好きトキメキとキス



そろそろ寒くなってきた、そのせいで出費が増えた。
学校できるカーディガンがボロボロになったから光と色違いで買ったり、ピアス穴がない俺に光がネックレスをお揃いで買おうと提案すれば喜んで買ったり、光が好きだという漫画が面白くて思わず自分でも買いそろえてしまったりとか…。

主に光のせいじゃないか。

そんな光にまみれた時間を送っている俺は、放課後デートってもんでもないけど出掛けるお金もないし新しいゲーム買ったと聞いて光の家へ遊びに来た。
ベッドに寄りかかり余裕そうに操作していく光を横目で見ながら、俺は華麗なプレイを見せつけられていた。


「…あのさ光。」
「はい。」
「これ、一昨日発売のゲームだよな。」
「はぁ、そーっすね。」


なのに最高難易度でノーダメージノーミスって。目の下のクマに納得しながらそういう所で無駄な頑張りをする恋人に溜め息。

この部屋に来たの、久々なんだけど相変わらずゴッチャリ不思議なものだらけ。
漫画にゲームにCDにDVD、パソコンにゲーム機にテレビに良く分からない機械…アニメのキャラのフィギュアは最初見たときある意味感動した、今は嫉妬の対象だけど。
あーぁ、この部屋にあるものは良いよな。光に愛されているし大切に保管されているのを見ればこれでもかと愛を注がれているのが良く分かる。ずるいぞ。

俺?恋人だよ?驚くなかれ、手を繋いだ回数4回。キスは0回だ馬鹿。


「…光。」
「今ええとこなんで。」


派手なアクションで敵をばっさばっさ切り倒していくその無駄のない動き、寝る間を惜しんでやりこんだだけはあるよ…どんだけゲーム好きなの、呆れる。
隣に座ってもコッチ見ない、話すことは漫画にゲームにアニメにたまにテニス部の事。


(俺の事は?)


何時になったら光が言う『ええとこ』が終わるのか分からなくて、ただただボンヤリ。あーアレがボスかな、ならまだまだ終わらないのか。俺って、なんなんだよ。
別に堂々とイチャつきたいってわけじゃないんだよ、こうして二人っきりの時くらいもっと傍にいて触れてみたいだけ。

だから、光にもたれかかって肩に頭を乗せてみた。
傍にいるのに何もしないのも、何も起きないのも、何もできないのも、恋人として寂しい。俺だけこんなに光の事好きになったのかな?

俺が体を預けてすぐ、ピクリとコントローラーを握る手が震えた。もしかして怒られるかもしれない、そう考えて自分がゲームに負けたという現実に瞼を下ろし体を起こそうと、して。


―ゴトッ


固い物同士がぶつかる音がゲーム音を遮り部屋に響いた。なんだろうと瞼を上げれば、ポーズ画面で固まったままのテレビ画面。床には、光の手からすり抜け落ちたコントローラー。
光がコントローラーを落としたんだ、そう理解し顔を上げ光を見上げようとした時。


「慎さん。」
「なに…、」


視界がぐるりと回った。自分の意思で動いたわけじゃないからか、景色を捕えきれない。
何が起きているのか分からない俺の視界が落ちついたのは、背中に固さを…体を包む暖かさを感じて数秒後だった。しかし結局分からない、落ちついた視界が捕えたのは光のカラフルなピアスとワックスで整えられた黒髪だったから。


「そないなことされたら、我慢できんやろ。」


耳を掠める何かから直に吹きこまれる声の真剣さに背筋と脳が震え鳥肌が立った。
そして今やっと理解する…あれ?抱きしめられてる?というか押し倒されてる?4回しか手を繋いだ事がないのに、今、力いっぱい抱きしめられている。
追い付けない展開に頭は考えるのを放棄した、ただ自分が今したい事をすればいいじゃないかと最後に1つだけ提案した。

そうだね、そうしよう…俺は自分のしたい事を。
恐る恐るだけど…光の背に腕をまわした。初めて、初めて…ぎゅって思う存分力を込めて光を抱きしめ返した。


「光…すっげー幸せ。」


この部屋の中で一番愛を注がれているのは俺。パソコンもゲームも漫画もお前ら光にこんな力いっぱい抱きしめられたことあるかよ。
ちょっとだけ涙を浮かばせながら呟いた俺の声が震えていたせいか、顔を上げ視線をからませた光が眉間に皺を寄せていつもより低くハッキリとした声で囁く。


「…あかん。そんなん言われたら、もっと我慢できなくなってまう。」


頬と頬を。額と額を。鼻先と鼻先を。唇と唇を。
重ねるだけでやってくる甘さが、世界にあるどんなチョコレートよりも甘いだろうから、何度も何度も欲しくなった。その全てに答えてくれる光に幸せすぎて泣きながら甘さを貰う。

この甘さを二度と忘れないように。この甘さを俺だけのものにしたくって。

光も、ソレを願って望んでいてほしい。




好きトキメキとキス




「光、」
「はい。」
「膝枕、疲れたんだけど。そろそろ家に帰るんだけど。」
「今ええとこなんで。」
「ぜったい足痺れたからもう降りろよー!!」


「じゃ、代わりにキス100回でええですよ。」
「…好きって100回言うだけじゃ駄目?」
「それで許されると思っとるんですか?」
「…光のアホ、馬鹿、ヘタレ。」



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いちゃいちゃっていうか、甘いというか。
嫉妬しちゃってかーらーの?みたいな。

紺野さま、こんな感じで大丈夫でしょうか…。
いちゃいちゃ足りなかったら言ってください!直しますので!


タイトルの好きトキメキとキスって
反対から読んでも「すきときめきときす」なので
結構好きな言葉です。

リクエストありがとうございました!

2013,10,07


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