久しぶりにそでを通した真っ白なYシャツ。
久しぶり、といっても一ヶ月半ほど着ていなかっただけだ。
それでも、どこか縛られているように感じる白いシャツの上から肩を軽くたたいた。
ふと目に入った壁掛けのカレンダー。
今日の日にちには「始業式」の文字。
知らず、ため息がもれる。


「…あ、教科書。入れたっけ?」


私立であるが故か、立海では始業式の後、二時間目から通常通りの授業が組み込まれたいた。
赤也やブン太は夏休みの終わりが近づくにつれて、連日のように文句を言っていた。
そう、夏休みは終わった。


「夏は、終わったんだ…」


自分に言い聞かせるように、呟く。
夏の終わりは昨日だった。
だけど、俺にとっての、いや…もしかしたら俺たちにとって、かもしれないな。
俺たちにとっての本当の夏の終わりは、あの日。
日差しが降り注ぐ中、必死にボールを追いかけていた、あの日。
ボールが両脇に叩きつけられるように放たれ、遅れてやってきた風が、汗で頬にへばりついた髪をかすめた、あの瞬間。
夏は、終わった。


「…っ」


思考を振り払うように頭を振った。
今まで、何度も何度も何度も何度も思い返してきた。
青学のボウヤと戦えて、負けて、幸村精市にとっては良かったんじゃないかと思えるようになった。
あの子に負けたことを良かったと言っては語弊があるかもしれないが、あの子と戦い、負けたことは、今の俺にとって、確実にプラスになっていると思う。

でも、立海の部長としては?


「…最低でしか、ないよな」


夏は、終わった。
だが、俺にはまだ立海の部長としてすべきことが残っている。
だからほとんどの部が夏の大会が終わって二年に部長を譲り渡している中で、テニス部だけは三年である俺が部長を続けているのだから。


「…行こう」


今日はきっと、長い一日になる。






想像してた僕らの未来は



(きっと、いや絶対、今とは違うものだった)




2012/03/21


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