帝王と小娘


 部下に一声掛ければ、どこからか調達してきた餌が部屋にやってくる。
 DIOの寝室は早く抱いてとせがむ女の声で満ち、やがて様々な嬌声を紡ぎ出していく。そうして気ままに女を抱き、眠りから覚めたときには朝食代わりとして血を吸い取る。骸を廊下に転がしておけば忠実な配下がいつの間にか片付けていた。
「DIOって本当に極悪だよね」
 パジャマ姿の夢主はドライヤーで髪を乾かしながら布団の上に座って館での生活をあれこれと語る相手を軽蔑しきった目で見つめた。
「私は吸血鬼だ。その主食は血液だと知っているだろう?」
「自分の腕でも噛んでればいいのに」
 乾いた髪を整え終えると、夢主は制服にブラシをかけて明日の準備をする。宿題やDIOの話し相手をしていたらいつの間にか深夜だ。ジョセフとホリィはもう寝ただろうか。承太郎はいつもの深夜ラジオを聞いているのだろうか。試しに二つ向こうの部屋の気配を探ってみるが、何の音も漏れてこなかった。
「オイ、人の話を聞け!」
 承太郎に向けていた夢主の意識をDIOが無理矢理に戻した。
「ん? えーっと、それで何だっけ?」
「お前という奴は……」
 話に集中しない夢主にDIOは苦々しい顔で睨んでくる。
「ごめんごめん。つまりあれでしょ? 女が側にいないと寝られないって事?」
「抱けるようなイイ女が、という部分を省いているぞ。だがまぁ……大まかに言えばそう言う事だ」
 鞄に教科書を詰め終えた夢主は彼が居座る布団の上に正座した。可愛い花柄の布団はホリィが選んだ物だ。これが大変お気に入りだし、今、DIOが肘置きに使っている大きなクマのぬいぐるみもジョセフがニューヨークのお土産にくれた宝物だ。部屋には空条家での思い出がたくさん詰まっている。
「私にどこかで女を見繕ってこいって言ってるの? こんな深夜に?」
「深夜だろうと朝だろうと、部下は私の願いを聞き届けるものだ」
 偉そうなDIOの声に夢主は額を抑える。彼はとってもワガママだ。きっとろくな幼少期ではなかったのだろう。
「嫌だよ、面倒くさい。それに私、DIOの部下じゃないし」
 枕を叩いて整え、夢主はころりと横になる。不機嫌そうに見下ろしてくるDIOを無視して部屋の電気を落とす。チッという鋭い舌打ちの後、仕方なさそうに体を横たえる気配があった。
「この家にはベッドもないのか」
「日本人は畳の上で寝るものなんだよ。DIOももう慣れたでしょ?」
「……」
 慣れたのではなく、慣れるしかなかったのだ。DIOは顔を歪めて夢主の頭から枕を奪い取った。
「ちょっと……もう!」
「今夜もまた乳臭い小娘を抱いて寝るしかないとは」
 その言葉に夢主は相手の腹を強く叩いた。DIOは特に痛がりもしないのでそれがまた頭に来る。
「嫌なら縁側で寝てよ。そこのクマちゃん貸してあげるから」
「何が悲しくて綿を抱いて寝なければならぬ? 薄気味悪い事を言うな」
「もー……いいから寝させてよー明日テストなのにー」
「フン、素直に貧弱な体を明け渡せばよいものを、お前が、」
「……DIO」
 それ以上を言わせない低い声にDIOはぴたりと会話を止めた。後は無言で、少々手荒に首下へ枕代わりの腕を突っ込んできた。DIOは後ろから隙間無く体を合わせ、夢主を抱きかかえるようにして眠る。もはや毎晩の事だ。最初は抵抗したが「寝られない」と念仏のように頭の横で呟かれては諦める他なかった。
(何もされないのは分かってても女子高生を抱き枕にするって犯罪じゃない?)
 半年前から一緒に暮らす事になった彼は文句と要求が多くて仕方ない。どれほど外見が良くても、相手は人の命を何とも思っていない吸血鬼だ。数々の制約で縛り付けてはいるものの、気を抜けば彼のペースに引きずり込まれてしまいそうになる。
(誰かが側にいないと寝れないなんて寂しがり屋なのかな)
 食欲と性欲を解消するためだという。しかし、ぬくもりまで求めている事に本人は気付いているのだろうか。
 そのうちDIOのひんやりとした手が夢主のお腹を抱え込んできた。
(夏場はいいけど冬は絶対に嫌だなぁ)
 夢主はぽつりと思いながらその手に自分のを重ね合わせた。



 テストの結果が記された紙が手の中でひらりと揺れた。
「結果は惨敗? それとも圧勝?」
 心なしか浮かない顔でいる夢主にクラスメートの花京院が笑いかけてくる。
「その中間。引き分けかなぁ」
 夢主が黄泉の国から引き戻したおかげで彼は無事に一学期末のテストを受ける事が出来た。結果は良好のようだ。承太郎も花京院も、顔だけでなく頭もいい。もちろん女学生からはよくモテる。代わりに恋文を渡して欲しいと頼まれた回数は片手ではとても足りないほどだ。
「英語の点数すごいじゃないか。ジョースターさんのおかげかな?」
 彼らはエジプトへ向かう旅の間、嫌と言うほど言語の大切さを知った。ポルナレフのおかげでフランス語を少しだけ話すことが出来る。アヴドゥルからはアラビア語を、ジョセフからは英語を、暇なときはそうやって過ごしていた成果が今回の結果に繋がったのだろうか。
「それがまた微妙なところで……」
「嬉しくないのかい?」
 花京院にはどうして素直に喜ばないのか、そこが分からない。 
「DIOがイギリス人だって知ってから面白半分で児童書を読ませてるんだけど、」
 そこで言葉を切って花京院を見ると、彼は肩をぷるぷる震わせながら口元を引き結んでいた。
「DIOの声で英文聞いてると眠くなるんだよね。ほら、睡眠学習ってあるでしょ? まさかとは思うけど、この成績アップがDIOのおかげだと考えると素直に喜べない」
「別にいいじゃないか。ただのテストだろう?」
 花京院は何度か咳払いをした後、そんなことを言う。
「そうなんだけど……あの人、妙に自信家で、私のおかげだ、感謝しろってすごく押し付けがましいんだもん」
「僕としては、よくあんなのと一緒に居られるよね、って言いたいところだけど」
 今でも名を聞いただけで腹の真ん中辺りが疼いてくる。出来れば声も聞きたくないし、顔も見たくない相手だ。夢主も承太郎もどういう神経回路をしているのだろうか? 花京院は首を傾げずにはいられなかった。
「もちろん最初はすごく大変だったよ。お風呂の入り方から教えなきゃいけなかったし、お箸だって使えなかったし、あれは嫌だ、これも嫌だって駄々こねるし」
 DIOという部分さえ気にしなければワガママな子供に手を焼いているように聞こえてしまうから不思議だ。
「それはそうと、土曜日にジョースターさんたちは帰国するんだよね?」
「うん。ジョセフおじいちゃんはまたすぐに来るみたいだけど、ポルナレフとアヴドゥルさん、それにイギーは国に帰っちゃうって。ずっと居ればいいのに」
「確かに。もっと話がしたかったな」
 花京院はあの旅が終わった事をほんの少しだけ寂しく思う。インドでバクシーシ責めにあったり、砂漠をラクダで横断したり、沈む潜水艦の中から脱出したり、日常に帰ってきてからはそれらは旅のいい思い出になりつつある。
「みんなが帰っちゃうと、やっぱり寂しいよね」
「そうだね。だけど……」
 花京院は今まで決して得られなかった同年代のスタンド使いが二人もいる奇跡に感謝した。承太郎と夢主が親友として居てくれるだけで、彼はこの上ない幸せを感じる事が出来る。
「地球の裏側にいても僕らの絆はそう簡単に途切れはしないさ」
 花京院は自信を持ってそう言える。この先、誰がどうなろうとも強固な繋がりは断ち切れないはずだ。
 夢主はそんな力強い言葉を聞いて微笑む。まさに彼の言うとおりだった。


 右側に承太郎、左側に花京院。校内で人気者の彼らを両手に花な状態で夢主は登下校を繰り返している。承太郎のファンからは睨まれ、妬まれ、時にすり寄られながら、それでも彼のいとこと言う事で大目に見てもらっているのが現状だ。
 花京院は愛想良く会話はするが、やはり承太郎と夢主に接する時とは比べものにならない。親密度があまりに違うので彼を想う女子から詰め寄られた事が数回あった。そんな時は花京院の好きな物を教える事で夢主は彼女たちからどうにか逃げ回っている。
「ごめん、二人とも。今日は獣医さんに呼ばれてるから先に帰っててくれる?」
「獣医?」
 下校の支度を終えた花京院は夢主の言葉に目を瞬かせた。同じく鞄を持った承太郎が顔を見下ろしてくる。
「あの猫か?」
「うん。色々と検査して、注射とシャンプーしてもらって、今は元気にご飯も食べてるって」
「猫?」
 花京院には何の事だかさっぱり分からない。
「こいつの悪い癖だ。何でも拾ってきやがる」
「ああ、捨て猫? 君が拾ったの?」
「そう。聖子ママにはOKもらってあるし、大丈夫だよ」
 夢主は笑顔で言う。承太郎はその顔を見ながらぽつりと言った。
「猫を飼うならそれなりの準備が必要だろうが」
「ああ、うん。帰りにキャットフードとトイレを買ってくるつもり」
「一人だと荷物が大変そうだ。僕らも着いていくよ。ねぇ、承太郎?」
 花京院は決定事項として承太郎に告げた。帽子の先を下げつつ、承太郎はすぐに背を向ける。
「ごめんね、二人とも。でも助かる!」
 夢主は自分の鞄をぱっと掴み、花京院と共にその大きな背中を追いかけた。


 キャットフードに猫砂とトイレ、爪研ぎとおもちゃとグルーミングセット、それから悩み抜いて購入した鈴付きの首輪。それらを不良と優等生が並んで手にしている姿を動物病院のスタッフは暖かい目で迎え入れた。
「もう少し遅かったらダメだったね。運がいいよこの子は。検診と予防接種、去勢も済ませてあるから。はい、可愛がってあげて」 
 淡い茶トラ模様の猫を夢主は獣医から受け取った。
「どうもありがとうございます」
 軽い体を優しく抱いて夢主は礼を言った。新品のキャリーケースの中に猫を入れて、バイトで稼いだお金で治療と去勢費、それからワクチン代を支払う。財布の中からあっという間に消えていく諭吉さんにお別れを告げて動物病院を後にした。
「その子、怪我してたの?」
 花京院は承太郎が持つキャリーケースを指さす。
「そうみたい。私が蘇らせた時もちょっと具合悪そうだったし」
「夢主……お前の能力は素晴らしいと思うし、感謝もしている。だがあまり使うな」
 明るい声の夢主とは反対に承太郎の声と顔は厳しかった。死者を呼び戻すのは自然界の掟に反している。救った命の責任はその本人が死に、能力が消えるまで続くのだ。
「心配してくれてありがとう、承太郎」
 すでに多くの命を抱え込んでいる夢主はそれだけで十分だと思えるほどに承太郎の言葉が嬉しかった。
「その子の名前、どうするんだい?」
 鞄と猫用品を抱えた花京院に聞かれて夢主は少し間を置いて答えた。
「ドルチっていう名前にしようかと思って」
 猫に付ける名としてはあまり聞き慣れないものだ。花京院と承太郎は顔を見合わせる。
「今読んでる本に出てくるの。頭が良くて賭け事が出来て、最後には人間の言葉を話す猫なんだよ? すごいよね」
 承太郎は多くの荷物を抱えながらやれやれと呟く。花京院は曖昧に笑った。
 こうしてまた空条家に新たな家族が増える事となった。



 大きなスーツケースをいくつも押して、ジョセフとポルナレフ、それからアヴドゥルは空港にやって来ている。
 ジョセフと共にアメリカへ帰るはずだったイギーは、昨日ペット用のキャリーケースをスタンドで粉々に破壊し、慌てて捕まえようとするポルナレフに屁をかましてからホリィの腕の中に飛び込んだ。その行動に誰もが驚く中、彼はホリィに向かって大きく尻尾を振った。再び飛行機に乗ってアメリカへ帰るよりも待遇のいい日本に残る方を選んだようだ。
 それを見たジョセフはこれは好都合だと考えたらしい。自分が居ない間、イギーに家族の身の安全を任せる事に決めたのだ。新たに加わった猫と犬に夢主とホリィだけが喜んでいる。
「あーあ、もっと観光したかったなぁ。天ぷらにスシに芸者、日本の女の子は可愛くておしとやかだし最高だぜ」
 ポルナレフはしみじみと語る。彼の後ろを見送りに来た花京院と承太郎、それから夢主が苦笑しながら着いていく。
「まぁ中には夢主みたいな女もいるけどよ」
「ちょっとポルナレフ、それどういう意味?」
 夢主は腕をぎゅっとつねり上げてやった。
「イテテ! だけどな、お前……承太郎にイギーもいるから大丈夫だとは思うが気を付けろよ?」
 ポルナレフは真剣な表情で顔をのぞき込んでくる。何を心配しているかはすぐに分かった。
「うん。死ぬまでこき使うから平気」
「これだもんなぁ……」
 ポルナレフはほんのちょっとだけDIOを可哀想に思った。
「あっ! わし、電池を買うのを忘れとった! おい承太郎、ちょっと売店まで案内せい。これでは曲が聞けんわ」
 愛用のウォークマンから空になった電池を抜き、ジョセフは問答無用で承太郎を連れて行こうとする。
「あー……そういえば俺もまだ日本のみやげを買ってねぇな。花京院、悪いが免税店まで連れてってくれや」
「は? 僕がですか?」
「いいからほれ、早くしねぇと乗り遅れるだろうが」
 ポルナレフは納得がいかない花京院を連れてさっさと人混みの中へ消えてしまった。
「アヴドゥルと夢主はそこで荷物を見ておいて欲しい。承太郎、行くぞ!」
「おいジジイ! 何で俺が……」
 ブツブツ文句を言う承太郎を引っ張って、ジョセフも人の波の向こうへ行ってしまった。
「仕方ない。この椅子に腰掛けて待っていましょう」
「そうだね」
 ポルナレフとジョセフ、アヴドゥルの荷物を寄せて、夢主は勧められた椅子に腰を下ろした。
「アヴドゥルさん、今度はいつ会える?」
「フーム……さて、いつ頃になるやら。連絡はしますがね」
「私も手紙を書くよ。日本の綺麗な風景が写ったポストカードを送るね」
「それはいい。私も楽しみにしていましょう」
 にこやかに微笑んだアヴドゥルは胸のポケットから使い古したタロットカードを出した。彼の本業は占星術師だ。
「別れ際に占いでもどうですか?」
「本当? いいの?!」
 夢主はパッと笑顔を浮かべ、タロットを混ぜて整えるアヴドゥルの手元を眺めた。
「何を占いましょうか? 将来について? それとも年頃の女性には恋の占いかな?」
「えっ!? あー……うーん……じゃあ……そ、それで……」
 ぱっと頬を染め、恥ずかしそうにアヴドゥルを見る。相手は笑ってカードを備え付けの小さなテーブルの上に広げた。
「ほう……ふむ……」
 めくられたカードを前にアヴドゥルはしばし沈黙した。夢主もそれらを凝視しながらドキドキする胸を押さえて占いの結果を待っている。
「とても言いにくいが」
 お互いが顔をじっと見つめ合い、しばらくそうしてからアヴドゥルは口を開いた。
「今、想っている相手とは少し無理なようですな」
「そう、ですか」
 今にも泣きそうな夢主の表情にアヴドゥルは慌てて付け加えた。
「あ……い、いや、もちろんこれはただの占いであって……」
「大丈夫、アヴドゥルさん。分かってた事だし……そっか、やっぱり無理かぁ」
「あー……いや……その……すまない」
 眉を下げて謝ってくるアヴドゥルに夢主は笑みを向けた。
「本当は自分でも分かってるんです。絶対に両想いにはならないって」
(まさか、そこまでとは……)
 ホリィの爆弾発言からアヴドゥルは夢主とDIOの二人を密かに見ていたが、あれはどう考えても上手くいきそうにない。まず周囲が猛反対するだろう。もし付き合い始めたらジョセフなどは卒倒してしまうに違いない。
 どうにかしてDIOへの思いを諦めさせ、そして財団本部にDIOの身柄を拘束してしまいたいジョセフは彼女の説得役にアヴドゥルを選んだ。この短い滞在期間で考え抜いた末、アヴドゥルの占いというあやふやで、しかし確実に影響を及ぼすであろう恋のアドバイスを行う事にした。ジョセフとポルナレフが承太郎と花京院を連れて行ったのも実は夢主と二人きりになるための作戦だ。
(私が想像した以上にDIOの事を想っているようだ)
 アヴドゥルは叶わぬ相手に恋をした彼女を不憫に思う。だがハッキリと言わなければより深く傷つくだけだろう。今ならまだ間に合うはずだ。
「大丈夫だ。ほら、このカード。新たな恋の訪れを予言している。きっとすぐにいい人が見つかるだろう。君はまだ若い。今の相手は忘れて次の恋に期待した方がいい。その方が未来も明るいと出ている。うむ、それだけは確かだ」
 こちらを気遣いつつ、静かで大らかなアヴドゥルの声に慰められて夢主はどうにか笑顔を持ち直した。
「……じゃあ、次は進路を占ってもらってもいいですか? 私、どっちにしようか凄く悩んでて」
「ああ、もちろん。ではさっきと同じように……」
 わざと最悪の結果が出るようにしたカードを元に戻し、再びよく混ぜてからアヴドゥルは占いを開始した。
「ふむ、このカードの並びなら……今、考えている通りに進めばいい。それでも迷ったときは、頭で選ぶよりも心に浮かんだところに決めるのが吉だ。いずれはそれで道が開ける」
「そっか……ありがとう、アヴドゥルさん」
 夢主が心から礼を言った所で、まるでタイミングを計っていたかのようにポルナレフとジョセフたちが姿を見せた。
「ジョセフおじいちゃん、どこまで電池を買いに行ってたの? すぐそこに売店があったでしょ?」
「ああ、まぁ……トイレじゃよ。年寄りにもなると色々あるんじゃ」
 誤魔化すように笑ってジョセフは荷物を手にした。承太郎はそんなジョセフに振り回されて少し不機嫌そうだ。
「さーて、そろそろ時間だな。土産も買ったし……花京院、悪かったなー」
「本当ですよ。ポルナレフのせいで僕は何度、恥をかいた事か」
 花京院は疲れた顔を見せ、ポルナレフが買い込んだ荷物を押しつけた。
「それでは行きますか。夢主、元気でな」
 カードを片付け、自分の荷物を持ったアヴドゥルは彼女の頭を優しく撫でた。
「さようなら、アヴドゥルさん、ポルナレフ。またね!」
 去っていく彼らを承太郎と花京院の横で見つめながら夢主は大きく手を振った。
 その後、アヴドゥルから夢主の気持ちを聞いたジョセフは、報われない恋である事をちゃんと理解している彼女に安堵し、同時に申し訳なく思うのだった。

 終




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