苦いお砂糖(10)
類は友を呼ぶにもほどがある。そういう意味で「困った」と思ったユニカだったが、彼女らの来訪を幸いに思った者もいた。
「こちらのお席へどうぞ。ラモナさん、わたくし達は席へ戻りましょう。ほかの皆さんにもご挨拶したいですし」
レオノーレの追求を逃れる口実を見つけ、ヘレンはさっと席を立った。
「あからさまな逃げ方ねぇ」
「お許しくださいまし。今度はもっと楽しい噂話を持って参ります」
「まぁいいわ。ほかのお友達にも挨拶するなら伝えてきて、こっちのテーブルにも顔を出しなさいよって。あたし達はみんなと仲良くなりたいの」
意外にあっさりヘレンを逃がすのだな、と思ったユニカだったが、次の瞬間にはレオノーレの真意を悟った。ヘレンとラモナを使って、ユニカに多少の興味を持っている令嬢達をここへ呼び寄せるつもりなのだ。
あんまり目立つことをするとラビニエが気を悪くするのではないだろうか。
穏便に過ごして城へ帰りたいだけのユニカは顔を顰めそうになったが、やって来たばかりの娘達を歓迎せねばならず、ヘレン達を見送るしかなかった。
ともあれ、彼女らとまた話をする機会ができれば嬉しいな、と思う。
* * *
ユニカにお呼びがかかったのは、それからさらに別の一組の娘達がテーブルにやって来たあとだった。
お近づきの印に、と持ってこられたお菓子の包みを貰う。どうやら、こうやって持って帰ることを前提にしたお菓子の配りあいもあるらしい。ユニカはあいにくとそういう用意をしていなかったが、問題はないとクリスタが耳打ちして教えてくれた。
似通った挨拶、自己紹介を聞いているところへ、ラビニエの取り巻きのお姉様≠ェ現れた。てっきりコルネリアが呼びにくると思っていたが、やって来たのは別のお姉様≠ナ、ペトラと名乗った。
隣のテーブルの誰かが呼び出されてからずいぶん経っていたので、ラビニエはユニカを無視するつもりなのかと思っていた。それはそれでよかったのに。
関わらなければ問題も起きようがない。今日は何人か顔見知りが増えたという十分な成果だけを残して帰ることができる。
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