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澄み切った青空


「終わったな」
「……うん」


倒れる骸を見つめ、ツナは額に宿した炎を消沈させた。


「そうだ。皆の怪我!」
「心配ねーぞ。ボンゴレの医療班も敷地内に到着したらしい。ランチアの毒も用意してきた解毒剤で間に合ったそーだ」
「よかった……あっ、舞ちゃんは?!」


ホッと安堵するも束の間、ツナは舞の方へ勢いよく振り返った。


「……ハハ。あたしは大丈夫だよ。何も役に立てなくてごめんね、」


舞は眉を八の字にして笑った。そして、おぼつかない足取りで骸にと近寄る。


「…骸」


舞は骸の手をギュッと握りしめた。すると鼓膜を破るような大きな怒声が部屋に響き渡った。


「近づくんじゃねえびょん!!」


パッと声がした方に反射的に振り向くと、そこには床を這いつくばるようにして前へ進む犬と千種の姿があった。マフィアが骸に触るな、と犬は言った。


「ひいっ。あいつらが!!」
「ビビんなツナ。奴らは、もう歩く力も残ってねーぞ」
「……な…なんで…」


ツナは犬達の行動と言動に驚きながら顔を青ざめさせ、そう呟いた。わけがわからなかった。犬達は骸に憑依され利用されていた筈なのにそうまでして骸を庇うわけが。それを口にすると今度は千種が言葉を紡いだ。


「わかった風な口をきくな…」
「だいたい、これくらい何ともねーびょん。あの頃の苦しみに比べたら」


"あの頃"と聞いて舞は僅かに肩を震わせた。彼女はその時のことを既に骸から聞いていたからだ。


「何があったんだ?言え」
「………へへっ。俺らは自分のファミリーに人体実験のモルモットにされてたんだよ」
「「!」」


それを聞いたツナはまるで雷を落とされたような衝撃が体へと走った。


「やはりそうか。もしかしてと思っていたが、お前達は禁断の憑依弾を作ったエストラーネオファミリーの人間だな」
「禁断?それはてめーらの都合でつけたんだろうが」


犬は話した。骸が舞に話したように、自分達が他のマフィアから迫害されていたこと。特殊兵器開発の実験に犬達を含む子供達が使われたこと。その地獄のような現状をぶっ壊してくれたのが六道骸だということ。そしてその彼が自分らに居場所をくれたのだと。


「それを…おめーらに壊されてたまっかよ!」
「………」


犬の悲痛な叫びに、ツナは俯きながら自分の拳を握った。


「でも……俺だって…仲間が傷つくのを黙って見てられない…だって…そこが俺達の居場所だから」


犬は「ぐっ」と押し黙った。きっと居場所の大切さを充分に理解しているから。


「あ!」
「医療班が着いたな」


部屋の扉が開き人が入ってくる気配がした。これでやっと怪我人の治療ができると舞は頬を緩ませたが次の瞬間、顔が凍りついた。骸、犬、千種の首にガチャンと素早いスピードで鎖が繋がれたから。


「早ぇおでましだな」
「ど、どうして?」
「い…一体誰!?」


鎖を手に持っているのは、全身黒ずくめで顔に包帯を巻いている異質な存在達。この者達は"復讐者"《ヴィンディチェ》といい、マフィア界の掟の番人として法で裁けない罪人を裁く役割を担っているのだ。復讐者はズルズルと骸達を引きずり寄せた。


「な、何するのっ!?離して!」


舞は離れてしまった手を追いかけるように立ち上がり声をあげた。


「やめとけ舞」
「でも…!」


骸達が裁かれるなんて嫌だよ…。舞は俯きながら、哀しげに声を漏らした。確かに骸達はいけないことをした。それでも、やはり全て彼らが悪いとは一概には言えないのだ。


「お願いだから…骸達を解放してよ」
「止めろ、舞」


もう一度リボーンが舞に静止を呼びかける。これ以上、復讐者に逆らうことは危険だからだ。


「星野舞」
「え、」


低い声で自分の名前が呼ばれ舞は驚き顔を上げた。


「いくら我らの"光"であってもその願いは聞き取れない」
「、光……?」


復讐者の言葉に舞は目を瞬かせ、リボーンは何故か目の色を変え鋭い視線を這わせた。そして復讐者は舞の問いに答えずそのまま闇へと消えって行った。


「あ…」
「奴らに逆らうと厄介だ…放っとけ」
「お前がそこまで……そんなにやばい奴なの……?」
「リボーン…あの3人はどーなっちゃうの?」


舞の問いかけにリボーンは罪を裁かれ罰を受けると言った。


「ば…罰って…?」
「さーな。だが軽くはねーぞ。俺達の世界は甘くねーからな」


ツナと舞は不安そうな表情を浮かべた。するとたくさんの医療班が部屋と入って来た。


「医療班が来たな」


雲雀をはじめとする全員は担架によって病院へと運ばれて行く。そのことに安心した舞は一気に瞼の重みを感じ、緩慢に視界を閉じた。そこから彼女の意識はない。でも次に目を覚ませば、平凡な毎日に帰れる。そう思ったのか表情は穏やかで口元には緩い弧が描かれていたのであった。



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