はやく好きって言って
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「やぁ、美咲」

「うわ……」


何かな?
いや、何でもない。



「で、なに?」


仕事からの帰宅途中で目の前に現れた、ホウエン地方のチャンピオン。
周りの女性たちは急に現れたイケメンに、小さいながらも黄色い声を上げて彼、もといツワブキダイゴに視線を向けた。

そんな周りにうんざりしながらも、目の前の彼を蔑ろにしたら後が面倒なため相手をする私は偉い。


「あのさ、」

「はい」



「僕と付き合わない?」

「付き合わないですね」


なぜ!?
どこがダメなんだ!!
ねえ美咲!?

とか喚いてる馬鹿を置いて横を通り過ぎようとした瞬間、腕をパシリと掴まれた。
掴んできた手が大きくて、小さなところでダイゴが男であると意識して心臓が一度大きく跳ねる。
ぜっっったいに顔には出してあげないけど。

視線をダイゴに向ければ、彼は綺麗な顔でにっこりと微笑んでいた。

「ちょっとお話ししようか」

そこそこ付き合いが長いからわかる。
この笑顔の時のダイゴには逆らわない方が良い。

ブチギレダイゴ久しぶりに見るなぁと胃が痛くなりながら何度も頷けば、ようやく掴まれていた腕は解放された。

そして彼はスーツのポケットから小さなモンスターボールを2つ取り出し、ボタンを押してボールを大きくさせた。

「美咲、ここに2つのモンスターボールがある。片方には僕らの新居の合鍵が入ってる。もう片方には何も入ってない」

さぁ、どちらか選んで。

それだけを言われ、ボールを差し出されて固まる。


え、なにこれ。
このボール遊びみたいなので今後の人生決まるの?
こんな強硬手段するのこいつ…?


2つのボールを見ながら心の中で文句を言っていれば、だんだんとイラついてきた。


「いい加減にして」


私から見て右側のボールを地面にはたき落とし、目の前の男の胸ぐらを掴んで睨む。
彼は、私の変わりように目を見開いて驚いていた。

「あんたねえ、」

「付き合おうだの結婚しようだの、新居の合鍵だの。そんな戯言を吐く前にまず言うことがあるでしょ」

「言う、こと……?」

唖然としながら私の言葉を繰り返したダイゴに苛立ち、胸ぐらを掴んでいた手を離す。

「戯言は吐けるくせに、"好き"の二文字は言えないわけ?脳みそまで石のことしかないの?」

少し前までは彼の前では大人しくいようと思っていたのに、今では取り繕うことすら馬鹿馬鹿しいほどダイゴに怒りを覚えていた。

私の言葉に、彼は目を見開いて苦笑する。

「すまない。1番大切な言葉を言っていなかったね。伝えたつもりになっていたよ」


美咲、君が好きだ。
こんな往来で強硬手段に出るほどに、君のことが好きだ。


「僕と、付き合ってくれないか?」

必ず幸せにすると約束するよ。


最後には自信満々に気持ちを言葉にしたダイゴに、私は呆れて笑う。


「言うのが遅い。………私も、好き」


よろしくお願いします。と頭を下げた瞬間に彼に力強く抱きしめられ、驚きながらも小さく笑った。












(仕方ないから、新居の鍵も貰ってあげるわ)
(美咲………!!)
(引っ越しの準備手伝ってね)
(もちろんだよ!)







*   *   *

主人公
・ダイゴとはミクリを通じて知り合った。ダイゴからアプローチされるも、肝心の"好き"が聞けないからと今まで断っていた。早く好きって言いなさいよ馬鹿。
・ダイゴが石を探しに行くのは、音信不通にならない限りは許すつもり。でも寂しいから早く帰って来てよね。



ダイゴ
・主人公とはミクリを通じて知り合った。とっくの昔に好きだと伝えていた気になって、付き合おうだとか結婚だとか新居の鍵だとかほざいていた。
・主人公に尻に敷かれる未来が待ってる。でも一緒にいられるからそれも幸せ。石を探しに行くときは主人公も連れて行くつもり。

 

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