再会(10)
ユニカが青ざめたのに気づいて、クリスタははっと口を噤んだ。
「あ、で、ですから、一度コルネリア様に助言を請うてみるのをおすすめします」
「あの方が答えてくださるでしょうか? 手土産のことだってユニカ様に何もおっしゃらなかったのに」
火種≠ニいう言葉に怖じ気づいたユニカと違い、小娘達が繰り広げる幼稚な争いにさらに呆れた口調でエリュゼがごもっともな懸念を口にした。
「聞かれなかったから、と言い訳されればそれまでですが、はぐらかされないように公然と問うてしまえばよいのです。エルツェ家のお屋敷に招待してしまうとか、失礼かも知れませんが、ユニカ様のお付きの騎士様にお手紙を届けて貰うとか」
話が聞こえていたのか、黙って応接間の隅に立っていたラドクが元気よく手を挙げた。フィンと、エリュゼとともに戻ってきたクリスティアンは素知らぬふりだったが。
不自然極まりないけれど、近衛の制服が手紙を届けに来たらコルネリアも無視は出来まい。必要になった時はディルクに許可を貰ってラドクに頼もう、と考えつつユニカは頷く。
「エルツェ家といえば、公爵夫人にも相談なさるとよいかも知れません。王妃様がご存命だった頃の宮廷の遊びを知っていらっしゃる貴婦人ですから、わたくし達の世代の娘にとっては憧れの方ですの。公爵夫人のお墨付きを持ってきたと言うだけで、少なくとも手土産をもとに貶されることはないと思います」
クリスタに言われて初めて、ユニカの脳裡に相談相手として継母の顔が思い浮かんだ。思えばユニカの社会勉強のために友人を集めて度々サロンを催してくれた女性だ。女同士の付き合いに疎いはずがない。
「今度、ヘル――お継母様のお友達が集まってのお茶会があります。私も行くのですが」
その茶会も、もしかするとラビニエが披く茶会と同じような意味合いがあるのだろう。だが、これまでに見た茶会でのヘルミーネの様子は、客たる友人達を平等にもてなすものだった。ユニカのような緊張を強いられている人はいなかったと思う。
それはさておき、クリスタがうっとりとした溜め息の混じる声をもらした。
「羨ましいですわ。エルツェ公爵夫人のお茶会だなんて……」
そこで相談しよう、という話のつもりだったが、クリスタの様子はまったく違う期待に満ち満ちている。
「……クリスタさんをお呼びしてもいいか、聞いてみましょうか」
「まぁ、よろしいのですか? それではぜひ!」
今日一番大きな声で返事をした彼女を、ユニカはどんな目で見ていいのか分からない。そんなに楽しいのだろうか、お茶会。そんなにすごい人なのだろうか、ユニカの継母は。
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