軋む梯の上で(13)
呆然としていたユニカだったが、王太子が居住まいを正した理由はすぐに知れた。
暖かなこの温室に、もう一人の客が現れたのだ。彼に気づいた瞬間、ユニカは混乱から覚醒した。
侍従の背中を追っていた彼も顔を上げ、東屋から見下ろしてくるユニカを認める。ユニカと違って、彼女を見つけたその表情に変化は無い。
「おいで下さりありがとうございます、陛下」
慇懃に頭を垂れるディルクに頷き返すと、当然のことながら、彼も蔓薔薇の東屋へとあがってきた。
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