天槍のユニカ



ゆきどけの音(13)

 ちょうど採寸が終わったので、ユニカは部屋着のゆったりしたドレスに着替えて主室へ戻った。色とりどりの布が広げられ、採寸の次は生地選びだ。正直うんざりするが、これも王との約束を果たすためと思わねばならない。
 その布地に追いやられ、部屋の端でエリュゼと共にソファに腰掛けていた公爵は、あーあと肩を落としながら溜め息を吐いていた。
「殿下に出させるわけにはいかないだろう。この無愛想な姫君は私の娘になるんだよ? 今後のこの子の経済的な話は、すべて我が家が面倒を見るのが筋というものだ」
「はぁ……でしたら、費用は公が持つと言うことで殿下にお伝えしておきますね……」
「金のかかるお姫さまだよ、君は。この投資が無駄になるんんてことは許さないからね」
「何の話です?」
 エルツェ公爵がじとりと睨み付けてきたので、ユニカも思わず強い視線を返した。
「王太子殿下は、君にハイデマリー様の匂いをつけたくないそうだよ。だからここに残っていた家具は、どんなにいいものでもすべて作り直して君に買い与えろと仰るんだ。……呪わしいものを持っているね、君も、殿下も」
 ふん、と鼻で笑ったエルツェ公爵は、侮蔑を隠すことなく口許を歪めた。






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