再会(8)
「今年は?」
「招待状はいただいています。婚礼の支度が忙しいのでまだお返事を迷っているのですが、ユニカ様がいらっしゃるならわたくしも行こうかしら」
「ぜひ、ぜひにお願いいたします。わたくしはご一緒することが出来ないので、会場でユニカ様が心細いのではないかと案じているのです」
前のめりになるエリュゼは忘れているらしいが、一応レオノーレが一緒に行く。それを知らないクリスタは気のいい顔で笑った。
「プラネルト女伯爵は仲間外れにされてしまったのですね。わたくしも来年からは呼んでいただけませんし、では、皆さんに最後のご挨拶を兼ねて、お招きにあずかることにします」
「なぜ、来年は呼ばれないと分かるのですか?」
「ご令嬢≠フ集まりだからですよ」
尋ねたユニカはなるほどと頷き、同じことを察したらしいエリュゼは顔をしかめながら呆れた。
ラビニエのお茶会には、爵位を持つ者や誰かの夫人――ラビニエよりわずかでも上の権威を持った者は出てはいけないのだ。本来ならそれに該当するレオノーレも呼びたくないに違いない。しかしウゼロ大公の娘の要望は無視出来ず、しぶしぶ招待状を用意するのだ。
なんて子どもっぽい理屈なのか。そして、今年やっと十四歳になったという少女の機嫌をとる茶会にクリスタやコルネリアのようなれっきとした淑女が参加しているのには恐れ入る。
それほどラビニエの家、あるいは父親に権力があるということだろうか。ラビニエの父は軍の要職にあるという言葉が耳の奥によみがえり、ユニカはうなだれた。
その年下の姫に今年目をつけられているのは、ほかでもないユニカだった。うまくやり過ごせるか、すこぶる不安である。
「ラビニエ様のご機嫌さえとれれば、あとは楽しいお茶会ですよ。この時期にしか王都へいらっしゃらない方々ともお話し出来ますし、新しいお友達も出来ますわ。そんなお顔をなさらないでくださいまし」
そう言ってころころ笑うクリスタを、ユニカは眩しいもののように感じた。今の発言から察するに、クリスタもラビニエの茶会には多少の煩わしさを感じているようだ。が、それも巧く乗り越え、楽しむ術をちゃんと知っている。
派閥抗争を目論んでいるレオノーレより、ほんわかした笑みを浮かべるこの姫君の方がよっぽど頼りになる気がしたが、これは言ってはいけない。
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