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ダイゴさんお手製の夜ご飯も食べ終わり、少し外に出てくることを伝えた。
「少し外に出て、手持ちのポケモンにご飯をあげてきますね」
私の言葉に、彼は首を傾げた。
「ここであげたらいいんじゃないかな?僕は構わないけど」
その申し出にありがたく思いつつも、首を横に振った。
「私のポケモン、大きい子が何人かいるんです。それに、ここで見せちゃったら、リーグでダイゴさんと戦うのに面白くないじゃないですか」
私の言い分を聞いた彼はきょとんとした表情をし、数秒後に笑い出した。
「たしかにそうだね。うん、それは面白くないかも。楽しみは後にとっておこうかな。でも外は暗いから、はやく戻っておいで」
「はい。行ってきます」
モンスターボールとみんなのご飯、ブラッシングで使うブラシ、シルクの布を持って家から出て、浜辺に向かった。
「みんな、出ておいで。ご飯だよ」
モンスターボールからみんなを出し、それぞれ専用のお皿にご飯を入れて渡し、ミロカロスだけは浅瀬に出してご飯をあげる。
みんながご飯を食べれば、毛並みがある子はブラッシングをして、メタグロスはシルクの布で身体を磨く。
この作業も、最初は四苦八苦しながらやっていたけれど、いつの間にか慣れて時間も短くなった。
やることが終わればそれぞれモンスターボールに戻していたが、キュウコンだけはボールに戻るのを嫌がった。ピカチュウは言わずもがな。
「きゅう」
「そっか。キュウコンはダイゴさんに会いたいよね」
「!きゅう!」
どうやらキュウコンは、久しぶりにダイゴさんに会いたいらしい。
彼の意図を汲んでボールに戻すことをやめて、ピカチュウとキュウコンと歩いてダイゴさんの家まで戻った。
そして、キュウコンを見たダイゴさんは嬉しそうに笑い、キュウコンの頭を撫でた。
「やあ!きみはあの時のロコンだね!」
僕が送った石を使ってくれたみたいで嬉しいよ。
撫でられるキュウコンも嬉しそうにしており、私は私でダイゴさんにお礼を言う。
「あの時はありがとうございました。どうやってロコンを進化させようか悩んでいたんです」
「気にしないで。僕も、使ってもらうならエリシアのロコンに使ってもらった方が嬉しかったんだ」
一時ダイゴさんとキュウコンが触れ合っており、そこにピカチュウも加わったため、私は小さく笑ってお風呂を借りる。
「お風呂、借りてもいいですか?」
私にとっては何気ない一言だったが、ダイゴさんは一瞬ぴたりと動きを止め、少し顔を赤くさせながら頷き、お風呂の説明をしてくれた。
しどろもどろで説明する彼に首を傾げたが、まあ気にすることはないと考えるのをやめてお風呂に入った。
「…うーん。なにもないのに緊張するね」
婚約者がお風呂に入っているためシャワーの音が微かに聞こえるなか、赤くなった顔を片手で隠す。
今日、半ば無理矢理リーグを抜け出して、エリシアに会いにきて良かったと思う。(たぶん、明日は四天王のみんなからお小言をもらうと思う)
彼女が旅で経験してきたことは財産だと思うし、成長は素直に嬉しい。
…嬉しい、が、彼女が少女から少しずつ大人の女性へと成長しているため、変な男に絡まれていないか心配になる。
久しぶりに見た、エリシアの嬉しそうな顔や楽しそうな顔を思い出す。
1番嬉しかったのは、僕が旅に出る前まで彼女の家で話していた石のことを覚えていてくれて、道中でも探してくれていたことだ。
その事実を知ったときに、いいようのない胸の高鳴りと、どうしようもない愛しさが身体中を駆け巡った。
知らず知らずのうちににやける顔を必死に隠していると、エリシアのポケモンのキュウコンとピカチュウが不思議そうに僕を見ていたため、苦笑して2匹の頭を撫でる。
「なんでもないよ。好きだなぁ…って思っただけさ」
さて、彼女がお風呂からあがってくるのに合わせて、ホットミルクでも作ろうか。
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