天槍のユニカ



再会(11)

 ともあれ、エリュゼも同行する上にクリスタも連れて行くと知ったら、自分も行くと言って暴れ出しそうな公女の顔も思い浮かんだ。ヘルミーネには客の追加を早々にお願いせねばならない。
 それでも手土産問題は解決の道筋が見えた。ユニカはすっかり安心してお茶を啜る。
「では、いよいよお衣裳の問題ですが」
 クリスタの言葉に噎せたユニカへさりげなくハンカチを差し出しながら、エリュゼが王太子の元侍女に苦笑いを向けた。
「ユニカ様は流行よりご自分のお好きなものを大事にされる方です。お世話する立場のわたくしもその方面には詳しくないもので……公女殿下から染め柄のドレスを用意せねばならないと言われているのですが、どうしたものでしょう」
「公女殿下がおっしゃるとおりですわ。昨年から気楽な行事に着ていくドレスといえば染め物です」
 気楽なものか、と思いつつ、レオノーレが正確な助言をくれていたことを知るユニカである。正直、ゼートレーネの女達が作ってくれたドレスに勝る着心地のものはないだろうから、染めてあろうが織ってあろうがどうでもいいのだが。
「何かよい柄のものはお持ちですか?」
「侍女達と一緒によく探してみたのですが、織物や刺繍の柄物ばかりで……ですが、今から仕立てるとなると……」
 エリュゼが言わんとしていることはユニカにも分かる。一からドレスを仕立てようとしたら最低でも一ヶ月は要するのだ。ところが、ラビニエのお茶会までその半分しかない。
 しかし、クリスタに慌てた様子はなかった。彼女の笑みはなぜか得意げに輝きを増した。
「実は、お衣裳の相談は特に殿下から依頼されておりました。きっと必要になるんだろうに、ユニカ様は何やら自分に相談しづらそうにしておられるから、と」
「え……!?」
 今朝、ちょっと驚かせたいなどとのたまって出ていったディルクのいたずらっぽい笑みが思い出される。それから、「何かあれば言って欲しい」と言ったあの夜の言葉。
 ユニカがまごついているうちに手を回してくれていたのか――ユニカが迷っているうちに貴重な時間が過ぎていくことを見越して。
「もっとおねだりなさったらよろしいのに」

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