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目を覚ますと真っ白な世界に立ってました。…え、何処ここ?
周りを見渡すが靄が掛かったように恐ろしく白い空間では広いのか狭いのかすら分からない。何かスタンド攻撃でも受けているのだろうか。ここに来る前何をしていたか思い出してみる。

…DIOの所に皆と向かってる最中で、そう、確かエンヤ婆戦が終わった所だ。しかしそんな中、私はダン君の所に着く前に熱を出してしまってずっと承太郎の膝を借りていた、筈。…という事はこれは夢か。
冷静になってみればどこかふわふわした感覚がする。脳味噌が疲れて夢の光景を作るのも放棄しているのだろうか。…自分の脳味噌ながらやる気がねえな、と呆れつつ暇だし歩きだすことにした。

どこまで行っても白い光景は変わらない。無限に広がってんじゃあないのかこれ?体力という概念はどうやらないらしいが、精神的に疲れてきて座りこむ。あー、暇だなぁ。
夢だと分かってる夢って明晰夢とか言うんだっけ?確かそれなりに好き勝手出来るもんじゃないのかそれ。なら誰か出てきてもいいだろ。DIOとかディアボロとか今は会えない奴出してみろコノヤロー。
自分の脳味噌に喧嘩を売りつつ後ろに倒れ込む。かなり勢いよく倒れたが、布団の上に倒れたような柔らかさだ。そんな所だけはフォローばっちりってか?はっはっは。逆にムカつく。


…一人笑っていても詰まらなくて目を閉じる。ああ、早く目が覚めればいいのになあ。夢の中だと言うのに眠たくなってきた。いっそこのまま寝てしまおうか、なんて思い始めた時視界が暗くなる。
不思議に思って目を開ければ、私を屈んで覗きこんでいる人が居た。慌てて飛び起きれば逆光で見えなかったその人の顔が確認できる。


「っ!」


思わず息を呑む。金色の髪に空の様なスカイブルーの瞳。頬には特徴的な逆三角形。そこに居たのは紛れもなく、シーザー・ツェペリその人だった。


「すまない。驚かせてしまったかな」

「え、ええ。息がとまる程驚きましたよ」


とりあえず笑顔を浮かべてみたが多分引きつっているだろう。…一体何故ここに彼が居るのか。夢だとしても納得がいかない。


「夢、と言えば夢だが…。そうじゃないな」

「…私何か口に出してましたか?」

「いいや」


ゆるゆると首を振るシーザーにそういう読心術的なのはジョセフおじいちゃんの十八番だろうと思った。


「…それであなたは」

「シーザーでいい。知っているんだろう?」


パチリとウィンクを決めるシーザーは中々の色男だ。しかし、そんな表情より彼の発言が気になってしまう。この人は何を。


「…若いのに随分と重いものを背負っているみたいだな」


何を、知っている?…知らず知らずの内に剣呑な目つきになってしまう。彼はそんな私に構うこと無く隣に腰を下ろした。


「苦労してるな」

「…どこまで、分かってるんですか?」

「そうだな。可愛らしくお願いしたら教えよう」


悪戯そうに笑う彼にイラっとして睨みつける。そんな私にすまない、と言いながらシーザーは真剣な顔をした。


「過去や未来を知っていて運命を捻じ曲げようとしている、ってくらいだ」


その言葉に、低められた声に、ドクリと心臓が跳ねた。


「…それ、私のほぼ全てだと思うんですが」


やせ我慢で軽口を叩く。肩を竦めて、苦笑して。ああ、取り繕った笑いは無様に引き攣ってはいないだろうか。


「そんなことはないさ」

「そうですかねえ」

「ああ、まあ君がジョジョの孫になったからなんとなく見守ってて知っただけなんだがな!」


重たくなった空気を笑い飛ばす様に冗談めかすシーザーを冷たい目で見る。