小説 | ナノ







フランがふざけて霧と雲の指輪に炎を灯して空っぽの匣に突っ込んだのがコトの始まりだった。



「ミーは悪くないでーす。空だって言って渡してきた変態オヤジが悪いんじゃないですかー?」

「貴様っ!責任逃れ等見苦しい真似を…」



「「…るせぇ」」



がなるレヴィに対して、甘く低い特徴的な声が綺麗に重なった。ヴァリアー城では聞き慣れた城の主の声と、もう一つはそれよりも少し高い声。


「う゛ぉぉぉい……俺はいつまでこうしてればいいんだぁ…?」


情けない声を上げるヴァリアーのNo.2はその大きな声とは裏腹に居心地悪そうにソファの上で縮こまっている。この城の主たちに挟まれて。



「わー。並んでるとオセロみたい。ボスが優勢?」

「んだと?!フラン!」

「あ、怒ったー。隊長沸点低すぎですー」


組織のトップを匣の暴発に巻き込んだ割りに暢気な態度のフランを見て、スクアーロが殴りかかる勢いで立ち上がった。




「なんだ、カス鮫は俺の隣が嫌なのか?」


スクアーロの左隣から、少し高い声が心なしか楽しそうに言った。
細い手に左腕を引かれて、またソファに腰を落とす。

「へっ!?いや、そういうわけじゃなくて」

「じゃあなんだ。」


「う゛…そのっ……んむ゛っっ!」



ザンザスが言葉に詰まるスクアーロの首に腕を回して、骨ばった大きな手が伸ばすと頬をムギュッと掴んだ。



「るせぇ、黙ってろ」

ザンザスがスクアーロの肩越しにスクアーロの左隣、ソファの端に向かってすごむ。


「あ゛ぁ?テメェが黙ってろ」

たゆんっと胸元を揺らして、ザンザスに向かって彼そっくりな顔立ちの女ががなり立てた。








「ややこしいわねぇ…ボスが二人になっちゃうなんて。」

ルッスーリアが溜め息混じりに呟く。




「ややこしいどころじゃねぇよ…いつになったら元に戻るんだぁ?」


両隣にザンザス、それだけでもうスクアーロにはいっぱいいっぱいだというのに、あろうことか二人は一触即発状態でスクアーロが席を立つ事もままならない。


「えーと……アンタ…」


スクアーロがザンザス(女)に話しかけた。背後で若干空気が冷えた気がしたが、振り返るのが恐ろしいのでそのまま続けた。


「なんだ?」


「アンタのことはなんて呼べばいいんだぁ?」


「好きに呼べ」


「う゛…それは困るぞぉ」


「どうして?」


「どうしてって…」


スクアーロが困っているとニヤリとザンザス(女)が笑った。








「corniola」



甘く低い声が背後でそう呟いた。
不機嫌そうにザンザスがザンザス(女)を睨む。


「う゛ぉ?コルニオーラ?」


「ふんっ・・・仕方ない。それでもいい。」


「おぉ・・・じゃあ、女ボスはコルニオーラだなぁ!」




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