苦いお砂糖(11)
そう思っていた矢先だったので、ラビニエの取り巻きが現れた時、ユニカは心底落胆していた。
しかし、クリスタやレオノーレ、ティアナの同行も拒まれなかったのでほっとする。テーブルに名指しで招かれたのはユニカだが、堂々と先頭を切って歩くレオノーレ、ティアナに続き、もとい隠れるようにしてラビニエの元へ向かった。
この茶会の主人であるラビニエは、ひときわ広い長テーブルの上座でユニカを待っていた。先にここを訪れた客人達の気配はきれいに片付けられ、新しいお皿とカップ、盛りつけたばかりのようなお菓子と軽食が彼女の前に並べられている。
「ようこそ、ユニカ様。お話できるのを楽しみにしていました」
そう言って黒髪の少女は立ち上がる。ふわふわした巻き髪を白いリボンで二つに結び肩へ垂らした髪型は、改めて見ると幼い印象だ。しかし当人の表情は堂々たるもので、これだけの令嬢を集める茶会の主人には相応しい。
そんなラビニエは自分の向かいの主賓席をユニカに勧めた。
真正面の席は遠慮しようと思ってレオノーレの隣に隠れていたのだが、じきじきに指定されては避けようがない。ユニカは渋々ラビニエの前に立ち、形式通りの挨拶をして席に座る。
「お菓子をありがとうございました、ユニカ様。貴重なシトロンのケーキでしたね。さすがはエルツェ家の職人の味。今日のような陽気の日にはとても爽やかでおいしくいただくことができまたわ」
「そうですか。お口に合ってなによりです」
ラビニエは、最初に見せた冷たい無表情が嘘のように笑ってみせた。あれは手違いだったとでもいうように。
この場で最も幼いはずのラビニエだが、その大人びた笑みで瞬時にユニカの緊張を解いてしまう。
持ってきたお菓子も、褒められたのはエルツェ家の菓子職人だが、ひとまずはラビニエのお眼鏡に適ったようだし。いろいろと構えすぎだったのではないだろうか。
主催者の笑みに応えながら、ユニカはコルネリアの姿が見えないことに気づいた。ほかのテーブルに行っているのだろうか。
目が動く範囲でそろりと周囲の様子を窺ってみるが、やはり彼女は見つからない。どこへ行ったのだろう。
「ティアナ様も、焼き菓子をたくさんご用意いただいてありがとうございます。おかげでほかのテーブルも賑わいましたわ。お手製だと伺いましたが、本当ですか?」
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