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27


スクアーロは右手の手袋を外すと、シルヴィアの額に乗せた。体温の低いスクアーロへシルヴィアの熱がじんわりと伝わってくる。



「大丈夫かぁ?…ごめんなぁ、ずっと来られなくて」


「ううん、来てくれて嬉しい。…ママンの手、冷たくて気持ちいい…」


「そうかぁ。」


スクアーロは困ったように微笑むと、シルヴィアの眉の下まで伸びた前髪をそっとかきあげながら小さな頭を撫でた。







この無垢で小さな少女はずっとここにいたほうがいいのではないか。
もし、自分たちの仕事について知ったら?
もし、この子を盾にとられたら?
ここに来るまでにさんざん悩み、思い止まった。



(俺は、人殺しなんだ)



額に触れたまま手がぎこちない。自分がシルヴィアに触れた場所が汚れてしまいそうで、怖い。
子供と離れてみて分かったことは、摘み取るばかりの自分には命を育てる権利なんて無いということだ。

子供を施設に預け、剣を振るい、数多の人を殺してきた自分に母親面なんて…



「…ママン…どうしたの?大丈夫?」


はっと顔を上げると、シルヴィアの紅い目がこちらを見ていた。


「いや、大丈夫だぁ。」







「あのなぁ、シルヴィア。…明日から一緒に暮らす、って言ったらどうする?」



「っ…!本当っ!?一緒に暮らせるの??」




シルヴィアはがばっと起きあがると、はちきれんばかりの笑顔でスクアーロの首に腕を回して抱きついた。



「うれしいっ…」




かつてない程に喜びを示した愛娘に戸惑いながらもスクアーロはシルヴィアの小さな背に手を回した。





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