再会(7)
ユニカが自由に使える応接間へ場所を移し、昼食がまだだと言うクリスタの前にも、大霊祭で饗されるケーキの大きな一切れが出された。ちなみに、これはプラネルト伯爵の祖母のお手製である。卵の風味と贅沢な甘さ、しっとりした食感が、ユニカが今まで食べたケーキの中でも一番にしてよい絶品だった。
クリスタもそう思ったのか、一口食べて目を丸くする。
「こちらは、宮の厨房で作られたものですか?」
「いえ、エリュゼのお祖母様が作ったものだそうです」
「おいしい。どうしてこんなにしっとりしているのかしら……!?」
素直に感動しているクリスタのことを、ユニカは徐々に思い出した。
もうずいぶん前になるが、王太子の宮でかくまって貰う事態が発生した時、ユニカの世話をしてくれていたディルクの侍女だ。初めはユニカのことを奇異の目で見ていたが、それも一日や二日のこと。早々に警戒心を解き、ユニカを客人として扱い丁寧に面倒を見てくれた。
確か、結婚が決まったから侍官の職を辞したと聞いたが。
「殿下は、どういったご用件でクリスタさんをお呼びになったのでしょうか。実は、私は教えていただいていなくて」
「あら、そうなのですか」
「はい。ちょっと驚かせたいなどとおっしゃって……」
「殿下にもそういう少年のようなところがおありなのですね」
もっと子供っぽい気がする。とは言わずに、ユニカはクリスタからそっと視線を外した。彼女の無垢な眼差しに見詰められるとなんだか恥ずかしい。それに、心なしか彼女はユニカを見てうきうきしているようにも感じて居たたまれなかった。もしかすると、彼女もエルツェ公爵が発表している「王太子殿下とうちの娘の恋物語」を耳にしているのかも知れない。
「殿下からは、今度ユニカ様が招待されたお茶会の支度について相談にのってあげて欲しい、とのご依頼を受けたのです。この時期ですもの、ラビニエ様のお茶会でしょう?」
「ラビニエ様をご存じですの?」
ユニカが目を瞠る隣で、おかわりのお茶を注いでいたエリュゼがやや棘のある声で言った。茶会への参加を断られたので、この伯爵の中でかの姫君はすっかり敵なのだ。
「盛大なことで有名ですもの。今年で四度目かしら。ラビニエ様のお気に入りの……お友達が、そのまたお友達を大勢誘って集まるのです。昨年はわたくしも招かれました」
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