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やっとの思いでジムミッションをクリアし、ジムリーダーのもとへと向かえば、私はジム巡りを始めて以来、最大の衝撃が身体に走った。

「よくぞ来た挑戦者よ。私はミクリ。このルネジムのジムリーダーだ。…うん、ダイゴの話に違わず可愛らしいお嬢さんだ。キミはコンテストにも出ているね」

そう目の前で話す彼、もといミクリさんを見て、私はかたまってしまった。

…いやいや、まさかゲーム本編でジムリーダーだった彼が、既にここにいるのは予想できなかった。コンテストに出ているのは何回かテレビで見かけたことはあったが…。

でもそうか。ダイゴさんがチャンピオンになったのだから、彼がルネシティのジムリーダーをやっていてもおかしくはない………か?


うーん…と頭を抱えていれば不思議そうに呼びかけられ、慌てて返事をする。

「申し遅れました。私はエリシアと申します。コンテストで有名なミクリさんに会えるとは思っておらず、動揺しておりました。会えて光栄です」

そのまま自己紹介をすれば、彼は嬉しそうに笑みを浮かべたあと、何度も頷いた。

「私も、エリシアのことは知っていたよ。キミのミロカロスとは、ぜひコンテストで戦ってみたいと思っていたんだ」

「私には勿体ないお言葉ですね。ありがとうございます」

「エリシアが旅でどれほど強くなったのか、私に見せてほしい。そして私もお見せしよう。私とポケモンによる、水のイリュージョンを!」





「…よ、よろしくお願いします」

最後は大振りにポーズを決めながら言われ、ちょっと引きながら返事をしてしまった。


そのままバトルは始まり、水と氷タイプと聞いていたため先頭にライチュウを出した。


…それがまずかったのかもしれない。

ミクリさんは先頭にラブカスを出し、最初にメロメロを出してきた。

それは見事にライチュウに的中し、思うようにバトルが進まなかった。

次から次へと手持ちのポケモンがミクリさんのポケモンによって倒されていくのだ。


最初から出鼻を挫かれ、それはイラつきに変わり、やがて焦りへと変わっていく。



ここで負けたら、ダイゴさんに挑むなんて到底無理だ。
なんとしても勝たなければいけない。
負けは許されない。







しかし、



「……そんな…」


時は冒頭に戻り、目の前の光景をただただ茫然と眺める。


その光景とは、私の手持ちの最後であるメタグロスが、彼のミロカロスによって倒される光景だった。

苦しそうに気絶するメタグロスを見て慌ててボールに戻し、ぎゅっと力強く握る。


なにがダメだったんだろう。
技も指示の出し方も良かったはずなのに。

どうして。






「キミはもう少し、ポケモンのことを見た方がいい」





あとは純粋に経験不足だね。
苦笑しながらアドバイスをくれた彼の言葉に首を傾げる。

「ポケモンたちとは日々向き合ってますが…」

ちゃんと傷ついたらポケモンセンターへ行くし、ジムやコンテストの前はポケモンのコンディションや技構成も考える。
そのことを思い出しながら言ったが、どうやらそうではないらしい。

「エリシア、キミの目標はなんだ。このジムバッジを集めてなにがしたい」

「チャンピオンに勝ちたいんです」

その問いにはすぐに答え、彼は私の回答を聞いて笑う。

「いいね、あいつも楽しみに待っているよ。…だが、その目標に囚われすぎて、焦ってないか?」

彼の言葉を聞いて、少しぎくりとした。

「先ほどのバトルで、エリシア自身も感じたはずだ。自分の思うように試合展開が運ばないことにイライラして、やがてそれは焦りへと変わっていった。その焦りが、ポケモンへの指示に如実に現れていたよ。…特にキュウコンや、最後のメタグロスへの指示なんて、見れたものじゃない」

「…すみません」

本当に、彼の言うとおりだ。
いつもは具体的にどう立ち回ってどの技を出すか指示を出すのに、最後のほうはただただ乱雑に技名を言っていただけだ。
振り返って、彼の言葉を聞いて肩を落としていると、ぽんと、私の頭に彼の手が乗せられた。

「きっと、エリシアはポケモンバトルやコンテストで負けたことがないんだろう。キミほどの実力があれば、そうそう負けることはないだろうね」

「…そうですね。負けたのは、ダイゴさんぐらいです」

しかも、彼と最後にバトルをしたのは、彼が旅に出る前だ。

そのことを話せばミクリさんも納得したように頷いた。

「負けることは悪いことじゃない。そこからどう学んで、どう成長するかなんだ。私は、今のバトルでエリシアが更に成長してくれると確信しているよ」


その言葉を最後に、ミクリさんは私をジムの入口まで手を引いてくれた。














ジムから出れば、彼に頭を下げる。


「ありがとうございました。勉強になりました」


悔しくて彼の顔を見ることができず、お礼を言ったあと踵を返して歩き出せば、名前を呼ばれる。

「また明日、ここへおいで」

私がエリシアを強くしてみせると、そう言ったミクリさんに驚いて目を見開き、返事をできずにいた。
すると彼は私に近づき、頭を撫でる。

「エリシアは強い。リーグにでも行かない限り、私ほどの実力者でなければ、負けるという経験はできないだろう?」

自信満々に言い切った彼に、思わず笑ってしまった。

「お言葉に甘えて、明日も来ます」

よろしくお願いしますと頭を下げれば、彼も頷く。

「待っているよ」

「はい!」


今度こそミクリさんと別れ、私は宿泊の予約をするために走ってポケモンセンターへ向かった。


「強くなるんだ…!!」


手持ちのポケモンのみんなも。

そして私も…!



 

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