問いかけ(1)
第7話 問いかけ
「お父様に連れてきていただいたのです。お加減が悪いと聞きましたので、お見舞いがしたくて……でも」
寝室へ呼び寄せたジゼラは、すすめた椅子へ座るでもなく表情をくもらせた。
「申しわけありません。お見舞いと言いながら、ユニカ様のご体調のことを考えていなくて……」
寝台の上でようやく座っているだけのユニカを前に、メヴィア公爵家の三の姫はすん、とうなだれる。
起き上がって着替えてきちんともてなしをすべき相手なのだろうが、残念ながらユニカはそんな気になれなかった。さっき寝間着を替えただけで疲れたのだ。もう一度、それも身体を締めつけるような衣裳に着替えるのは無理だろう。
エリュゼがいれば無難に事情を説明し、日を改めて……なんていう段取りもしてくれたのだろうが、あいにくと彼女はユニカのせいで不在にしている。
そもそもここはディルクの宮なので、本来は許可なき者は立ち入れないはずだ。が、相手が王家に次ぐ権門の姫君で、宮の中で生活している「ユニカに会いたい」と言っているので、客だと勘違いされ、やすやすと入って来られたようだ。
もちろんユニカにジゼラと約束した覚えはなかったが、追い返すには身分が高すぎる相手だった。まがいものの公爵家の姫であるユニカにとっては。
ともかくジゼラを立たせているわけにはいかないので、彼女と、彼女につき添ってきた侍女に再度椅子をすすめた。侍女は先日のヘルミーネの茶会でメヴィア公爵夫人に同行していた女性だ。ということは、ジゼラの今日のおでかけはメヴィア公爵夫人も把握していることだろう。それだけはほっとできる。
「お辛かったら、どうぞ横になってくださいまし」
「座って話をするくらいなら平気ですよ。お父様は――メヴィア公爵はどちらに?」
「国王陛下と王太子殿下にお話しすることがあるからと、ここへ来る前に別れました。ご用が済んだら迎えに来てくださるそうです」
その時もまたこの宮に勝手に入ってくるつもりなのだろうか……ちらりと心配になったが、ディルクが公爵と顔を合わせたあとなら、ジゼラの来訪にも気づいていいようにしてくれるか。
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