「かんぱい!」
テーブルには、霜降り和牛に刺身など、豪華な和食善が並べられている。
どれから食おうか悩んでしまう。
「お部屋食なんて、奮発したね〜」
「そりゃァな! い…」
1年記念日だし、なーんて甘ったるい事言いそうになって、口を結んだ。
「えっ 何?言いかけ禁止!」
「だァもう、鍋、いいんじゃねェのー?」
「あっ 本当だ〜!」
ちょうど、小鍋のふちが沸々と煮えてくれて助かった。
タレと野菜が煮つめてある鍋に、高そうな肉を数秒くぐらせて口に運ぶと、
「ん〜まい!」とまた幸せそうに笑ってやがる。
今日 足湯に落ちたことなんか絶対忘れてんだろ、コイツ。
俺も同じように食べると、感動の柔らかさに興奮を隠せず「うめェ!」と声を上げた。
「でしょでしょ!流石、東堂くんの見立てだね〜」
「ゲ。なんでバレてんの?」
言いやがったか東堂、と一瞬思ったが、
「ううん。靖友が旅館調べてるところなんて想像つかないし、そもそも旅行なんて考えてなかっただろうな、って」
…俺を分かってるっつーことねェ。
「は〜食った食ったァ!」
「ふぅ、お腹いっぱい…なんか部屋暑くない?」
「そうかァ?」
一通り味わい尽くし、ほどなくして仲居さんが下膳に来て、
「お飲み物のおかわりお持ちしましょうか?」と
進めてきたから、じゃあ同じものを、と頼んだ。
「べプシとレモンサワーですね〜 失礼します」
「「へ?」」
仲居さんが退出し、俺は焦って残りを一口飲んだ。
「ぶは、これ、酒じゃねェか!」
「レモンソーダにしては苦いと思った〜!」
「「苦いと思った〜」じゃねェよ、空ける前に気付け!」
「メニュー指さして注文したから間違えちゃったのかな〜
けどもう飲んじゃったもん」
「未成年だろォが、もっと反省しろ!」
不良だったくせに真面目だね〜
なんて言いながら、机に突っ伏してしまった。
「オイ。そのまま寝んじゃねぇぞ」
はーい、と言いながらも眠気に負けそうになっている。
仲居さんがおかわりを持ってきて、布団も敷いて行った。
が、その間にアイツはすっかり眠っちまったようだ。
「オイ‥」
「オイ!起きろ!」
肩を揺すってみても、起きる様子がない。
「紬 …バカ紬ー」
「…カワイイカワイイ紬チャーン」
「…はぁーい…」
都合の良いヤツにだけ返事しやがった。
「ったくしょーがねーなァ」
突っ伏しているところに腕を回して、
肩を組む形で抱きおこす。
布団に寝かせると、んっ、と身じろぎした。
仰向けになると、無防備にはだけた胸元と熱っぽい肌が色っぽくて、
ついため息が漏れる。
寝込みを襲う趣味はねーケド、こんくらいはいいだろ。
掛布団を掛けてやり、覆いかぶさり軽くキスをする。
「やす、とも… 布団暑いよ〜」
「ハイハイ!」
布団をはがして、浴衣の帯を緩めてやると、
靖友も、と俺の帯をゆるゆると緩めながら引き寄せて、
上に覆いかぶさる体勢になり、また口づける。
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!未成年の飲酒は禁止されています!