクに染めながら、口元をゴニョゴニョさせ目を泳がせた。
「…えーっと、あの…あたしは別に…」
「じーーっ」
「……うぅ」
無言の圧力とでも言おうか。ハルの大きな瞳でジッと見つめられ舞は明らかなる戸惑いを見せた。そしてこれ以上ハルの視線攻撃に耐えられなさそうな舞は、顔を真っ赤にしながら降参をしたのだった。
「…………そう、なの」
舞が恥ずかしそうにして素直に認めればハルはパァッと表情を明るくさせた。
「京子ちゃん!やっぱりハルの予想は的中でしたっ!」
「わあっ。そうだったんだ!」
「えっ。京子ちゃんも知ってたの!?」
驚く舞に対し、京子は「前からハルちゃんと話してたんだー」といつものように天使の笑みを浮かべた。2人にバレてたなんて…!舞は自分の体温が数度上がったような感覚に陥った。そしてハルは舞の両手をギュッと握った。
「舞ちゃん!!同じ恋する乙女としてハルは全力で舞ちゃんを応援します!」
「私も!」
「あ…ありがとう!」
ハルと京子のキラキラとした視線に舞は礼を告げた。知られてしまったことは恥ずかしいが、それ以上に彼女達が応援してくれるということが嬉しくなんだか3人の距離が縮まったように思えた。
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幾つものビルやマンションが建ち並ぶ比較的に栄えた街。ある一つのビルの屋上には不自然にも金属音が響き渡っていた。
ーードコォッ
衝撃により噴煙が舞い上がる。しかしそれで金属音が止まることはなく、寧ろ激しさは増すばかりであった。腰まで伸びている髪を靡かせながら男は「う"お"ぉい」と不敵に笑った。
「てめぇ何で日本に来たぁ。ゲロっちまわねえと三枚におろすぞぉ。オラァ」
「答える必要はない」
暗闇の中ゆらゆらと揺れる炎を額に灯す少年は臆することなく答えた。そしてまた二人は鬩ぎ合う。しかし、実力は長髪の男の方が上であった。ジリジリと追い詰められ少年はゴクリと唾を飲んだ。そんな少年のズボンのポケットには二枚の写真があった。一枚はニッコリと母と笑う茶色の髪の少年。そしてもう一枚は白のワンピースを靡かせた翡翠眼の少女が写っていた。
黒曜の戦いから一ヶ月が経ち、傷もすっかりと癒えたツナ達は今まで通りの日々を過ごし今日もお馴染みの4人で学校へと向かっていた。
「へー。良かったじゃねーか。親父さん帰って来るなんて」
「……うん…ま…まぁ…」
「10代目のお父様がご健在だとは…帰って来られた暁にはご挨拶に伺います!!」
「結婚前のカップルだよ、それ」
「いやいや。いーよ!あんなデタラメな奴に」
「ハハハ。なんだよ、デタラメって」
山本の問い掛けにツナは顔を引攣らせながら心底嫌そうに話した。
「昔から言うことやることムチャクチャでさ…俺が小さい時から殆ど家にいないから何の仕事してるのか聞いたことがあるんだけど…」
幼いツナがそう問うと、"世界中飛び回って工事現場の交通整理をしてるのさ"と何ともダイナミックな答えを言ったらしい。
「世界中…スか?」
「ワ……ワイルドだな…」
「あは、凄過ぎ…」
「怪しいでしょ…?」
「そ…そんなことは…」
ツナは眉根を寄せ唇を尖らせた。
「小さい時はよくわからなかったけど今考えるとおかしいことばっかりでさ。だいたい2年間一度も帰って来ないなんてあり得ないよ!あんな父親…今更戻って来られても」
はーーー…っ。いつになく気が沈み大きな溜息を吐くツナ。そんな彼に獄寺と舞は戸惑いの様子を見せた。
「10代目……」
「ツナ君…」
空気が少しだけ淀む。だがそれを壊すように山本は明るい声である提案をした。
「んーー…。なあこのまま遊びに行かね!?」
「ナイス野球馬鹿!そうしましょう10代目!」
「それ良いっ!皆で遊びに行こうよ!」
「ええ!?」
これから学校へ行く筈であったのに、話しが皆で遊ぶ方向へと転がりツナは驚きの声を漏らした。すると獄寺は、あんま家庭のこととか考えすぎない方がいいッスよ…と笑顔を向ける。
「俺ん家なんかもっとドロドロのグチャグチャですしね!」
「(笑顔で凄いこと言い出した!!)」
「でも学校…」
「ツナ君!人生には勉強よりも大切なことがあるんだよ。気にしない気にしなーい」
「おめぇは馬鹿丸出しなんだよ!」
「今日はどーせ日曜だし皆呼ぶか」
落ち込んでいるツナを励ますかのように明るく話す3人。そんな彼らを見てツナはじんわりと胸が温かくなった。彼らの気遣いが自分にも伝わり、それがとても嬉しく感じられたからだ。
山本が皆を呼び出し京子にハル、ランボやイーピンにフゥ太。そしてリボーンが加わり結構な大所帯となったツナ達はフゥ太の案によりゲームセンターへと行くことになった。
「舞ちゃん!ハルすっごい聞きたいことがあるんですッ」
「ん?なあに?」
舞の隣で歩くハルが興奮気味になりながら話し掛けるので、舞は不思議そうに首を傾げた。するとハルは口元に手を当て舞の耳に近づきヒソヒソ声で話し始めた。
「舞ちゃんって獄寺さんにフォーリンラブなんですか?」
「ええっ!」
唐突に言われたハルの言葉に舞は驚いて声を上げてしまう。でも本当に吃驚したのだ。そんなことを言われたのは、生まれて初めてだったから。もしかして自分はそんなにもわかりやすいのだろうか。今まで恋をしたことがなかった舞はどうしていいかわからず頬をほんのりピンクに染めながら、口元をゴニョゴニョさせ目を泳がせた。
「…えーっと、あの…あたしは別に…」
「じーーっ」
「……うぅ」
無言の圧力とでも言おうか。ハルの大きな瞳でジッと見つめられ舞は明らかなる戸惑いを見せた。そしてこれ以上ハルの視線攻撃に耐えられなさそうな舞は、顔を真っ赤にしながら降参をしたのだった。
「…………そう、なの」
舞が恥ずかしそうにして素直に認めればハルはパァッと表情を明るくさせた。
「京子ちゃん!やっぱりハルの予想は的中でしたっ!」
「わあっ。そうだったんだ!」
「えっ。京子ちゃんも知ってたの!?」
驚く舞に対し、京子は「前からハルちゃんと話してたんだー」といつものように天使の笑みを浮かべた。2人にバレてたなんて…!舞は自分の体温が数度上がったような感覚に陥った。そしてハルは舞の両手をギュッと握った。
「舞ちゃん!!同じ恋する乙女としてハルは全力で舞ちゃんを応援します!」
「私も!」
「あ…ありがとう!」
ハルと京子のキラキラとした視線に舞は礼を告げた。知られてしまったことは恥ずかしいが、それ以上に彼女達が応援してくれるということが嬉しくなんだか3人の距離が縮まったように思えた。
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