2 良く晴れた日曜日、ボンゴレファミリーが所有する美しい庭園が売りの高級ホテルでガーデンパーティーが予定通りに開かれていた。 このパーティーは最近婚約したファミリーの幹部のお祝いだと聞いている。ディーノはキャッバローネの若当主として招待を受けたのだが、ボスとして振る舞えるかどうかよりも彼には今、もっと重要なことがあった。 「すっ…スクアーロぉっ!?」 ディーノの間の抜けた声が辺りに響き渡る。ざわめくパーティー会場ではそんな大声もすぐにかき消されてしまったが、ディーノは目の前の人物を未だ指差して固まっていた。 「う゛ぉぉい、るせぇぞぉ」 その地を鳴らすようなドスのきいた声が、全くと言って良いほど似合わない可憐な少女から発せられた。細い手足に僅かに膨らんだ胸元、それを覆う上質な薄いピンク色のミニドレス、そしていつもツンツンに跳ねている後ろ髪は綺麗に纏め上げられており、どこからどう見ても麗しい少女だった。 「…え、キミ…女…の子…だったの…?」 「あ゛ぁ?俺、男だとか言ったかぁ?」 「いえ…」 (むしろ誰も女だと思わないよ…!) 「まぁいいや。俺は御曹司を探しに行ってくるぜぇ。じゃーなぁ」 可哀想な彼(彼女?)の靴はヒールをガツガツと言わせてあっていう間にパーティー会場の人混みへと消えていってまった。 「……………はっ!ダメだっ目的聞いてなかった」 慌ててスクアーロを追いかけるディーノには最早ボスの威厳も何もなく、コッソリと遠巻きに見守っていた部下達はお互いの顔を見て苦笑いした。 庭園にはいくつかの水路があり、それが大きな噴水へと向かって延びていた。 (チッ…流石に歩き慣れねぇなぁ…) スクアーロは恨めし気に自身の足下を睨んだ。 華奢なヒールは高さこそそれ程ないが、不安定で重心が取りにくい。 もう踵の痛みが限界だったスクアーロは噴水の縁石に座ると、靴を脱いだ。 (あーあ…真っ赤) 「!」 俯くスクアーロに大きな影が被さる。そっと顔を上げると、濃紺に灰色の縦縞のスーツを着た細身の男が立っていた。誰でもは似合わないような派手な色をした髪飾りの羽が風に揺れていた。 「…性懲りもなく来たのか」 「おう゛っ!この間も言ったが俺をお前の剣にしろぉ」 「女に何ができるっていうんだ?」 男は高い背をかがめて、脱ぎ捨てられたスクアーロの靴を拾い上げた。 「あっ…わりぃ」 「ふんっ……まぁいい、退屈だから少し付き合え」 [mokuji] [しおりを挟む] TOP |