12



「こんにちはー。…ってどうしたんですか」

バーナビーさんのサプライズから二日が経った。そして今日、トレーニングルームに行くと疲れた表情のアントニオさんがいた。思わず何があったのか聞いてみても「ちょっとな」としか答えてくれなかった。

「そういえばアントニオさん先日いませんでしたね。何かあったんですか?」

先日のホーリー一味捕獲のときアントニオさんことロックバイソンがいなかったので何かあったのだろうかと思い聞いてみたら更に疲れた表情になった。本当どうした。

「色々あって行けなかったんだ」
「そうですか…」

これ以上深く追求してはいけないと感じた私はその話題を振るのをやめることにした。

「そうだ。お前さんに渡したい物があるんだ。ちょっと待っててくれ」

いきなりそう言ってアントニオさんはトレーニングルームから出て行ってしまった。と思ったら直ぐに戻って来た。紙袋を持って。

「ほらよ」
「ありがとうございます。あの、中見ても良いですか?」
「ああ」

アントニオさんから紙袋を渡されたが、はっきりいって私にはアントニオさんに何か貰う理由がないのだ。中に何が入ってるのか気になりつつ紙袋を開けてみるとそこにはピンク色の可愛らしい兎のぬいぐるみがあった。
わー、可愛らしいぬいぐるみ。アントニオさんありがとうございます!
なんて言うと思ったか。これはバーナビーさんに渡すプレゼントではないか。

「何ですかこれ」
「俺が持ってたんだが、変わりに持っててくれないか」

ぬいぐるみを取り出しどういうことなのかと聞いてみるとアントニオさんはそう言った。別に私が持ってても構わないが

「アントニオさんが持ってたって何の支障もないのでは?」

誰が持ってても対して変わらないと思うのだが。そう伝えるとアントニオさんは更に疲れた表情になり

「俺みたいないい歳した男が持ってるより女のお前さんが持って方が怪しまれないだろう」

と言った。怪しまれないって何だ。まさか本当にこれを持ってて支障が出たというのか。
とりあえずアントニオさんは持っていたくないというのが分かったのど私が持っていることにするとしよう。

「これ何時渡します?やっぱり皆で渡した方が良いですよね?」

「お前さんの好きなように決めてくれ」


ん?これってある意味私に責任転換されたような気が……
なんて思ってたらアントニオさんはトレーニングルームの出入口に向かおうとしてた。


「じゃあ俺はこれで」

「もう帰っちゃうんですか?」
「ついさっき会社からまた呼び出されたもんでな」
「そうなんですか。ではお疲れ様です」


アントニオさんは帰ってしまったが帰り際のアントニオさんの背中も疲れきった様子だった。本当何があった。
とりあえず私はぬいぐるみを椅子の上に置いてトレーニングを始めた。トレーニング中にカリーナちゃん達が来るかもしれないからその時にプレゼントをどうするか話し合うとしよう。
と、思ってたのだが結構時間が経ったのに誰も来る気配がない。トレーニングも疲れたしそろそろ帰ることにしよう。そう思い椅子に置いてたぬいぐるみを持ち上げる。しかし、このぬいぐるみどうしたものか。
皆に連絡して何時渡すか決めなくちゃいけないよね。その時はどうやって渡そう。またサプライズをして渡すのかな。
こうやって考えてみると色々と問題点がある。どうしたものかと悩んでる私の近くから「何ぬいぐるみと見つめ合っているんですか」


バーナビーさんの声がした。


「ギャー!…ギャー!?」因みに今の最初の悲鳴は不意打ちの声にびっくりした為の悲鳴で、二度目の悲鳴はまさかのバーナビーさんだったことに対してびっくりした悲鳴である。
ってそんなこと説明してる場合じゃないぞ!何ということだバーナビーさんにプレゼントを見られてしまった!!
誰も来ないからって気を緩み過ぎてた。
どうする私何と言って乗り切る私!

「おいバニー今の声どうした。…って沙耶じゃねえか。今の声お前か?だったらもう少しマシな悲鳴にしろよー」

呑気に虎徹さんが入って来た。私の悲鳴に呆れてるみたいだが入った瞬間、バーナビーさんの前でぬいぐるみを持ちながらおろおろしてる私を見て何が起きてるか理解したみたいだ。
そして

「そういえばそれ渡すの忘れてたな」

なんて呑気に言った。

「何です。また貴方の差し金ですか」

私じゃおろおろして話しにならないと思ったのかバーナビーさんは虎徹さんに矛先を向けた。
果たして虎徹さんは上手くごまかすことは出来るのだろうか。いやむしろ上手くごまかして下さいね。

「差し金ってひでー言われ様だな。これはヒーロー一同からお前への誕生日プレゼントだよ」正直に言った。正直に言っちゃったよこの人。あれ程私がどう言ってごまかそうと悩んでたのにこの人は!

「プレゼント…このぬいぐるみを、僕に?」

ぬいぐるみを見てバーナビーさんの眉間に皴が寄った。
うん、こんな反応をするのは想定内だった。でもこれは皆で渡すから何とかなるだろうと思ってた訳で、私と虎徹さんの二人でこの状況は色々と辛すぎる。せめてあと一人、あと一人ここに誰がかいたらまだ何とかなる!はず。

「おいおい。そんな顔するなよ。そのプレゼント、ブルーローズとこいつが代表でわざわざ選んでくれたんだぞ」

お願いします。虎徹さん私の為を思ってた言ってるのは有り難いことなのですが、これ以上余計なことを言わないで。

「貴方が?」


バーナビーさんの矛先が私にチェンジした。見て下さいよあの目、「お前何でこれにしたんだよ」って目で言ってますよあれ。
もしもここで
「バーナビーさんの反応が見たくてこれにしちゃいました♪えへっ☆」

なんてことを言ってみろ。とんでもないことになるぞ。
ただでさえ気まずいのにそんなことを言ったら修復不可能になってしまう。ここは何としてでも乗り切らなくては!

「最近バーナビーさん引っ張りだこで忙しくて疲れが溜まってるんじゃないかと思い、この愛くるしい兎の表情の見て癒されて欲しいと思いカリーナちゃんとこれをプレゼントにしようと決めたのです」
「…癒される?」
「そう思うかもしれませんが本当に見てると癒されるんですよ!見てください、この全てを包んでくれるかの様な慈悲深い表情を!!」
「慈悲深いって沙耶お前」
「この表情を見てたら落ち込んだときにも癒しをもたらしてくれるはず!多分。それにこれ抱き心地も良いですし中々眠れない時等に抱いて寝ると安心感を与えてくれるはずです!」
「男がこれを抱いて寝るってお前…」
「ちょっと虎徹さんは黙っててくれませんか。とにかく素晴らしいぬいぐるみなんです。色々と頑張ってるバーナビーさんが何時か疲れで体調が悪くなったりでもしたら心配なんです!だからこれを私の…いえ私達の為にと思ってたぜひ受け取って下さい!!」

こんなに一気に喋ったのは久しぶりかもしれない。喋り過ぎて息切れをしながらぬいぐるみをバーナビーさんに差し出す。
何か言われるのではないかと内心びくびくだったが意外にもバーナビーさんはため息をついただけで何も言わず、ぬいぐるみを受け取ってくれた。
でもやっぱりバーナビーさんにぬいぐるみは似合わなかった。

「ここに置いても邪魔になるのでロッカーに入れておきます」

そう言うとバーナビーさんはトレーニングルームかり出て行ってしまった。トレーニングルームにいるのは私と虎徹さんの二人だけ



「あのぬいぐるみ、そんな意味が篭ってたのか?」
「いえ…あれは勢いで言ってしまっただけ別に意味とかはないんです」
「だよなー。ってかお前めちゃくちゃなこと言ってたぞ」
「やっぱそうでしたか?実を言いますと色々と必死で何を言ったのかあんまり覚えてないんですよ」
「あーだからあんなこと言えたんだな」
「私何か変なこと言ってました?」
「全体的に変なこと言ってたが、聞き方によっちゃお前がバニーに気があるみたいに聞こえたな」
「えー…」

だとしたら私、更にバーナビーさんと気まずくなってしまったのか?
あっ、でも聞き方によっちゃだからバーナビーさんからはそう聞こえなかったかもしれないよね。
だとしたら大丈夫だろう。うん、前向きに考えるとしよう。あっ、そういえば…


「虎徹さんはバーナビーさんにちゃんとプレゼント渡したんですか?」
「俺?あーちゃんと渡したぞ。喜んでたみたいだし」
「へぇー、何渡したら喜んだんですか?」
「ポイントだ」
「えっ?」
「先日の犯人を捕まえた時のポイントをやったんだ」

「あいつらしいっちゃ、あいつらしいよなー。」と言う虎徹さんを余所に、それってプレゼントにお金をあげる様なものだな。と思ってしまった。

まあ虎徹さんの言う通りバーナビーさんらしいが


プレゼントを貴方に
.



prev top next
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -